076 凶賊勇者が逮捕されない理由を考えてみる
前々回紹介した「エーテリアの迷宮」に関する話題だ。
さて、クリアに必要なアイテムを入手するために、領主の館に不法侵入し、衛兵を多数殺害して鍵を強奪し、勝手に牢獄を開けねばならないことは74話で述べた。
これは時代劇でいうところの凶賊である。鬼平が刀ぶん回しながら追いかけてくるやつ。どーでもいいけど劇画の煽り文句は「平蔵はついに鬼になる!」って、こいついっつも鬼になってんな。
話を戻して、今回はなぜ主人公たちがお咎めもなく町にいられて、聖杯持ち帰ったら勇者と讃えられるのか、その理由を考えてみたい。
①シルヴァン公は、主人公らが犯人と知らない
もっとも単純かつ間抜けな理由。実際、ゲーム中の説明でもシルヴァン公は有力貴族で珍品のコレクターと言われているだけで、有能とは一言も言われていない。
②主人公はシルヴァン公より上位の身分、ないしその者の庇護下にある
このゲームはスタート直後から公と面会し、援助物資まで受け取れる。これは一介の流れ者に対する扱いとは思えない。
となると、主人公は王や貴族の血縁者かもしれない。アーサー王やランスロットが冒険を求めて旅していたようなものだ。なので、公とて手出しできないとは考えられまいか。
ただし、入手した聖杯はシルヴァン公のものとなるので、王族とまではいかないようだ。仮に主人公が王子だとしたら、聖杯は王家のものになるだろうから。
③自作自演
鍵を持っているのは「シルヴァン兵隊長」なのだが、公は彼を排除したかったのではなかろうか? 例えば先代からの重臣で、何かにつけて口出しされて疎ましく思っていたとか。
倒された衛兵も「隊長派」みたいな人たちで、一緒に始末するため狙って館に集めていたのかもしれない。仮に主人公らが撃退されても、「賊の侵入を許すとは職務怠慢」として処断する手もある。
しかし、だとしたらシルヴァン公は相当な奸物といえる。そんな奴の誘いに乗って大丈夫か?
④衛兵殺しは、主人公と衛兵の個人的トラブルとして処理された
このイベントが起きる前、町では幾度か盗賊やごろつき戦士、堕落した魔術師らに襲われることがある。
エーテリアの町、治安悪すぎだろ。こうなるとシルヴァン公ボンクラ説も現実味を帯びてくるかもなあ。
てことは刃傷沙汰は特段珍しくなく、上記のとおり個人間の揉め事として処理ないし放置された可能性。スラム街? の殺しと領主の館でのそれを同列に論ずるのは無理があるのは承知だが……
戦闘後に入手した金やアイテムも衛兵の私物で、館から盗んだとはされなかった。事実、衛兵が持ってた品とは別に、シルヴァン公は宝をいっぱい持ってる。援助物資として貰えるのがそれだ。
⑤不名誉なので認める訳にいかない
有力貴族ともあろう者が、一介の冒険者にあっさり屋敷に侵入されて兵士ボコられて、隊長まで倒されたなんて知られたら恥である。もしかしたら、いやしなくても、これでは有事の役に立たぬと王家から叱責を受けたり、下手すりゃお家取り潰しなんてことも……
つまり公にとって、この一件は「あったら困ること」なので、はじめから起きていないのだ。なら罰しようがない。
表向きにはね。主人公らはとっととエーテリアの町からトンズラしたほうがいいんじゃないかなあ。
とりあえず、思いつくままテキトーに書きなぐってみたが、どれも決定的な説得力に欠けると言わざるを得ない。が、ゲーム中の矛盾や不条理に疑問を持ち、その理由を――よし的外れであろうと――考察してみることは無意味ではないと思う。
「いや、ありえねーだろ」と笑い、作者を蔑むのは容易い。しかし、それはそこで思考を放棄し、新しい発見の可能性も潰えることなのだから。
シルヴァン兵隊長
おそらく「シルヴァン公に仕える兵士たちの隊長」の意。もしかしたら偶然同じ名前だった可能性もあるけど。ゲーム的には戦士と僧侶の複合職である聖騎士にあたり、非常に強い。クリティカルがないのが救い。




