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ラヴィアン・ワールド  作者: てろめあ
湖の底に沈む虹
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39 手放すな その想い


「龍人・・・ねぇ」

暁斗は自宅のベットで、手を照明にかざしながら呟く。

銀嶺の憩いで宿を確保し、拓海、隆弘と揃ってログアウトし、仮眠と休憩を取っている。

レイやサナダ、エルフ姉妹達は街の散策に繰り出しているそうだ。

もしも周辺でレベル上げや、王からの使者が来た場合は全員集合と言う事になっており

とりあえず仮眠を取って目覚めた時、濃密なゲームでの体験が頭の中を巡り、ログアウト

したものの、未だ現実感を感じられずに居た。

「・・・お、タカからか」

ALIOSがチャットの通知を告げ、差出人は隆弘であった。

「レベル上げ・・・周辺は平均・・・25!?」

ばっと起き上がり、急いで返事を送る。ベットから飛び降りてしまったので、下の階の母親

から五月蝿いと文句を言われたが今はそんな事どころではない。


森での出来事。助けに行ったものの、何も出来なかった。

もしもレイが現れなかったら、もしも自分のレベルが高ければ、そんなもしも(if)が

心の中に燻っている。強くなりたい。誰かを守れるくらいに。

現実でもトレーニングをし、身体を鍛えている。元々何故か(・・・)事件に巻き込まれ

ることの体質を持っている為、そして被害者を・・・力なき者を守る為に。

それがゲームの中であろうが、現実であろうが、暁斗の中でどうでもよく、とにかく

目の前の困ってる奴は助ける。それが暁斗の信条であり、揺るがない魂だ。

幼馴染の二人(タク・タカ)には「脳筋バカ」と言われているが・・・

なんだかんだと付き合ってくれる気の良い奴らである。


「このまま足手まといのままは、ごめんだ!」

三人のグループチャットでログインしてレベル上げに行くと伝え、ラヴィアン・ワールド

を起動する。何かの通知音が聞こえたが、暁斗の意識はゲーム内へと向かった。



■



「うっし!とりま外行ってみっか!」

宿を飛び出し、雑多な街に繰り出したアキト。

確か門はあっちの方だったなと思い出しながら足を動かし始める。

「うお!武器屋!高っ!クソ高!いや!すんません文句つけてるわけじゃないっす!」

途中見つけた武器屋にて目を引く槍が置いてあり、値段を見た所、自分の持っている槍

と桁が幾つも違う商品であった為、ついつい独り言が大きくなり、店主の獣人にきつく

睨まれてしまった。割とよくある(現実でもある)事なので頭を直角に下ろして謝り、

再度街を進む。

「ほんとに色んな人種がいるんだなぁ・・・」

猫、犬、鳥、牛と様々な獣人 色んな色の鱗を持つ竜人 ヒューマンも居るが髪色や

衣服が多種多様であったりと、異国情緒溢れる人々。

白を基調とされた美しい街並みは目を引き、路肩を流れる小さい小川ですら気が付いたら

瞳奪われてしまう程であった。

生来の方向音痴に慣れない土地。物珍しさに辺りをキョロキョロとしながら結果、アキトは

今までと違い喧騒の少ない路地に入り込んでしまって居た。


「・・・・・お?どこだここ?」


迷子である。絶賛只今迷子である。

アキトは「ふむ」と少し考え、フレンド欄を開く。タクミとタカヒロは未だログインして

いないものの、レイとサナダはどうやらログイン中の模様。困ったらこの二人に知らせ

助けて貰おうと言う考えに落ち着き、アキトは歩き出す。


「ま、なんとかなるべ!せっかくだし観光だな!」


もしもタクミが近くに居るならば、「とりまレベル上げでしょうが!」と叩かれて居る

であろうが、残念な事に暴走気味のアキトを止める者は誰も居なかった。

しばらく路地を進み、曲がり、戻ったり、また曲がって見たりを繰り返す。


「あれぇ・・・さっきも通った様な・・・あれれぇ・・・」


どれだけ歩いても同じ様な建物ばかりであり、段々と心に不安が募る。

「あれ?俺帰れるのこれ?」

と思い始め、仕方ないとレイへとコール(念話)しようとした時、アキトの背に

言いようの内不快感がもぞもぞと這い回る。

「嫌な感じがする・・・」

