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それぞれのペアが敵と遭遇している頃、シュカとトカゲは恋愛トークに花を咲かせていた。


「でね、その時のセイがすごく可愛くて!離れるのが寂しいのが丸わかりで!早く一緒に暮らしたいけど、この何とも言えない感覚をもうちょっと楽しむのもいいなぁと思っちゃったんですよ!」

「わかる!わかるぞ、シュカ君!私もカグラにはいつでも笑っていてほしいと思ってはいるが、離れる時のあの顔は堪らないものがあった」

「ですよね!トカゲさんがこんなに話のわかる人だとは思いませんでした」

「私もシュカ君がここまでわかってくれるとは……。丸一日でも話していられそうだよ」

「僕もです!」


敵地への潜入中とは思えない盛り上がりっぷりは、敵の姿を認識したところで終わりを迎える。


「どうやら話の続きは今度だな。食事にでも行ってゆっくり話そう」

「そうですね。店探しておきますよ」


2人の前に現れたのはリファだった。


「はじめまして。と言っても私のことはよくご存知でしょうけど」

「そうだな。リファ君。君があちこちに仕込んだ情報のおかげで初めて会った気がしない」

「そう言うあなたはトカゲさんですね。同じ能力の方にお会いできて嬉しいです」


トカゲの横でシュカが銃に手をかける。いつでも麻酔を撃ち込める状態にあるのに、リファからは余裕しか感じられない。


「あなたはシュカさんですね。困ったな。私は武闘派じゃないから、銃なんて使われたらひとたまりもない」

「そう言うわりには余裕じゃん。僕は舐められてるのかな」

「そんなことないですよ。別に捕まっても構わないだけです。ただ、その前にトカゲさんに一つだけ確認させてください」

「……なんだ?」

「あなたの能力で手に入れた記憶は有罪の証拠として使われますか?」


なぜそんなことを聞くのか。リファの意図は全くわからないが、トカゲは素直に答えることにした。


「いや。能力に対する法整備は遅れているからな。私の見た記憶を元に証拠を探すことはあっても、記憶そのものが証拠になることはない」

「そうですか。安心しました」


言い終わるなりリファは粒子を飛ばしてくる。トカゲが無効化して粒子で反撃すると、あっさりとリファの記憶を見ることができた。

そして記憶の中にあるリファの真意を知った時、トカゲは驚愕するのだった。




公安ではヨル達を保護している部屋の周りを護衛部隊がかためる中、キリは護衛対象と一緒に部屋にいた。


「ルナさん凄いね!僕も動物さんとお話したいなぁ」

「じゃあ、今度一緒に動物園に行こうか。動物さん達が何を言ってるか教えてあげるよ」

「ほんと⁉︎やったー!」


初対面のララとルナはすっかり打ち解け、作戦実行中とは思えない穏やかな雰囲気が流れている。

しかしそれも束の間のことであった。


『キリ、警戒してくれ。今俺の前に、おそらく糸を仕掛けられているヤツがいる。うちの職員だ』


ウツギからの通信にキリは扉を警戒する。通信機からはその職員のものと思われる声が聞こえてきた。


『何が能力者だ。ただの異常者だろ。変な力使いやがって。……気持ち悪いんだよ』


キリの背中に冷や汗が流れた。ずっと昔の、封印していた記憶が蘇る。能力がバレてまわりから化け物扱いされた記憶が。


『こっちがどんだけ怖い思いしてると思ってんだよ。力があるからって調子にのりやがって!お前らなん……か……」

『こちらムジナ。糸が仕掛けられていた職員を麻酔で眠らせました。名前は…』


ウツギと組んでいたムジナからの報告に、キリはその職員の顔を思い浮かべる。若くして公安に入ったキリを心配して、いつも声をかけてくれる優しい人だった。


『他にも糸が仕掛けられている職員がいるかもしれない。みんな警戒を怠るなよ』


トカゲに代わって指揮をとっているダダの声が通信機から聞こえる。今、自分には守るべき人達がいるのだと気持ちを切り替えようとするが、キリの表情はかたいままだ。


「キリ。何かあった?」


明らかに様子のおかしくなったキリにルナが心配して声をかけてきた。


「いや。大丈……」


余計な心配はかけまいと職員のことを隠そうとするが、危険の只中にいる本人達にそれを隠すのはあまりに傲慢ではないかとキリは素直に話すことにした。


「うちの職員に糸を仕掛けられたヤツがいた。暴れる前に麻酔を打たれたから問題はないが、他にも糸を仕掛けられている人間がいるかもしれない」

「そう」

「……その職員は能力者を気持ち悪いって言って攻撃しようとしてきた。だから、そうやって利用しやすいヤツが選ばれてるかもしれない」

「その人も、そんなことしたくなかったかもしれないね」


経験者だからか、ルナの言葉はキリの心にすっと入ってくる。暗く沈んだ思いにそっと寄り添ってくれた。


「その人のこと、キリはよく知ってるの?」

「……時々話しかけてくれて。若いのにこんな仕事して辛くないかって。いつも心配してくれてた」

「優しい人なんだね。普通の人からしたら能力者はやっぱり怖い存在だから。嫌な事件も続いたし、そんな恐怖を利用されたのかな」


ルナの言葉に少しずつキリが癒されていく。その人の一面だけに囚われていた心が解放されていく。


「ありがとう。ルナ」


ニコリと笑うとルナは思いついたように宣言してきた。


「フチ君が帰ってきたら、好きだって伝えようと思うんだ」


なぜ今そんな話を?と思いながらも、フワリと笑うルナはとても綺麗だった。フチが可憐だと言った意味がキリにもわかる。


「だから、絶対フチ君にもう一度会いたい」


真っ直ぐに、誰かを愛する瞳。キリは自分が何を守っているのかをこの時はっきり理解した。


「わかった。必ずお前のことを守りきる」

「うん。信じてるよ」


『これが、いつもウタハが守ってるもの。……俺が闘った上に成り立ってるもの』


影で、闇の中で、キリが闘った先にある人々の幸せが、今はとても眩しく見える。

キリにもう迷いはなかった。




人の心を弄び、必死に隠している秘密を引き摺り出して愉悦に浸る男がいる。


「……やっと会えたな」


呟くウタハとコハクのペアの前に現れたのはダイナだった。全て企み通りと言わんばかりに歪んだ笑みを浮かべている。


「なんだ?俺に会いたかったのか?嬉しいねぇ。俺も会いたかったぜ。……監禁事件の被害者君」


黄緑の瞳に闇が灯る。それを大きな火に変えようと、暗い過去がひっそりとウタハに忍び寄っていた。

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