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パートナーX  作者: 蓮浦 氷華
3/17

発芽

入れ替わりから翌朝の事だった。

僕は初めてナツの親と対面した。

少し細身の、深い色を纏った母親だった。

「ナツ、ご飯代ここに置いておくから」

ただそれだけを言い残して、()は去っていった。

テーブルに置かれたパンを静かに食べ、ランドセルを背負う。

今日から僕らは中学生になる。

そして、()は沖島 夏樹となる。

バックを片手に、震える足で中学校に向かった。



非常に長い校長先生の話を聞き終わり、ついにあの時間が来る。

「はい、それではまず皆さんに自己紹介をして貰おうと思います」

担任の朗らかな声と共に、その時間は始まった。

沖島と蓮見なので、当然私の方が順番が早い。

何を話そうかと考えている内にあっという間に順番が来てしまった。

「えっと……」

完全に言葉に詰まり、視線が宙を泳ぐ。

パチリ、と蓮見君と目があった。

自信に満ち溢れたその表情が、私のちっぽけな勇気を奮い立たせた。

「沖島 夏樹です。趣味は……特にありません。よろしくお願いします」

無難、というべき内容だったがしっかりと言えただけ良かったと言うしかない。

私の席の後ろである、香島さんの自己紹介からしばらくして、遥の自己紹介が始まった。

「蓮見 遥です。趣味は野球です。好きな野球選手は本柳 正隆です。よろしく!」

元気な声での自己紹介はあっという間に終わりを告げた。

ちなみに本柳選手は、野球に詳しくない私ですら知っているほどのスーパースターだ。

テレビに引っ張りだこで、独自のセンスを存分に発揮するというイメージが強い人気者。

いかにも遥が好みそうな選手だと思う。

自分の席に戻った遥が、こちら向いてニコニコしていた。

あれは、物事が上手くいった時にする顔だ。

伊達に遥と長く過ごした訳ではない。

私も、小さく手を振ることで遥に合図した。

これは、理解したことを示す私の仕草だ。

私たちは、次第に『私』になっていくのだ。



「ねぇねぇ、蓮見君と知り合い?」

後ろの席の香島 梓さんが興味深そうに聞いてきた。

「うん、小学校の同級生」

「へぇー、だから仲良さそうだったの」

仲が良い。

他人から見れば私たちは、『仲が良い友達』に見えるらしい。

その事実が私の胸を踊らせた。

「おはよう、沖島さん」

声の主へ振り向くと、ロングヘアーの良く似合う、一見クールに見える人物が立っていた。

えっと……確か吉野、という苗字だけは覚えている。

「あっ!紹介するね!私の友達のヨッシーだよ!」

香島さんが待ってましたとばかりに語る。

ヨッシーと紹介された彼女は、若干顔が強ばっていたが。

「吉野 司。よろしく」

「私は沖島 夏樹。よろしく」

二度目の自己紹介はさっきよりすんなりと出来た。

放課後になるまで、今日は三人で話続けた。


放課後、二人と別れた後に約束の待ち合わせ場所である公園へと向かった。

遥はやっぱり遅れてやってきた。

「お疲れ夏樹」

気さくに手を振ってこちらによってくる遥。

どことなく、犬を彷彿とさせる佇まいだった。

「お疲れ様遥。どうだった?」

ここで言うどうだった?とはもちろん入れ替わりの件についての話だ。

「バッチリ。なんの問題もないね。そっちは?」

「何に問題なかったよ。驚く程上手くいった」

嘘ではない。

私が想像していたよりも上手くいっただけだ。

課題はまだまだこれからたくさんある。

「お互い、楽しもうぜ。せっかくのチャンスだからな」

満面の笑みを浮かべた遥は、何故だか頼もしかった。

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