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第32話 カモミール畑の二人

 家政婦長モンテローザは仁王立ちになって、お怒りのご様子だ。


マリアまで、先輩モンテローザに追従して愚痴をぶちまけていた。


「はっきり言って時間が無さすぎます!」


「モンテローザさん、ほっんとに、そうですよね!

結婚式の準備といったら、女の子なら誰でもウキウキワクワクする期間ですのに」


「マリアさん、わたし達にとっても、最もやりがいを感じるイベント期間なんですよ。

それを、たったの、たったの三日間って…旦那様は、まるでわかってらっしゃらない」


メイドたちは結婚式までの準備期間が、あまりにも無いことに不満を噴出させていた。


「新しいドレスを仕立てるのは無理です。諦めるしかありません」


メイドたちとは対照的に、わたしはやる気のない返事をこぼした。


「別に諦めてもいいです」


ついに、マリアが立ち上がった。


「お嬢様! そんな簡単に諦めてよろしいんですか。

もっとやる気を出していただかないと!」


とはいえ、侯爵がストイックなまでに三日後の挙式を譲らないのだから、これ以上どうしろと。

カルロ様との一件で、悪い虫がつく可能性がなくなっても、挙式を急ぐには何か考えがあるのでは。


「聞いています? お嬢様。ご自分のことなんですよ。これは緊急事態です。

ビアンカお姉さまが着たウエディングドレスをお借りしたらどうでしょう」


「あら、お姉さまがいらっしゃるんですね。それは名案です、マリア。それでいきましょう」


モンテローザがマリアの提案にのった。

けれども、わたしはちっとも乗り気ではなかった。


「あるのかどうかもわからないし、お姉さまの家も知らないし。無理だと思う」


「では、どうしろと」


モンテローザが頭を抱えた。

彼女はしばらく考えこんでいたかと思うと、急に思いついたように顔をあげた。


「マリア、お嬢様が持っていらっしゃるドレスを全部見せてください」


「はい、でも本当に数が少ないですよ」


「いいです。とにかくここにあるもので新しく作るしかありません。ここにあるものとは、手持ちのドレスと屋敷内にある布という布。シーツであろうが、カーテンであろうが、この際なんでも活用しましょう。

マリア、わたし達メイドの腕の見せ所ですよ」


「はい、モンテローザさん。 

なんだかすごくいいアイディアが生まれそうな予感がしてきました!」」


メイドたちがこんなに一生懸命になってくれているのに、申し訳ないけど、わたしはあまり盛り上がることができない。


「すみません、ちょっと外の空気を吸いに庭に出ます」


「あらまあ、お嬢様。どこか具合が悪いんですか?」


「いいえ、大丈夫です。あとは全てお任せします」


モンテローザとマリアは首をかしげていたようだが、気にも留めずにわたしは部屋を出た。


 庭に出るとカモミールの香りが鼻をくすぐった。

小さな白い花が、風に揺られている。

しばらく、そこに大の字になって寝転び、目を閉じた。

大地に寝転ぶと、自分もその一部になったような気がする。

さっきまで、心の中で小さな不安が、ここに来ると癒される。





どれくらい時間が経ったのだろう。

いつの間にか寝ていた。

わたしの名前を誰かが呼んでいる。


「モニカさん! モニカさん、しっかりしてください」


あ、侯爵の声だ。目を開けると、侯爵がわたしを抱き上げていた。


「ロレンツィオ様?」


「よかった。生きていたんですね」


侯爵は私を強く両手で抱きしめた。


「ロレンツィオ様、どうしたんですか?」


「メイドたちが、あなたが庭に出たきり帰ってこないと言うので、

探しに出たら、こんなところで倒れていて…、驚きました」


ぎゅっと抱きしめながら、泣いている?


「わたしは元気です。昼寝しちゃったみたいで」


「本当に寝ていただけですか?

もしかしたら、わたしが婚礼を急ぐのから、嫌いになったんじゃないのですか?」


「そんなわけないでしょう。わたしはロレンツィオ様が大好きです。

って、何べん言わせるんですか。」


侯爵はちょっと照れて視線をそらした。


「すみません」


「どうして謝るんですか? わたしは幸せですよ。

ただ、メイドたちが衣装や準備が間に合わないと大騒ぎするから、

気分を切り替えたくなっただけです」


「幸せですか? 無理はしていませんか?」


侯爵はわたしの目を見て聞いて来た。


「はい、幸せです」


わたしは正直に今の気持ちを笑顔で答えた。

やっとほっとしたのか、侯爵もほんの少し笑った。


「ロレンツィオ様のことだから、援軍に行くんでしょう」


「行ったとしても、絶対に結婚式には間に合うように帰ってきます」


「うん、それもわかっています」


「わたしは、戦いのない平和な世にしたいと思っています。

けれども、国の防衛の仕事を任命されているこの身は、戦闘に出るのも仕事なんです」


「ロレンツィオ様こそ、生きて帰って来てくださいね。

帰ってきたら、平和な社会をわたしと一緒に作りましょう」


「何か、いい考えがあるような言い方ですね」


「わたしの考えなんか気にしないで、援軍に行く準備を早く」


「気になる……」


「だめです。今、ロレンツィオ様が取り組むべきことを優先してください」


「……」


侯爵の美形の横顔が曇った。

しょうがないなぁ。


「じゃ、ひとつだけヒントね。都にあって辺境地にないもの。でも、あったらすごーく助かるもの。国境付近の住民、敵・味方関係なく必要なもの。あ、こんなにヒント出しちゃった。それを作りたい」


「そんなにヒントを出してもらっても、全然わかりません」


「参った?」


「いいえ、参りません。考えればわかるはずです」


ありゃ? 悔しがっている。

フフフ、チェスの時と同じじゃん。


「モニカさんの考えていることは、和平につながりますね」


「はい」


「それは、わたしが、何が何でも叶えます。だってそれは、敵・味方関係なく必要なんですよね。あったら皆が、すごーく助かるんですよね!」


そこまで、ムキにならなくても。

はぁ、でも真剣な顔でムキになってるところが…

そんなこと言われたら、胸がキュンキュンなんですけど。

ナニコレ、珍獣ロレンツィオ愛!

わたしは、我慢できなくて思わず言ってしまった。


「ロレンツィオ様、チェックメイト! 今、検温していい? 検温したい!」


「モニカさん、あまりわたしを煽るのはやめてください」


軽蔑されても、こちらは瞳を閉じて準備万端です。

額にゴッツンコを待機しております。


「……モニカさんは、男ってどんな生き物か無知すぎます。

そんなに煽られたら襲いますよ」


「え、無知って?」


「もう手遅れです。覚悟してください」


うっそーーー!

でも、幸せです!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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