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鉄と絹の盟約  作者: Sito37
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14/20

原則と挑発

黒い水面に張った薄氷のように、ストーンゲート砦の内に漂う不穏な沈黙は、常に危うい均衡の上にあった。人間とゴブリンの間に日常的にくすぶる対立は、ケイランが影の頂に派遣した斥候からの報告を待つ間も続き、低く流れる不信感の電気が、周期的に衝突という火花を散らしていた。次なる危機は、その火花の一つが、根深い敵意を燃料として燃え上がったことで引き起こされた。


騒動が持ち上がったのは、下部ベイリーにある練兵場の近くだった。グラッカの配下で、分別よりも筋肉が勝る、血気盛んな若い戦士ゾグが、場所の取り合いか、あるいは些細な侮辱が原因で、三人の人間の兵士と揉め事を起こしたのだ。ゴブリンの悪臭をあげつらう野卑な言葉が、人間の脆弱さを警告する喉の奥から絞り出すような声で返され、声は次第に大きくなり、罵詈雑言が飛び交った。そして、突き飛ばし合いは、すぐに殴り合いへと発展した。ゾグは果敢に応戦したが、いかんせん数の上で劣勢だった。どちらが先に武器を抜いたかについての証言は大きく食い違ったが、衛兵が駆けつけた時には、ゾグは息を切らしながら、腕から血を流す負傷した兵士を見下ろして立っていた。彼自身も擦り傷や打撲を負い、屈強な二人の衛兵に取り押さえられていた。


その知らせは、すぐにケイランの耳にもたらされた。彼の私室を訪れたヴォーラグ隊長の表情は、石のように硬かった。「ケイラン様、一大事です。ゾグとかいうゴブリンめが三人の兵士に襲いかかり、マティス伍長が負傷いたしました。部下たちは正義を求めております。何と言っても、砦の壁の内側で味方の兵士に剣を抜くことは、軍法会議で絞首刑に値する重罪ゆえ」そこでヴォーラグは一瞬言葉を切り、付け加えた。「……特に、この……状況を考えますと」彼がそれ以上説明する必要はなかった。守備隊の人間たちにとって、これはゴブリンの生来の暴力性の証左であり、人間への攻撃に他ならなかった。ケイランは、自らの部下をなだめるためにも、迅速かつ厳しい見せしめを示すよう、強い圧力を感じていた。


ケイランがヴォーラグの報告を吟味する間もなく、グラッカが何の作法も弁えずに居間へ駆け込んできた。彼女のすぐ後ろには、ボルグがまるで雷雲のように控えている。「ゾグが捕らえられた」グラッカは低く威嚇するような声で言った。肉切り包丁の柄を握る彼女の指の関節は、白く浮き上がっていた。「お前の部下どもは、襲われたと言っているそうだな。嘘だ。ゾグは身を守ったにすぎん」


「三人を相手に、たった一人でか?」ケイランは、彼女の激昂を制するように片手を上げた。「しかも、負傷したのは人間一人だと?」


「挑発が度を越していれば、数など意味をなさん」グラッカは言い返した。「あるいは、奴らが初めから企んでいたかだ。ゾグの話では、奴らは彼を追い詰め、私を……この協定を嘲笑ったそうだ。そして、彼に唾を吐きかけた」彼女の目が、危険な光を宿してまたたいた。「ゴブリンの法では、そのような侮辱は血で贖われる。彼は自制したのだ」


「ここはゴブリンの領地ではない、グラッカ」ケイランは、彼女の怒りに燃える視線を正面から受け止め、きっぱりと言った。「ここは人間の砦であり、王の法の下にある。私の兵士に剣を抜いたことを見過ごすことはできん」それでも、彼女の言葉と協定への言及は、彼が召集の際に目の当たりにした醜い現実を思い起こさせ、胸に突き刺さった。そして、自らの戦士を断固として守ろうとする彼女の猛々しい姿……それは、純粋な忠誠心の表れであり、彼の心を揺さぶり、同時に惹きつけられるものがあった。


「臆病者が挑発しておいて、被害者ぶるのを守るというのなら、お前の王の法とやらは腑抜けだ」グラッカは吼えた。「ゾグをこちらへ引き渡せ。さもなくば、私が奪い返すまで」その脅しは、明白かつ深刻だった。


ケイランは、自らの守備隊が求める処罰と、ゴブリンの妻が突きつける反乱の脅威との間で、引き裂かれる思いだった。ヴォーラグの要求通りゾグを処刑すれば、それは不当な裁きとなり、和平協定は破綻し、この砦の中から戦火が再燃するかもしれない。かといってグラッカに屈すれば、自らの権威を失墜させ、部下たちの怒りを買うことになるだろう。「私自身が、状況を調査する」彼は、ヴォーラグもグラッカも反論できないような、有無を言わせぬ口調で言った。「裁きは、私が事実を把握してから下す」グラッカの訝しげな視線と、ヴォーラグのどもりがちな抗議を無視し、ケイランはゾグが拘束されている衛兵詰所へと向かった。