その不快感がやってくる方向にアキトは走り出す。迷いは無い。

白い風景が視界の中で通り過ぎて行く。先程までの迷子で感じていた不安は何処かへ

消え去り、アキトは無我夢中で走り続ける。

段差を飛び、通りに倒れて居る樽を飛び越し、不快感の元へ疾走する。

やがてアキトは一軒の建物の前に辿り着いた。

アキトは迷い無くドアを開けようとするも開かず。開かないとわかるや否やドアにタックル

を開始。何度も繰り返す内に遂にはドアの耐久値は限界を迎えて、留め具が何処かに吹き飛び

ながらその室内にアキトを迎え入れた。


室内も見渡すも誰もおらず、しかし不快感は床の下から感じられた。

アキトは注意深く暗い室内の床を不快感へ向かって歩き出す。

一歩、一歩と探すように、踏みしめて木の床を進むよ、今までと違う下に空洞があるかの

様な足音が耳に去来する。

アキトは槍を取り出し、石づきでその空洞を目一杯突く。

破砕恩と共に床が割れ、『そこ』には・・・


「大丈夫か!?君は・・・・旅禍(プレイヤー)なのか・・・?」


自身と近そうな年齢に、そして右腕に取り付けられた旅禍のブレスレットをつけた少女

が衣服をを土に汚した状態で、アキトへと恐怖の対象へ向ける視線を向けていた。

その事にアキトは奥歯をギリと鳴らし、少女を縛る縄を槍で切り裂く。

「ひっ!」

小さく悲鳴を上げる少女の頭を一度撫で、アキトは少女を抱えて立ち上がる。

「逃げよう。」

じっと少女の瞳を見つめ、そう告げる。

未だ恐怖と驚愕に揺れる少女は目を離さない少年を見上げ、こくんと首を立てに振った。

「おっけ!」

にっと笑顔を見せたアキトは急ぎ少女を抱えながら近くにあった梯子を使い地上へと上がる

入り口を目指し足を進めようとした時、声が外から聞こえた。


「おい!ドアが開いているぞ!」

「いそげ!侵入者だ!奴らかもしれんぞ!」

「最悪多少痛めつけてかまわん!貴重な・・・巫女だ!」


幾人かの焦りが混じった声が響く。

アキトは周囲を見回し窓を発見、そこから少女を抱えて飛び出す。


「居たぞ!裏から出てきた!男が一人!抱えて逃げようとしている!」

路地の奥でこちらを指差しながら叫ぶ男が、笛を鳴らした。

「大通りに逃がすな!騎士連中が出張ると厄介だ!!」

そして駆け集まってくる足音が多数聞こえ始める。



「ちっ!」

アキトは舌打ち一つしつつ、全フレンドへ『助けて』と素早くうち送信

そして男たちが集まる逆方向へ走り出した。

迫る足音を背にしながら、アキトは走る。置かれた樽や木箱を後ろを追う奴らの

邪魔になる様に転がし、蹴飛ばしながら、幾つもの路地を抜ける。



「!・・・まずい!!」


まがった先は袋小路になっており、引き返そうとするも足音は迫って来ていた。

奥へ逃げ、遂に袋小路の入り口に追いかけて来た集団が見え始める。


「こっちだ!追い詰めたぞ!」


段々と増える集団にアキトは焦りを感じ始める。


(クソ!また!・・・・また守れないのか!?)


つい力が入ってしまい、少女を強く抱きしめてしまうアキト。

少女は何も言わず、アキトへとじっと視線を向ける。まるで身を委ねると言うかの様に。


(諦めんぞ!俺は絶対に!もう(・・)同じ事はしない!!)


追い詰められた窮地に心が反応したのか

幼馴染二人と出会う前・・・・幼少期の記憶が蘇る


なんの力も持たぬ自分

そんな幼少の自分よりも遥かに力を持たぬ赤子が、目の前の『悪意』に連れ去られる

動かぬ足 溢れ出す涙に恐怖 何も出来ない己 誰も救えない己

現在のアキトを突き動かす根源的な人生での出来事がアキトの目の前に広がる。

過去と同じ様に、今腕の中に居る少女も『悪意』に奪われる

己の無力が原因で。


「ぐぅうううううあああああああああああああああ!」


知らず、漏れる咆哮

食いしばったせいか唇からは血が溢れだす。


「守る!今度こそ!もう誰も!眼の前で奪わせない!!」


記憶の中、連れ去られる『白き幼子』が少女と重なる



『その願い 聞き届けたり』


「!?」


少女を奪い返さんと迫る集団を残し

アキトと少女は地面(・・)へと溶けて消えるのであった。


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