表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

二十二


「君は、いつから“ここ”に、居たんだい?」


【…さぁな。気が付いたら“ここ”、だったから。】


「そうか。」



「君は、いつも、こんなふうに誰かと話をするの?」


【いや、初めてだ。】

【…というより、よもや人間と会話が出来るとは、思ってもみなかった。】


「…そう。」


【私は、唯々“ここ”、であり。唯、聞いていた。】

【それだけ、だった。】



「じゃあ、君の声を聞いた事があるのは、ぼくだけ、なんだね?」


【そういう事になるな。】



【…私は、、】

「ん?」


【私は、自ら声を発する事が出来るなんて、知らなかった。】

【…いや。自ら声を発しようなどと、思わなかっただけかも知れない。】


「…それって、、ぼくと、話がしたかった。って、事かな?」


【ああ。そうなんだと、思う。】


「そう。」



【おまえの『…まぁ、いいか。』という、一言が…そう言う時のおまえの微笑が、

 日を追う毎に、気になっていった。もどかしく、なっていった。】


【そのうち私の心は、ざわめきでいっぱいになってゆき、いつの間にか…

 そう、いつの間にか、おまえに話しかけていた。】


【 …おまえを待つようになっていた。】



「君が、僕を、、待つ?」


【ああ。】


「何故?」


【…何故、って、、】



「だって、君は、ツクモカミ、でしょ?」

「“ここ”には、沢山の色んなひとが来るでしょう?」


【ああ。その通り、だ。】


「なのに何故、ぼく、なの?」



【…そんなの、分からない。】

【ただ、おまえ、だけが気になった。】



「ぼくが、微笑んでいたから?」


【そうかも、知れない。】


「ぼくは、唯の道化、だよ。」


【では、私は、道化の素顔を見てしまったんだな。】


「道化の素顔なんて、面白くないだろうに。」


【そんな事は、無い。】

【とても穏やかで、しかし陰りがあって…心地いいのに、胸が締め付けられた。】


「…それって、、」【私の心の中は!】


【…私の、心の中は最早、おまえでいっぱいなんだ。】


「…そう。」


【どうして、こんな事に、なったのかな?】



「後悔…してるのかい?」


【後悔?】


「うん。人間臭くなってしまった事、後悔してない?」


【分からぬ。何故、私が後悔する?】


「だって、辛いんだろ?」


【何が?】


「ざわめいたり、胸が締め付けられたり。…そういうの、辛いだろ?」


【分からない。】


「…切ない、だろ?」


【切ない?】


「そう。切ないだろ?」


【ああ。そうだな。とても、切ないよ。】



「ごめん、、ね。」


【何故、謝る?】


「辛い思い…させちゃって、さ。」


【よせ。】「それでも…」


「それでも、ぼくは気が付くと、君に会いに来てしまっているんだ。」


【…おまえ。】


「君と居る時だけが、唯一、まともに息が出来るんだ。今のぼくは。」


【それ、って。】


「今のぼくには、君の所以外、何処にも居場所が、、無いんだ。」



【…そうか。】

【ならば、また、来るといい。】


「…え?」


【私のところに、いつでもおいで。】


「ああ。そうするよ。」  


            「ありがとう。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