彼の調査は、迅速かつ的確に進められた。ゾグは、挑戦的な態度を崩さなかったが、悄然としており、屈辱を受け、追い詰められたという自らの証言を繰り返した。彼はカッとなったことは認めたが、突き返した際に先に剣を抜いたのは兵士たちの方だと主張した。負傷した兵士、マティス伍長は、ゾグの攻撃は何の挑発もなしに行われたと証言した。彼の二人の仲間も、ほぼ同じ内容を語ったが、その口ぶりはあまりにも似すぎているきらいがあった。ケイランは、他にも数人の目撃者、疲れた様子の鍛冶屋や、心配そうな馬丁にも話を聞いた。彼らの証言は曖昧だったが、争いが始まる前に、人間の兵士たちがゴブリンを執拗にからかっていたことを示唆していた。混乱の中で、どちらが先に剣を抜いたかをはっきりと見た者はいなかった。人間の法では、挑発はゾグの行動を明確に正当化する理由にはならない。しかし、兵士たちが主張するような、一方的でいわれのない攻撃でなかったこともまた、明らかだった。


ケイランは、砦の小さな評議会室に、関係者を集めた。ヴォーラグ隊長、数人の上級士官、そしてケイランの要請により、グラッカとボルグも同席していた。空気は、怒りで張り詰めていた。ヴォーラグは、規律を維持するため、と前置きして事件の概要を述べた。王の兵士に対する、王の砦内での攻撃は、死刑に値する大罪である、と。他の士官たちも、同意するように低く唸った。


その時、ケイランが口を開いた。「マティス伍長が負傷したことは事実だ」彼は、厳粛な面持ちで認めた。「そして、規律は不可欠だ。しかし、この一件に関する証言は食い違っている。マリウス軍曹とその仲間たちが、過度な挑発によって口論の火種を作ったという証拠もある。それは、王が結ばれた和平の精神を、たとえ条文そのものではなくとも、踏みにじる行為だ」


「挑発が、剣を抜く言い訳にはなりません、閣下!」ヴォーラグが反論した。「法は明白です!」


「法は、真実もまた重んじる」ケイランは、声を鋭くして言い返した。「そして、ここにおける法の目的は、秩序を維持し、王の和平協定を守ることにある。挑発行為が明白であるにもかかわらず、疑わしい証言に基づいて戦士ゾグを処刑すれば、正反対の結果を招くだろう。ゴブリンの族長グロクナーはそれを不当とみなし、我々が避けようとしている戦争へと逆戻りしかねん。隊長、それは規律か?それとも愚行か?」


士官たちが、敵意のこもった視線で彼を見つめた。ケイランは、その視線をものともせずに続けた。「ゾグは絞首刑にはしない。自制心を欠いた罰として、彼はしばらくの間監禁された後、部族の規律による処罰を受けるべく、グラッカ殿の監督下に戻される。さらに」ケイランは、射抜くような眼差しで続けた。「マティス伍長とその仲間たちについては、意図的な挑発によって王の平和を乱した廉で、その行動を調査するものとする」


部屋は、衝撃と憤怒の沈黙に包まれた。ヴォーラグは、卒倒せんばかりの形相だった。他の士官たちは、信じられないというように口を開けていた。今、ケイランは、自らの部下である兵士たちに背き、一人のゴブリンを擁護したのだ。目先の復讐心や守備隊の士気よりも、協定という大義と公正さを優先すると主張して。


グラッカは、このやり取りの間、かろうじて怒りを抑えつけ、身じろぎもせずにいた。おそらく彼女は、ケイランが部下たちの圧力に屈し、自分に実力行使をさせるだろうと予測していたのだろう。だが今、彼女は彼を見ていた。軍隊の慣習と人間の偏見という濁流に、敢然と立ち向かう彼を、真の意味で観察していた。彼はゾグが無罪だと言っているのではない。彼は、複雑な状況を考慮に入れた手続きと、相応の罰を主張しているのだ。単純な報復を超えた理念のために。彼は、一体何を守るために、同族の恨みを買い、自らの評判を危険に晒しているのか?公正さ?この脆い平和?それとも、彼自身の奇妙な名誉の規範か?


彼と対峙する人間たちの顔に浮かぶ侮蔑の色を見て、グラッカは彼らに向けられた憎悪の重みを肌で感じた。そしてその瞬間、彼女の中で何かが決定的に変わった。これは、彼女が常に人間の中に見て軽蔑してきた「甘さ」ではない。たとえそれが不人気であろうと、「敵」に利するものであろうと、自らの信条のために、己の部族にさえ一人で立ち向かう、揺るぎない決意。それは、異質の強さだった。「人間の正義」という概念そのものは複雑で理解しがたいが、その厳格で、決して屈しない核となる部分の種類は、彼女にも理解できた。彼の名誉には、見せかけの礼儀作法だけではない、鋼の背骨が通っていたのだ。


ケイランが議論を打ち切り、呆然とする士官たちを下がらせた時、グラッカは、ケイランを単なる政略の駒や、有能だが予測可能な敵以上の存在として見ていた。驚くほどに、興味深い何かとして。彼女の内側で、奇妙で熱い何かが、歓迎すべからざる感嘆の念の火花を散らした。不都合な信念と、静かな決意を秘めたこの人間の騎士が、これほどの強さを秘めているとは、彼女は予想だにしていなかった。そして初めて、彼女は彼の脆さではなく、その強さに、純粋に惹きつけられている自分に気づいたのだった。

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