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いきなり800日の世界一周  作者: 晩白柚
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12/12

12日目

その日は朝から慌しかった。


自由気ままな旅ん途中ではなく、流石に領地の浮沈が掛かった大名一家の戦支度である。


朝早くから舞台ごとに集合し、今日の持ち場と工程の確認、舞台指揮官と将軍たちの打ち合わせと、担当の班が朝食を準備している間にもたくさんの仕事が進んでいるのであった。


朝食の時間になると、士官全員がまた会議室に集まって食事をとる。朝飯前の用意は何をしたのかを全軍が自分の部隊の上級士官に報告し、その報告を受けた上級士官がそれをまとめた内容を将たちに報告し、配下を率いている将官たちは全員集まって朝食をとりながら、当主の確認の質問に素早く返答する。


他家であれば家老や参謀がその最終取りまとめをするものであるが、毛利家は当主自らがそれを行う。そしてある程度明確に今日の行動方針を伝えられ、それが行われている間に全員の前に食事がどんどん運び込まれる。雑談など一切なく、黙々と自分の仕事を進める将兵たち。


最後の1人への指示が終わったのか、食事を始める合図が出されたようだ。左衛門はどの言葉が合図だかわからなかったが、この場にいる全員が先ほどの言葉のうちどれかを聞くと、一斉に食事を始めたのであった。


食事が終わったものたちは周りのものに会釈をすると、壇上に頭を下げて、すぐさま外へと出ていってしまう。食事の開始は一緒でも食べ終わったものから席を立つのがここの決まりのようだ。


左衛門も食べ終わると席を立ち、国司家の集まっている方へ行く。


元相はすでに食べ終わり、家人に撤収の指示をしているところだった。


「それでは国司どの、お別れを伝えに参りました」


「星野殿、ご壮健であられるよう」


挨拶を終えた左衛門は、今度は世鬼の所に挨拶に行った。


「世鬼様、いえ、お師匠様とお呼びしてもよろしいですか?」


「これは星野殿、もちろんでございます、報酬の精算は済ませましたか?」


「はい、昨日すでに済ませております。」


「今回星野殿の通帳を作ったので、出先でも何か目ぼしい情報があれば送られよ、次回来られたときにまた精算するであるぞ」


「ぜひ送らせていただきます、まずは大内と大友や九州勢の情報でも送りましょう」


「では、芸州屋、甲州屋、能勢屋、熊野水運、豆州水運の屋号を覚えておくのだ、提携先である、それと、割符は無くすでないぞ、送る時と受け取るときに必要だ」


「では、しっかりと覚えておきまする。」


昼前には岩国に向けて全軍の半数程度が西進し、昼過ぎには岩国に到着した毛利軍は、今回は特に本陣も立てず、錦川沿いに軍を停めると、宗清寺の境内を本陣がわりに占拠して、岩国山に物見を出し、川沿いに見回りの兵を手配した。


しばらくすると物見が一人一人と戻ってきて、岩国城の中の様子を伝え始めた。


「川沿いから城へと伝令が往復を始めました」


「城内から約200の兵力で川沿いの城壁の守りに移動しました」


「江良房栄の旗印があります、本丸に先程旗が立ちました。」


「房栄に書状を出せ、こちらに付けば防州の天野領半分を加増するとしておけ、晴賢の首を持ち込めば防州の大内家所領全てを与力につけると書いておけ、敵兵に取られても構わぬからな」


「山口方面に伝令が走りました、その数50」


「江良房栄の旗印が動きます、大手門から山口方面に移動中」


「書状は届きませんでした。甲田丹後守の隊に取られました。」


「全軍移動、玖珂方面にまっすぐ進み、敵に横っ腹を見せつける、児玉と国司は遊撃、岩国城から部隊が出てきたらこれに横槍を入れる、先頭はそのまま玖珂方面に進め、殿軍は吉川が残り、児玉に後詰と渡河地点の確保、小早川は川を渡ってから反転して城門を封鎖、城から出た部隊の退路を断て」


「「「御意!」」」


毛利軍が動くと、城の軍勢は元就の予想通りに動き始め、あっという間に斬り込みに来た200の兵をほぼ全員戦闘不能にし、小早川隊は盾を持って城門を封鎖し、城からの弓を防ぎ始めた。


しばらくすると小早川隆景の元に大内側の使いが来て、降伏の交渉が始まった。


川沿いからは吉川隊が大声をあげて、

「皆殺しにしてしまえ」


「城はほとんどガラ空きだ」


「100人も残っていないのに何を悠長なことを」


などと、威圧のヤジを飛ばし始める。


大内の使いが城に戻ると、間も無く兜を手に持った集団が歩いて出てきた。


その頃になると、吉川勢の元に伝令が到着した。


「伝令!渡河地点の確保は小早川に任せ、吉川は玖珂まで進むこと!以上であります」


せっかくだからと、左衛門も吉川に付いて玖珂に進むことにした。


玖珂には大内の援軍が1500人ほどがきており、毛利軍と対峙していた。


毛利軍は山道からの出口のあたりを抑えられているので、数の有利が活かせない戦況だった。


吉川が谷に入ってきた辺りで伝令があり、吉川勢は道の両側に伏兵と言うことになり、しばらくすると山陽道を毛利勢が戻ってきたのが見えて、その後を追って大内勢が追撃に来ているようだった。


毛利の本体が小瀬の方に抜けた頃に、大内勢が200人ほど山陽道に入ってきた辺りで、吉川の部隊が押し込んできた。


岩国城攻めの鬱憤を晴らすかのように活躍する吉川勢、大内方の200人はほぼ全員が討ち取られてしまうのだった。


騎馬が20人ほどいたので、その馬を鹵獲して引き上げていく吉川勢、そして、その場から西に向かって敗残兵に混じって進んでいく左衛門であった。







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