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第74話 ランペイジ

強化フォーム登場です。

いつもに増してネタが盛り込まれてたりします。

義母の扱いが中々に酷いですが平常運転で何だかんだいって慕っているホマレです。

【ホマレ視点】


 久々のデュランダルへの変身。

 この姿になると各種能力がアップする上、空を飛べたりビームを撃てたりする。

 ただし、この状態の燃費はかなり悪い。

 なのでコスパで考えると人間状態で力を引き出した方がいいがこの相手にはそういうわけにいかないのだろう。


「てめぇ!何処の誰か知らないがナメやがって!!」


 激昂して起き上がった魔人目掛けて駆け寄ると飛び上がって左肩へ後ろ周り蹴りを放つ。

 更に着地と同時に両手を組み高く上げると体重を乗せ斧を叩き込むがごとく相手の胸元に叩きつけた。

 攻撃に対し魔人はわずかに位置が下がるのみだった。


「変わった奴が出てきたから少しは期待できるかと思ったが…………こんな弱い打撃で俺を倒せると思うなーっ!」

 

 魔人の平手打ちが俺の顔面に入る。

 更に連続で左右から叩き込まれ、腹にパンチ、そして俺を掴んでのリフトアップ。

 そのまま回転をつけて地面へと叩き付ける。

 更に倒れた俺にのしかかると両足を使い連続で踏みつけを行ってくる。


「ほうら、どうだーー!お前らは所詮、俺達に捕食されるだけの脆弱な存在なんだよー!!!」


「くそっ、こんなもの。クリスの心が受けた痛みに比べれば、屁でもない!!」


 タイミングよくブリッジをして魔人の身体を弾き飛ばす。

 よろめきながらも着地した魔人目掛けビームを放つ。


「レッキングスマッシャーッッ!!!」


「ハッ!甘いわ!!」


 魔人が手から緑色の魔光線を放つ。

 恐らくあれはビームじゃないはず。だってあれは親父が目覚めて俺達に遺伝した『よくわからない力』だから。

 

 二つの奔流はぶつかり合うがやがて敵の方が勢いが強く押されだし、そのまま押し切られ俺に着弾した。


「ぬおおっ!?」


 かなり減衰させていたもののダメージは決して少なくない。

 やっぱり早まったか。戦闘開始すぐの必殺光線はダメだって相場が決まってるもんな。


「おいおい、面白そうな事をしてるなぁ。ソウル?」


 更にまずい事が起きた。

 背後から突然、何者かに羽交い絞めにされた。

 何者か、と言ったが相手はわかっている。俺の事を前世の名前『蒼流(そうる)』で呼ぶやつなど今は一人しかいない。


「アトム!!」

 

 前世の弟、アトムが『アポロンナイト』に変身して俺の動きを封じていた。


「さぁ、来いよ!先輩さんよー!!」


 アトムが俺の四肢を封じながら魔人へと飛ぶ。

 魔人は承知したとばかりにラリアットで迎え撃ち俺の喉元に強烈な一撃を叩き込んだ。


「プレデターズシャットダウンボンバー!!」


「ぐあぁぁ………っ」


 血反吐を吐きダウンしてしまう。2対1は反則だろうが!!

 だがアトムは俺の頭を掴むと強引に起き上がらせた。


「まだ寝かせねぇぞ。てめぇのせいで妹が、キララが死んだんだ。兄貴のくせによぉ、本当にどこまでもクソな兄貴だ!!」


 恨みの言葉を吐きながら何度も俺の腹にパンチを入れていく。


「死ね!死んであいつに詫びやがれ!!」


「ぐっ……アトム……」


 キララと戦ったメールの話を聞く限り、もしかしたらアトムも昔の自分を見失っている可能性がある。

 もしそうなら元に戻してやりたい。

 だけどこのままでは……


「ほらほら、よそ見厳禁だよー!!」


 突如割り込んできた鬼型モンスター・デビルオーガの金棒がアトムを殴り倒す。

 何でこんな所にデビルオーガが?いや、これは……


「義母さんか!」


 そうだ。デビルオーガは昔から我が家にちょっかいをかけてきた義母が変身してたお気に入りモンスターだ。

 節分の度に我が家にこれで来て豆投げられたら爆発して撤退するからなぁ。俺が5歳の頃には地域の恒例イベントになってたぞ、あれ。

 しかしまあ、当時は『頭のおかしいヤバい女』という認識だったのが今や『頭のおかしいヤバい上司で義母』だからな。人生って何が起きるかわからないものだ。


 義母が変身したデビルオーガは執拗にアトムを攻撃し俺から引きはがす。

 まあ、恐らく色々なモンスターの力を融合させているから原種より強いだろう。

 つまり今の間に魔人を倒せという事なのだろうが……正直きつい相手だ。

 

