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第二十八作戦:どこかズレてる日常へ1

蝶々とマスク・ド・ドラゴンが奇妙な共闘で怪人クロウを撃破した翌日。

蝶々はアジトの椅子に座り、戦いの疲労と痛みを引きずっていた。


体中にできた痣や浅い傷は、昨日の激戦を物語っている。


「…はぁ…いっ(あの牛女が邪魔しなければ、こんな疲労も痛みもなかったのに…)」


忌々しい胸を持つマスク・ド・ドラゴンの顔を想像すると

苛立ちが募る。


「蝶々さま、お疲れですわね。よろしければ、わたくしがそのケガを

調べて差し上げますわ。」


そう言いながら近づいてきたのは、パンドラだった。


「問題ない。ただの打撲だ」


「まぁまぁ、蝶々さま。遠慮せずに――さぁ!…はぁ…はぁ」


そう言うやいなや、パンドラは蝶々の肩にそっと手を置いた。


「おい、やめろ。」蝶々は手を振り払うが、パンドラは諦める様子がない。


「打撲だってバカにできませんわ…はぁ…

蝶々様は人の血が4分の1入っているのです。何かあれば心配ですわ…はぁ

…はぁ」


何やら息の荒いパンドラに違和感を覚えていた蝶々だが、腕だけならと

そのまま調べさせる。


「ふふ。…はぁ…蝶々さまのお肌は滑らかでとても

素晴――ごほん…大丈夫のようですわね…

ふぅ…で、ですが他の場所どうでしょう…?はぁ…はぁ…

外傷はなくても、油断はできませんわね…はぁ…」


「っ……おい」


「はぁ♥張のあるお尻♥…はぁ♥とても良いですわ♥…ふふ♥」


パンドラの手が不自然に肩から腰へと滑り落ち彼女の尻を撫でまわす。

それに蝶々の額には怒りの青筋が浮かぶ。


「パンドラ……お前、本気で死にたいようだな。」


「はっ!…じょ、冗談ですわよ冗談…♥」と笑うパンドラだが、蝶々の拳は

しっかりと握られている。


「蝶々様…その拳を下げ―」


ドカァン!


破裂音と共に、パンドラの頭部が宙を舞う。

部屋中に爆音が響き渡り、アンカーが部屋の外から顔を覗かせた。


「……うち、今ちょうどデータ整理中やったけど、何かあったん…?」


「パンドラの頭を吹っ飛ばしただけだ。」


蝶々はため息をつきながら答えた。


「はぁ…まーたパンドラが調子乗ってたんか…?」


アンカーは呆れたように言いながら、再生していくパンドラを見る。


「はぁ♥はぁ♥何度味わっても、この感覚は最高ですわ♥」


「…蝶々はん。こら、あかんわぁ…。癖になってるで…」


「分かっているが…どうもできないだろう…」


「せやなぁ…(うちは人をシバくことで、発散しとるけど。

たまには、蝶々はんにシバかれるのも…)っと…うち、データ整理の途中だった。」


「ほな、またなぁ」とアンカーは手を振って自室に戻っていく。


蝶々は椅子にもたれ掛かり上を見ながら呟いた。


「はぁ……カラス男…怪人クロウか…」


蝶々の頭に昨日のカラス男。怪人クロウの姿を思い出し、今後のことを考える。


「蝶々様…」


さっきまでとは、うってかわって真剣な表情に戻るパンドラ。


「…怪人について、ですわね…」


「あぁ。私たち以外の怪人が現れた。

今後、新たな怪人が現れるのも時間の問題だろう…

パンドラ…お前はどう思う…?」


性癖さえなければ有能な参謀であるパンドラに意見を伺う。


「…そう、ですわね…仲間にするは、どうでしょう…?」


「あぁ…それも考えた。マスク・ド・ドラゴン対策のためにもな…」


パワーアップしたマスク・ド・ドラゴンは、怪人たちより厄介な存在だろう。

そのために戦力を補強するのは有効な手段だ。


現在、蝶々を首領として、パンドラ、ピエラ、アンカー、サンダー、エル&アールが

上級に立ち、下級にアンカーによって洗脳された戦闘員がいる。

             ・

「たが…中級、下級の戦力は今はそこまで必要ではない…必要なのは

私たち上級クラスの怪人たちだ」


「ええ」と蝶々の言葉に同意するパンドラ。


「力のない怪人を入れても、焼け石に水ですわ。

それに、信用もありません。

昔から、不死鳥の羽に所属していた怪人ならいざ知らず

新米の怪人がいつ裏切るかもわかりませんわ…」


蝶々も指を口元に当て、頷く。

組織を大きくなれば、人数の規模も大きくなる。


そうなると、1人1人の動向が把握できなくなってしまう。


ようやく世界征服するとなった直前に、背後から刺されたら笑い話にもならない。


「…規模が大きくなれば、いつかは怪人を増やす…

だが、それは今じゃない。…やはり、仲間にするよりは排除の方が優先か…」


「はい。…

信用でき尚且つ戦闘力の高い怪人を仲間にするまでは

他の怪人は要らないかと…」


「よし。幹部たちに通告しておけ…

怪人の兆候が表れれば、すぐに報告しろと。あと、マスク・ド・ドラゴンの

件も忘れるな…いつヴァリアントサーカスに潜入してくるか分からないからな…」


「承知しました」とパンドラは深々と頭を下げる。

さきほどのセクハラ怪人とは別人のように思えてしまう。


蝶々は立ち上がりつつ部屋を後にする。


「…ちょっと息抜きをしてくる。」





――





蝶々はアジトの外に出て、深呼吸をしてみた。

このところ仕事の連続で精神的に参っている。


表ではヴァリアントサーカスの団長兼司会。

裏では、悪の組織『不死鳥の羽』の首領。

体が休まる日がない。


新たな怪人。そしてマスク・ド・ドラゴンの魔の手。


考えることが一杯だ。


「…ふぅ…疲れた…」


サーカス経営と悪事などで資産は十分溜まっている。

ただお金があっても、休みがないため使う機会がない。


「今の金を有意義に使いたいな…服…化粧品…靴…美容グッズ…

ふっ…バカバカしい。私には必要ないな…」


しばらくして、蝶々は一人頷き独り言を呟く。


「…うん。そうだ…海外に旅行にでも生きたいな…1人で…

アメリカ…いや…アイルランド…か?」


次の休みのことを考えながら首と肩をぐるぐる回すと、仕事に戻っていく。



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