鎧の隙間
裏門での不意の争いの後、スイートルームの空気には新たな緊張が張り詰めていた。それまでのあからさまな敵意に代わり、そこには慎重で、どこか居心地の悪い沈黙が支配していた。共有の居間では、ケイランとグラッカは互いに不必要な接触を意識的に避けているようで、部屋への出入りのタイミングは、まるで示し合わせたかのように正確だった。通路で鉢合わせになったとしても、視線が交わるのはほんの一瞬で、すぐに逸らされる。まるで、埃っぽい地面の上での闘争の記憶を互いに認めたくないとでも言うように。
ケイランが手当てを必要としたのは、グラッカの膝がめり込んだ脇腹の痣だけではなかった。あの争いは奇妙な余韻を残していた。彼女の抑えきれないほどの強さと、その強靭な個性を、不本意ながらも認めざるを得なかったのだ。それは、以前に抱いていた純粋な軽蔑の念を複雑なものに変えたが、まだ賞賛と呼べるものではなかった。従者のジョリーが、ケイランの拳にできた擦り傷に軟膏を塗り直しながら、気遣わしげに言った。「訓練中にでもお怪我を? ケイラン様」無邪気に尋ねるジョリーの声が響く。
「まあ、そんなところだ、ジョリー」ケイランは呟いた。鎧も着けずにゴブリンの妻と取っ組み合いの喧嘩をして切り傷や痣を作ったなどと、詳しく話す気にはなれなかった。考えれば考えるほど、全てが非現実的な出来事に思えた。
グラッカにも変化が見られた。普段の彼女は、部隊の訓練に打ち込んだり、落ち着きなく歩き回ったりと、その奔放なエネルギーを発散させていたが、今はそれが内に秘められ、より集中的で静かな、周囲への観察眼へと向けられているようだった。前日の爆発的な身体のぶつかり合いは、必要な解放だったのかもしれない。その後に訪れたのは、油断のない静けさだった。彼女の足音は相変わらず静かだったが、その立ち姿にはわずかな変化があった。以前のようなあからさまな挑戦的な態度は薄れ、まるでとぐろを巻いた蛇のように、いつでも動ける気配を漂わせていた。
数日後の夜も、ケイランはなかなか寝付けずにいた。脆弱な和平協定の維持、遅々として進まない火災の調査、異種族間の対立で煮えくり返る砦内の秩序の維持、そしてこの政略結婚という不条理。彼の職務の重圧が、その肩にのしかかっていた。砦の中に響くのは、塔の周りを吹き抜ける風の嘆きと、遠くで聞こえる歩哨の足音だけだった。彼は共有の居間の中央で一人座り、目の前の重厚な樫のテーブルに広げられた書類に目を落としていたが、一本の蝋燭の灯りが揺らめき、影を落とすばかりだった。
もはや、彼は書類を読んでさえいなかった。火災調査の報告書には、当初、衛兵隊長が断言していた油の染みた布の証拠は見つからず、怯えた馬小屋番たちの目撃証言は食い違い、裏門の近くにあった微かな足跡は、誰のものであってもおかしくない、と記されていた。彼は別の羊皮紙を手に取った。それは二年前の夏の戦役における戦死者名簿で、そこには胸が痛むほど見覚えのある名前と顔が並んでいた。王国を守っていると信じて逝った者たち。まさか自分たちの指揮官が、彼らが命を懸けて戦った相手そのものと婚姻を結ぶことになるとは、夢にも思わなかっただろう。
肉体的な疲労をはるかに超えた、魂の底からの倦怠感が彼を襲った。普段は完璧なまでに保たれているその姿勢が崩れ、重々しい椅子に深くもたれかかり、彫刻の施された木製の背もたれに頭を預けた。疲れ果て、無防備なまま、彼は手で髪をかき上げた。長年の紛争の重みと、この先の見えない和平という名の重荷が、一度に押し寄せてくるかのようだった。彼は一つ、深いため息をついた。
