第七話
圭司はふらふらと歩いてる。遠くでサイレンの音が聞こえる。「はぁー」と大きなため息をつくが、何も状況は変わらない。
「おい、中村じゃないのか?」
はっとして振り返る圭司、一台のワゴン車が止まって運転席から顔を出している男がいる。
「矢野?」会社の同僚の矢野だ。
「何してんの?こんなとこで?」矢野が不思議そうに尋ねた。
「ちょっと・・・」困ったように答える。
「なんだよ一体、お前んとこ大分向こうじゃないか」
困ってしまう圭司、あきらめて「・・・車、取られた・・・」と小声で言った。
びっくりしたように、ワゴン車を降りる矢野
「なんで?どうして?警察には言ったのか?」
「言ってない・・・」と言ったとたん切羽詰まったように「矢野!何も聞かずに車貸してくれ!」
矢野はいきなりでたじろぐが、あまりにも悲壮な表情の為、事が重大なのかと思い、少し考えて「ああ、うん、わ、わかった・・・俺んちすぐそこだし・・・」
圭司はニコリと笑い、矢野の手を握りしめ、ワゴン車に乗り込みながら「ありがとう、ありがとう」と言った。
矢野もきょとんとしながらも「気をつけろよ」と言った。
圭司は車を走らせた。自分の車を探す為だ。
しばらくはあてもなく走り回るがなかなか見つからない。大きな交差点で信号待ちになったとき、遠くで聞こえていたサイレンがだんだん近づいてくる。どうやら右方向から聞こえているようだ。圭司がそちらの方に目を向けると勢いよく、圭司のセダン車が目の前を走り抜け、その後ろをパトカーがサイレンをならしながら追尾している。
「えっ!なんで?」圭司はそう呟くとパトカーの後ろを追いかけ、急発進する。




