049 トレボー王の城には戻りません! ……もしかして「もう遅い」の元祖?
ウィザードリィの初期三部作を遊べる「リルガミンサーガ」では、最もレベルの高い、いわば本命のキャラクターはシナリオ2に集中している人が多いと聞く。
メタ的には経験値稼ぎがしやすく、強力なアイテムも多いからだろうが、作中の理由をでっち上げてみたい。
ぶっちゃけ1の王様、トレボーが悪い。ひとつ例を挙げよう。
33話で「最初のバージョンは、クリアの際に全アイテムを没収されてしまう」と書いたが、さらに調べてみたところ、真偽は知らないが所持金まで無くなってしまうと何かでチラッと見た。
なんですとぉー!?
報償金が貰えないどころか全財産没収じゃん! いくら狂王と呼ばれる暴君でも限度があるだろ。命がけで戦ってコレじゃ、誰もワードナ討伐に名乗りを上げないのでは……。
と思いきや、冒険者たちは皆ダンジョン攻略に勤しんでいるようだ。なぜゆえ?
所持金没収の理由は、近衛兵に取り立てるために必要だからだとか。時代劇でいうところの、浪人が仕官する際に仲介者に渡す袖の下だ。偉い人は山吹色のお菓子が大好き、それはどこも変わらないらしい。
これはハードの性能的に、仕官するか否かを選べなかったせいもあろう。もっともトレボーは、優れた人材は力ずくででも支配下に置こうとするだろうけど……
さて、この作品のプレイヤーキャラクターには特に設定はなく、各自がその容姿や性格、生い立ちなどを考え、その人物になりきってゲームをする。観客に近い立場でプレイする今時の作品ではなく、古典的なテーブルトークRPGの流れをくむものだ。
つまりプレイヤーの妄想次第では、どこかの王子様だろうが転生者だろうが構わないわけだが、作中の世界設定だと冒険者の大半は流れ者であるらしい。
ある者は口減らしに追い出され、またある者は領主の圧政に耐えかねて逃亡し、紆余曲折の果てにワードナ討伐に名乗りを上げた人たちである。中には偽名を使っているお尋ね者もいることだろう。
私は自作品の冒険者を「大金と名声目当てに自ら剣闘士になった腕自慢」みたいなイメージで書いているが、社会情勢の劣悪さから、より過酷な環境に置かれているようである。
おそらく、城塞都市の永住権など持っていないだろう。ワードナ討伐令という非常事態が終われば、都市を立ち退かされて再び旅烏になるかもしれない。
旅烏だって恋もしたけりゃ夢もある。
不安定な身分、明日をも知れぬ暮らしから脱して、安全な都市に定住し、平均以上の収入と社会的地位を得られるチャンスなのだ。財布の底を叩いてでも賭けてみたくなるのも無理はなかろう。
人は一度だけ全て捨て去って賭けてみたくなるのさ。メロスのように。
とはいうものの、既に書いたようにトレボーは決して名君ではない。むしろ極めつけの暴君である。果たしてその家来になって安寧に暮らせるのだろうか。
そう思えば、キャラをシナリオ2へ移行する際には、冒険や名声以外の思惑が感じられなくもない。誰だって枕を高くして寝たいに決まってる。
仮にシナリオ1の舞台であるトレボーの城と、シナリオ2でマルグダ女王が治めるリルガミンが別の都市とする(二都説)なら、1から2に移行してそのまま戻らないキャラクターは、暴君から逃げて女王についたのかもしれない。彼女は規律に厳しい可能性がある(12話参照)が、狂王よりはましだろう、たぶん。
史実でも、始皇帝から不死の霊薬入手を命ぜられて日本に渡った徐福は、最初から探索の意思などなく、これ幸いと恐怖政治から亡命しただけという説がある。
やべーやつのとこからは人が去るのだ。リルガミンに留まっているのは、決して経験値とアイテムに釣られたからではない。ホントよ?
なおPS版ではワードナを討伐し魔除けを所持した状態で帰還すると経験値とお金を5万ゲット、かつ魔除け以外のアイテムはそのまま。少しは反省したらしい。