「何世代にもわたる流血の果てに…」誰もいない部屋に向かって、彼はかろうじて聞き取れるほどの声で囁いた。「鋼の代わりに手に入れたのが…これか」この不安定な休戦、この強制された親密さ、憎悪の奈落の上を渡る、終わりのない綱渡り。これは本当に前進なのだろうか? それとも、ただ別の種類の戦争が始まっただけではないのか。歯を食いしばり、作り笑いを浮かべながら戦う、新たな戦争が。自分とグラッカとの間に横たわる現実の溝を埋めようとすることは、あまりにも巨大で、押し潰されそうな試みに思えた。
彼には、グラッカの部屋に通じる戸口から聞こえた、ごくわずかな物音は聞こえなかった。水を求めてか、あるいは単に押し付けられた縄張りの境界を徘徊するためか、彼女はいつものように音もなく部屋から出てきていた。夜中にスイートルームを巡回し、自室のバリケードがしっかりしているか確かめ、異常な物音に耳を澄ますのは、彼女の習慣だった。居間の入り口の深い影に身を潜め、石壁に溶け込むようにして佇むと、彼女の五感は鋭く研ぎ澄まされた。
しかし、部屋に差し迫った脅威はなかった。ただ、一本の蝋燭の炎に照らされ、椅子に身を沈める人間の騎士の孤独な姿があるだけだった。彼女の目に映ったのは、人間の権力の象徴である鎧をまとった「サー・ケイラン」ではなく、ある種の疲労を隠さずにいる、一人の男の姿だった。いや、それ以上だ。たとえその重荷が物理的なものでなくとも、重圧の下でしなだれた肩の様子を、彼女は見分けることができた。彼が低く呟いた言葉が耳に入り、正確な言葉の意味は分からなくとも、その響きに込められた想い――その労苦、その代償――を彼女は感じ取った。
グラッカは、冷めた興味を抱いて彼を観察した。これが、人間流の弱さというものか。それは、利用できるような傷や肉体的な無防備さではなく、内面的な崩壊だ。奇妙なことだ。ゴブリンは重荷の下でうなだれたりはしない。ただ、壊れるか、あるいは打ち勝つまで、押し進むだけだ。しかし、その光景は、彼女の実利的な知性に一つの情報として吸収された。長きにわたる戦争は、人間の王国をも疲弊させた。そしてケイランは、この砦の中の脆い平和を繋ぎとめている一本の糸なのだ。王の要求、民衆の偏見、そして自分自身の不信に満ちた存在。その板挟みになった彼の立場は、必然的に緊張を強いられる。この疲労は偶然の産物ではなく、彼が置かれた状況の当然の帰結であり、彼が受けている圧力の証左だった。
彼女に同情はなかった。それは無意味な人間の感情だ。しかし、彼女が感じたのは…理解、だろうか? あるいは、単なる認識、かもしれない。磨き上げられた鎧は、決して難攻不落ではないという認識。その下には、ゴブリンのナイフ以外のものによっても傷つきうる、脆い核が隠されている。彼が背負う重荷――「外交」や「名誉」といった、彼女には非効率的に聞こえる概念――を完全に理解したわけではないが、その重さ自体は認識できた。彼女もまた、年老いたゴブリンの族長たちが、このような形ではないにせよ、疲れ果てていく姿を見たことがあった。
さらに長い間、彼女は影の中に立ち、この騎士に関する新たな情報を吟味した。そして、来た時と同じように静かに自室の闇へと後退した。ケイランは、自身の弱さを晒した密かな瞬間が、誰かに目撃されていたことなど、全く気づかずにいた。
二人の間で、何かが明確に変わったわけではなかった。交わされた言葉も、仕草もなかった。しかし、グラッカは、サー・ケイランに対する自身の頭の中の評価に、新たな一片の情報を加えた。彼は、外交官ぶった「柔肌」であるだけでなく、かなりの腕を持つ戦士でもあった。そして、彼自身が守ると誓ったはずの平和そのものによって、押し潰されかねない生き物でもあったのだ。それは、利用可能な弱点かもしれない。あるいは、もしかしたら。ほんの、もしかしたらだが、それは、本質的に、そして疲弊しきった二人の間に存在する、最初の…共有物の兆候だったのかもしれない。