彼岸花
「ふふ……懐かしいな。この日記」
「ん、何それ?」
「これはね。私が書いていた日記よ。 昨日からずっと読み返してるんだけど、今見てみると笑える。私が辛い時に友達のものを借りて書いてた」
「なんだそれ」
「あの時はありがとうね。和哉」
「なんだ急に、いつのこと?」
「私が死のうとした時だよ」
「あー、山で泣きながら電話してきた時ね。あれは笑った。車で迎えに行ったら涙と鼻水まみれで倒れててさ。びっくりしたよ。ホントに――きつい時はちゃんと俺に言えよ」
「ごめん、何も考えられなくなってた。簡単に言えば、めっちゃ病んでた」
「あの時の奈津は暗かったからな。奈津の友達が亡くなったことを忘れて、それを思い出したんだろ? その異変に気付いていたのに俺は何もできなかった」
「それは私が理由を言わないようにしてたからしょうがないよ」
「友達を亡くして、辛かっただろうに……本当にごめん。ちょっと軽く考えちゃってたんだ。奈津が友達のことを忘れてるならそれでいいかもって。それにそんなに親しい人とは思ってなかったから」
「もう過去の事だからいいの」
「そっか……まあ、暗い話はここまでにしてさ。明るい話をしよう」
「明るい話って?」
「うーん、子供の名前を決めるとか? 妊娠してからもう8ヵ月だろ? いい加減名前をきめないと」
「そうね、なかなか決められなくて……でも、さっき決めたよ」
「お、タイミングがいいな。で、何?」
「この子の名前は……憂花」




