16話 ライブハウス 二
「お待たせ!」
春子は時間通りに、待ち合わせ場所にやって来た。
今日の春子の肩には、何も乗っていない。
「私も、今来たところよ」
私はほっとして返事をする。
駅で待ち合わせをして、1時間半電車に揺られてライブハウスに着いた。
その間、何人もの霊に遭遇。
死神の姿も見た。
意識的に見ないようにすることもできるのだが、それには多少なりともエネルギーが必要で、ぼーっとしてたら、勝手に目に飛び込んで来る。
だから電車は苦手なのだ。
満員電車に乗っていたら、すぐそばに死神がいても、その場から離れることができないから。
ただ、今回は春子がいるので、できるだけ春子を視界に入れて、霊は見ないようにしていた。
開演30分前にライブハウスに着いたが、すでに開場していて、中に入ると客席の半分ぐらいが人で埋まっていた。
と言っても席はなく、立ちっぱなしのオールスタンディングだ。
私と春子はドリンクを受け取り、開演時間を待った。
待っている間も客は増えて行き、開演時間前には、ほぼ満員になっていた。
皆私と同じくらいの年頃だと思うのだが、ちょこちょこと混じっているおじいさんやおばあさんの霊を見ると、つい笑ってしまう。
この霊たちは、演奏が始まるとどうなるのだろうか?
変な好奇心が湧いてくる。
「もうそろそろだわ」
春子が話しかけてきたから隣に目をやると、なんと、春子の肩におじいさんが乗っていた。
よほど居心地が良いのだろう。
さっき見たおじいさんの霊が、春子に乗り換えたのだ。
開演時間になり、ロックバンドの演奏が始まった。
春子は、ライブハウスは初めてだと言ってたが、ノリノリで手を振っている。
肩に乗っているおじいさんも、春子のマネして手を振っていたから笑ってしまった。
ロックが好きな霊だったのか……と妙に納得した。
ステージを見たら、ギターを抱えたボーカルが2人、ベースギターが2人、キーボード、ドラムの合計6人グループだ。
隣で春子が「キャーカッコいい!」なんて叫んでる。
確かに、ボーカルの2人とベースの1人はイケメンだと思うが、他の3人は大したことないと思う。
それにしてもベースが2人だなんて、珍しいバンドだなと思っていたのだが、何か違和感がある。
ベースが二人なら、二つの音が聞こえてくると思うのだが、ベースの音は、一人の音しか聞こえない。
イケメンのベースは、一生懸命に演奏しているのだが、どうも彼の音が聞こえていないようだ。
だけど、もしかして……?
「ねえ、春子、このグループって何人なの?」
演奏が終わって、ノリが静かになったところで春子に聞いた。
「えっ? 5人だけど……、なんで?」
春子が、不思議そうな顔をして私を見た。




