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二十
【おまえ…最近、表情が無いな。】
「仮面を捨てちゃったからね。」
【そうなのか?】
「そうだよ。」
【けど、あの時、おまえは仮面を外してたぞ。】
「あの時?」
【ああ。“仮面”に、微笑みかけてた時だ。】
【あの時のおまえは、紛れも無く素顔だったろ?】
「それは…」【今も、同じ素顔、だろうが。】
「それは、苦笑い、って奴だろ?」
【違う。】
【それは、違う。】
【あの時、おまえは、何もかもを包み込むように、微笑んでた。】
「…何が、言いたい?」
【…どうして、おまえは、微笑まなくなった?】
「一寸先も分からないのに、どうやって笑えって言うんだよ?」
【それは、あの時とて、同じだろ?】
「違うよ。」
「…違うよ。あの時は、“仮面”を捨てよう。って、思ってた。」
「色々な事を思い起こしながら、まだ、手の内にあった仮面を捨てよう。
ってね。」
「けど、今はもう、何も無い。」
【…そう、か。】
「それでも、後戻りは出来ないし、したくもないんだ。」
【そうか。】
「…自業自得、だな。」




