クマ客だらけ、ピンチな黒クマ君!
※ さあ開店の時間です。雇われたくろクマ君とシロクマ子ちゃんは、上手くお仕事できるでしょうか。
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さあ9時の開店の時間となりました。
アカシヤはちみつ店のドアを開けて外へ出てきた黒クマ君。
『閉店』の青い看板を『営業中』と裏返しにしました。
「「おお、開いたぞ!」」
既に朝早くからお店の回りには、ワーワーと騒ぐお客のクマたちで一杯集まっていました。
「うわあ、お店の外はすんごいクマだかりだ!」
思わず黒クマ君がびっくりするくらいのクマ、クマ、クマだらけでした。
「待ってたわ!」
「わあ、良かった。早く入れてちょうだいな!」
「ちょっと、あなた押さないで、私は2時間以上前から待ってたのよ!」
「何だと、俺はもっと前から待ってたぞ!」
さあ大変です、あっというまに狭いお店の入口の前には、クマたちが押し合いへし合い押し寄せてきます。
「み、皆さんどうか落ち着いて下さい。店内は狭いので順番に並んでお1人ずつ入ってください!」
黒クマ君は両手を開いてドアの前に立ち、押し寄せるクマ波をいったん止めました。
「うるさい、俺は家族のために朝からこうして来て待ってたんだ!通せ!」
「きゃ、痛い!」
と大きなグリズリークマさんが、一番前にいた品の良い若奥様風のクマさんを押しのけようとぶつかりました。
「お客様、大丈夫ですか?」
「痛い、店員さん。この巨大なクマが私を押したわ」
「何だと大げさだな、ちょっとぶつかっただけだろう。いいからチビ、早くはちみつケーキを売ってくれ!」
グリズリーみたいに大きなクマさんは怒鳴りだしました。
──うっ、チビって僕のことだよね。
このクマ客、グリズリーみたいに大きくて怖いよう!
黒クマ君は、こんな大きなクマを初めて見たので内心ビビってます。
困ったなぁ。
こんなにたくさんのお客が一度に店に入ったら、クマで一杯になって販売どころじゃないぞ!
わあ、どうしよう……。
「ほらチビ、早く入れてくれ!」
「あ、駄目です。お願いですから、いったん一列に並んでください!」
黒クマ君は、必死になってお店に入ろうとするクマたちを、なんとか制止しようとしましたが、とても無理そうです。
クマ客たちはおしくらまんじゅうのように、ぎゅうぎゅうに集まってきます。
その時でした──。
「大丈夫よ、黒クマ君!」
と店内から白いクマ子ちゃんがドアを開けてそろっと出てきました。
「白いクマ子ちゃん……」
黒クマ君が振り向くと、白いクマ子ちゃんが笑ってウインクしました。
頭の片耳にピンクのリボンを付けて真っ白い毛をふさふさした、白いクマ子ちゃん。
──はああ、いつみても可愛いなぁ
と、黒クマ君は白いクマ子ちゃんを見て思いました。
「みなさま、おはようございます!」
「「!?」」
朝のヒンヤリした空気の中で、凛としたよく通る白いクマ子ちゃんの声が響きます。
ザワザワしていた客クマたちは、一瞬黙って白いクマ子ちゃんを見つめました。
「本日はようこそ、アカシアはちみつ店にいらっしゃいました!これからはちみつケーキを予約したお客様に順にお渡しいたしますので、もうしばらくお待ちくださいね!」
と、白いクマ子ちゃんはにっこりと笑った後、客クマたちに向かって一礼しました。
白いクマ子ちゃんは若い少女クマですが、なかなかしっかりした子グマでした。
クマ村に1つだけある中等学園でも、生徒会の副会長をしていて頭もとってもいいんです。
黒クマ君と白いクマ子ちゃんの家はお隣同士で、2人は小さい頃から仲良しさんでした。
黒クマ君は可愛い白いクマ子ちゃんが大好きで、今回の黄色いクマさんから頼まれたお店のお手伝いも、白いクマ子ちゃんに誘われて2つ返事でOKしたのです。
「黒クマ君、ちょっといい?」
「うん、どうしよう白いクマ子ちゃん」
「あのね……」
すると白いクマ子ちゃんは、黒クマ君の顔を近づけて、ごにょごにょと耳打ちしました。
「おい、ちびっ子たち、何をこそこそ話しをしてるんだ、早く店に入れろ!」
グリズリーみたいな大きなクマは、再びイライラして叫びます。
そんなのはおかまいなしに白いクマ子ちゃんは、黒クマ君に耳打ちを続けました。
するとどうでしょう。
さっきまでビビっていた黒クマ君の顔に明るい笑顔が戻ってきました。
「さすが白いクマ子ちゃん、それはいいアイデアだね!」
と、黒クマ君はにこっと笑ってポンと手を叩きました。
はてさて、白いクマ子ちゃんは黒クマ君に何をお話したのでしょうか。




