毒
静寂が部屋を支配する。
美術室で味わった静寂とは違い、温かみと厳かな雰囲気を混ぜたような雰囲気ではない。
ただひたすら重苦しい静寂が部屋を支配している。
家には誰もいない。
たまに響くのは自分のお腹の音だけ。
空腹がより虚しさを増幅させる。
私は、それから逃げるようにして布団を被り眠った。
静かな夜を乗り切り、陽の光が無情にも朝を告げる。
パン一つを大事に口に入れて、学校へ向かう。
最近は暑さは和らぎ、秋の到来を予感させる。
恵みの秋。
その名の通りに、私にも恵みが降ってきたら、と考えて頭を振る。
考えるだけ虚しいだけである。
「夏樹昼ご飯それだけ?」
「うん」
私の机にはパン一個だけ。
私の学校は、給食制度はないかわりに食堂があるが、私はそれを利用できない。
「あっ、もしかしてダイエット中とか?」
「ううん」
ダイエット中もなにも、私だって食べれるものなら食べたいのはやまやまではあるが、現実は非情だ。
夜は再び……。
そこまで考えて、私はそれ以上考えることを止めた。
その日の夜中のことだった。
あまりの空腹に耐えきれず、私は目を覚ました。
時刻を見れば午前四時。
深夜と早朝のボーダーラインのような時間帯。
私は部屋を出て食べ物を買うことを決断した。
なけなしのお金で、パン二つとカップ麺という贅沢を行うことにした。
足りるかなぁ……これ。
色々と考え込んでいると、ふと声が聞こえた。
「君、こんな時間に何してるの?」
警察官か!?
もしそうなら、露見する可能性も……。
恐る恐る振り向いた先に立っていたのは、フードを深目に被った人物だった。
声色からは、人物像は想像できない。
「あぁ、ごめん。食事を買ってきただけか」
私が片手に持つビニール袋が目に入ったのだろう。
「でも、こんな時間に……随分と早起きなことだ」
「ど、どうも……」
「この時間はまだ暗いからね。気をつけて」
深目に被ったフードから垣間見えた目は、まるで私の全てを見透かしたかのような眼差しに見えた。




