PV 17
公開ボタンを押した瞬間だけは、いけると思っていた。
『無能と笑われた俺ですが実は世界で唯一《神装錬成》ができるので、辺境で拾った美少女たちと気ままに暮らしていたら王都が泣きついてきました~今さら頼られてももう遅い~』
長い。
自分で付けておいて、長い。
けれど今の俺には、この長さが必要だった。
何の話か一目で分かる。無能。実は唯一。美少女。辺境。ざまあ。もう遅い。
少なくとも、前作よりはクリックされる。
前作のタイトルは『灯台の下で眠る』だった。
タイトルだけでは何の話か分からない。
内容は、海辺の町で人間嫌いの少年が夜だけ灯台守を手伝う話。
自分では好きだった。
結果は一巻打ち切り。
だから学んだ。
好きなものを書けばいい、なんて綺麗事だ。
読まれなければ存在しないのと同じだ。
「よし」
午前零時。
投稿サイトの管理画面を閉じる。
今回は商業企画ではない。
次の企画会議までの間に、自分で数字を作る。
ランキングに入れば担当編集にも言える。
ほら、俺だって市場を見られるんです、と。
一時間後。
PV、17。
「……まあ、深夜だし」
ブックマーク、0。
二時間後。
PV、3。
三時間後。
PV、1。
翌朝。
通勤電車の中で管理画面を開いた。
昨日からの合計PV、27。
ブックマーク、0。
評価、0。
感想、0。
俺はスマホを伏せた。
窓に映った顔が、思っていたより死んでいた。
好きなものを書いて売れない。
それはまだ、耐えられた。
自分が悪いのかもしれない。でも、もしかしたら時代が悪いのかもしれない。
そう思えた。
流行に寄せて売れない。
それも、まあ、耐えられた。
研究不足だったと思えた。
でも今回は違う。
タイトルで釣った。
あらすじも盛った。
読者が喜びそうな単語を、自分なりに全部詰めた。
本文の冒頭では主人公を見下す連中をできるだけ感じ悪くした。
美少女も三千字以内に出した。
それでも。
「媚びたのに売れないの、一番ダサいじゃん……」
思わず口から出た。
隣の会社員が少しだけこちらを見た。
俺は寝たふりをした。
デビュー三年目。
三枝悠人、二十四歳。
三シリーズ打ち切り。
そして今朝。
俺は初めて、本気で悔しかった。