 デュランダルの状態で使った事はないが、姉さん達から継承した力を上乗せするしかない、か。

 考えた瞬間、あの時みたいにアリス姉さんから継承した魔道具が飛び出してきた。

 使えって事か!?だけど俺は未だこの力を制御出来ていない。

 もしまた暴走してしまったら……


「恐れないで!」


 背後でクリスを抱きかかえたセシルが叫んだ。


「ジェス君なら大丈夫!もしまた暴走したら大技叩き込んでも何とかするから!だから使って!あなたが守りたい人達の為に!!!」


 そうだ。迷っている暇なんて無い。

 大切な人達を守る為にも、今度こそこの力を制御してみせる。

 今度は自分の意志で魔道具を掴み、叫んだ。


獣纏(じゅうてん)!!」


 身体中を凄まじい力が流れていき意識が飛びそうになる。

 いい加減にしやがれ!姉さんが俺に託してくれた力だぞ?俺が扱えなくてどうする!

 そうじゃないと大切な人達がみんな手の間から零れ落ちてしまうだろうが!!


【クリス視点】


 目を覚ますとあの人の3人目のお嫁さんだという人に抱きかかえられていた。

 私は……


「恐れないで!」


 叫び声に驚き周囲を確認すると怪物になったちびと謎の戦士が対峙していた。


「ジェス君なら大丈夫!もしまた暴走したら大技叩き込んでも何とかするから!だから使って!あなたが守りたい人達の為に!!!」


 え?ジェス君?

 確かこのお嫁さんはあの人の事を『ジェス君』って呼んでたっけ?

 え?じゃあもしかしてあそこに立ってるのって……

 戦士にあの人の姿が重なった。


 戦士は目の前に浮いている変なものを手に取った瞬間苦しみだした。


「ジェス君、耐えて!あなたなら出来る!だから、頑張って!!」


 必死に叫ぶお嫁さんを見て、何だか自分が恥ずかしくなってきた。

 あんな風に拗ねて。本当は話したいこと色々あったのに、それなのに……今の自分に出来る事があるとしたらそれは……


「ホマレさん、頑張って!負けないで!!」


 出なくなった筈の声。

 お嫁さんにも負けないくらいに大きな声援を、私は彼に送った。

 


【ホマレ視点】

 

 ダメだ、抵抗すればするほど身体が引き裂かれそうになる。

 かといって抵抗を止めたら意識を持っていかれて暴走するし……

 ふと、誰かの手が重ねられた。この手は……

 その方向を見るとそこには優しく微笑む前世の妹、キララの幻影が立っていた。


『大丈夫だからね。お兄ちゃんなら出来るよ。応援してくれる人たちがいるから』

 

「キララッ!」


 更に耳に声援が飛び込んで来た。


「ジェス君、耐えて!あなたなら出来る!だから、頑張って!!」


 セシルの声だ。不思議と身体の奥から力がみなぎって来る。


「ホマレさん、頑張って!負けないで!!」


 この声は……クリス!?あいつ、喋れなかったのに……

 瞬間、さらなる力が沸き上がった。

 しゃべれなくなっていたクリスが勇気を振りそぼってくれた声援だ。応えないわけにはいかないだろ!!!

 恐れさえ乗りこなせるなら、俺は何処までも進化していく!!


