7ヶ月と5日目
「なにこの行列」
「この遺跡は、冒険者ランクがC以上じゃないと入れないんだよ。その確認が入り口であるんだ。その為に並んでるのさ」
「ありがとうございます」
前に並んでいた男が彩加の呟きに親切に答えてくれる。
それもそのはず、瑞々しい若さに輝く美少女の彩加を周りの男どもが放っておくはずがない。
たとえ隣にフードで全身を覆った、怪しげな人物がいたとしても、若い男なら声をかけずにはいられなかっただろう。
輝くばかりの笑顔のお礼がついてくるなら尚のこと。
うれしそうに少し上気した顔がたまらなく可愛らしい。
教えた男も、彩加の笑顔に顔を赤くしながら見入っている。
「いつまで待つんだろ?」
「いつも・・・」
「後、13分ほどだな」
すかさず前の男が答えようとするのを、聞こえなかったフリをして、薫が声をかぶせる。
「なんでわかるの?」
待つのに飽きて、ラスクを頬張っていた彩加は、目をキョトンとさせる。
その様子は、リスが頬袋にどんぐりを溜めて、こちらを伺い見ているようで、とても愛くるしい。
「自分が最後尾に並んだとき、自分の前に居る人数÷1分間に自分の後ろに並んだ人数。この場合、65人÷5人で13分。リトルの公式だ」
「・・・」
「西暦1960年代の数学者が証明した理論だ。確か、ジョン・リトル教授だったかな。以外に合う確立は大きいので、知っていると損はない。現実世界では、自動機械が全て計算してくれるから必要ないかもしれないがな」
愛らしく首をかしげた彩加に更に解説を加えてやる薫の周りでは、「へ~」や「ほ~」と感嘆の声が上がる。
遺跡に入ってすぐの小部屋に魔物が3匹いた。
一部屋一部屋虱潰しに攻めて行こうとした、一部屋目ですでに魔物に遭遇したのだ。
彩加は、レイピアに炎を纏わせヒット&ウェイを繰り返す。
さすがに3匹相手ともなると1人では手こずることになるが、薫は本棚から本を出しパラパラとページをめくっている。
「薫ちゃん、なにやってるの?」
「この本、レシピ集みたいだ」
「そんなこといいから、手伝ってよ」
「頑張れ」
レシピ集に目を奪われながらも、薫はと彩加が危なげない戦いをしているのをきちん把握している。
「遺跡の役割はレシピの供給か?」
「知らない。遺跡はレア武器があるのは聞いてるけど、遺跡の目的までは未だ解明されてないよ。けど、掲示板とかの開放は、遺跡攻略が必須うみたい。」
最後の一匹を倒して彩加が薫の見ている本を覗き込む。
「今まで、レシピに誰も気付かなかったのか?」
「遺跡はフィールドよりエンカウントが高いんだよ。経験値稼ぎに来てるのに、読書なんてしてるの薫ちゃんぐらいだって」
あきれた様子を隠しもしない彩加。
「持ち出せるかな」
「さ~」
魔物を倒してレベルを上げてストーリー攻略。
彩加のゲームに対するスタンスはシンプルである。
よって、薫のようにレシピやこの世界の歴史には最低限の興味しかしめさない。
「鞄には入らないか・・・・彩加!」
「わ~ぉ」
レシピ集を部屋の外へ持ち出そうとした途端、大量の魔物が薫の行く手を阻む。
彩加は、楽しげにその群れに突っ込んでいく。
流石に今度は薫も加勢せざるおえない。
結局、必要なレシピを手書きすることになり、薫がひたすら書き写している側で、彩加はせっせと経験値稼ぎに追われることとなる。
それはそれで、有意義なダンジョン攻略となった。