「うぉぉぉぉぉっ!!」


 咆哮と共に俺の身体から空中へ溢れ出た力が追加装甲となり次々と装着されていく。

 そしてすべての装甲が装着され瞬間に迸ってエネルギーが魔人を吹き飛ばした。


「な、何だこいつは!?何をやりやがった!?」


 これは……理解できるぞ。

 アリス姉さんの力とリリィ姉さんの力が組み合わさっている。

 そしてもうひとつ……キララが力をかしてくれている。


「ランペイジ・デュランダル。これが俺の新しい力だ!!」


「名前が長いんだよぉぉぉ!!!」


 俺は素早くボウガンを錬成。

 そして氷属性が乗った矢を連続で魔人の足元に放つ。

 着弾と同時に脚元が凍り付き動きを封じた。


「甘い!!」


 緑色の魔光線が放たれるが俺は影に潜って回避しながら接近。

 影から飛び出すと同時に魔人の喉元にラリアットを叩き込むとそのままぶん回す。


「ランペイジ・ハリケーンラリアット!!!」


 空中へ力任せに投げ飛ばした魔人に対し俺は更なる一撃を放つ。

 リリィ姉さんが得意とする風属性、アリス姉さんが得意とする氷属性。

 二つを組み合わせ荒れ狂う氷の竜巻を作り出しそこへビーム属性を付加。


「ブリザードブースト!!」


 氷の竜巻に巻き上げられズタズタにされたプレデターを空中でキャッチ。

 肩に担ぎ上げた状態で後方へ反りかえり変形フロントスープレックスで脳天を地面へと叩きつけた。


「ランペイジ・ジャジメント!!」


「馬鹿な、この俺が、まだ誰も、誰も食ってないのにぃぃっ!!」


 全身にひびが入り絶叫しながら悪辣な捕食者は砂となって消滅した。

 よし、こっちは倒した。後は……

 

 アトムと義母さんの方を見るとアトムの一撃により天を仰ぎながら倒れ込んだデビルオーガが爆散した。

 えーと……まぁ、爆散は毎回のことだしあの人なら問題はないだろう。どうせその辺に退避している。


「兄貴ィィ!今度こそお前を地獄に送ってやるぜ!そしてキララの仇を討ってやる」


「アトム……お前には見えないのか?俺が纏う力、誰が力をかしているのか」


「知るかよぉぉぉ!!」 


 叫びながら迫るアトム。

 俺は足元の影を操り刃を作り出すとアトム目掛け放った。


「そ、それは!?」


壊刃影(ブレードウェイ)。だったかな?」


「何でキララの技を使ってやがるんだぁぁぁ」


 剣を取り出し襲い掛かって来るが俺も刀を錬成して応戦。


「キララが大事だったんだったら。せめて俺があいつの技を使ってる理由くらい、見えやがれよ!!」 


 相手の剣を弾き、アリス姉さんの技で一気に下から斬り上げた。

 

流星光底(りゅうせいこうてい)ッ!!」


アトムの超多層装甲『アイギス』を切りしていく感覚があった。


「まだだ!お前が斬り裂いたのは10層だけだ!!」


 アトムが蹴りを入れて俺から離れる。


「前は1層だけだったことから考えりゃ随分と成長したもんだな、俺も。それじゃあもう一回こいつをぶち込んだらその装甲も終わりだな」


 『アイギス』は20層が重なっている。恐らく義母さんがある程度壊しているだろうからそう考えると勝負はほぼ付いているようなものだ。


「黙れ!黙れ黙れ!お前は殺す!俺がキララの仇を討ってやるんだよぉぉぉ!!!」


 やれやれ、聞く耳を持たない状態だな。

 仕方ない。目を覚まさせてやるか!!

 俺は大きく屈みこむと助走をつけて地を蹴って飛び上がる。

 アトムも剣にエネルギーを込めてこちら目掛け飛びかかってくるが俺は刀を投擲。

 ビームエネルギーを纏った刀が楔の様にアトムを空中に張り付けた。

 空中で一回転してレグルススクリューでアトム目掛け突っ込む。


「エクシードスクリュー!!!」

 

 ビームの渦を纏いながらアトムの身体を貫き着地。

 アトムの身体は直後に地面へ叩きつけられた。

 身体に傷はない。だが、決着したのは確定。


 アトムを一瞥し、ゆくりとセシルたちの方へ歩き出す。


「待ち……やがれ……ガブファッ!!?」

 

 起き上がったアトムだが身体の内部からあふれ出した俺のエネルギーで残った装甲もはじけ飛び血反吐を吐きながらゆっくりと倒れ込み……爆発した。


「……いかん。やり過ぎた」

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