第12話 勇者は一人を選べない?③
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私は目を覚ますと、そこにはボサボサな髪形をした青年が優しい寝顔が飛び込んでくる。
私は何だか嬉しくて「ふふっ」と微笑んでしまう。
そっと近づき、神楽の唇にちゅっとキスをする。
いつものようなエッチなキスじゃない。恋人同士のフレンチなものを。
ついに私と神楽は付き合うことになった。
これは私の中では正式なお付き合い。
そりゃもう、結婚を前提としたお付き合いのはず!
お父様は先の件も含めてかなりお怒りで、もはや勘当状態だったのだけど……。
お母様はすっごく喜んでくれたわ!
まさか、こんな気のキツイ女の子をお嫁に貰ってくれる方がいるなんて……て、何だかディスられてる気がしないわけではないけれど、付き合いをお母様が全面的に認めてくれて、お父様は条件付きで認めてくれることとなった。
休日前はいつもこうやって二人で寝ている。
だって、休日の朝、他の泥棒猫に取られたくないんだから!
「……何だよ、起きてたのか? 摩耶」
「もう、それは寝起きすぐに恋人に掛ける言葉? そんな言葉だったら恋は冷めちゃうわよ!」
「何だよ、それ……。俺も昨日は寝付けられなかっただんだよ」
「あらぁ? それはどうしてかしら? もしかして、先に寝た私の寝顔を見て、ドキドキしちゃったとか?」
「………………………」
私の意地悪な質問にほんのりと顔を赤らめて、返す言葉を失う神楽。
ちょ、ちょっと!? そこは「そんなんじゃねーよ」とか返してよ!
正解だったら、こっちの方が恥ずかしくなっちゃうじゃない!
私は自分から切り出したわけであまり視線を逸らすことすらできない。
私たちは顔を赤らめたまま、その無言の行動がすごく長く感じる。
「と、とにかく、私たち、付き合い始めたわけよね?」
「ああ、そうだな……」
どうしても二人での会話はぎこちなくなってしまう。
お互いが前世で繋がりを持った関係だというのに、そして嬉しいはずなのに、どうしても恥ずかしくて一歩引いた状態になってしまう。
本当は口がニヤついてしまっていて、今にも表情が蕩け堕ちてしまうそうだというのに!?
「だから、私たちも名前で呼び合わない?」
「………え?」
「いや、だって、これからも名字で呼び続けるの? 何だか、それって他人っぽい感じがするじゃない? それに……」
「それに?」
「江奈だけが、名前で呼んでるのは見ていて、嫉妬しちゃうし……」
私は頬をプゥーッと膨らませる。
それを見て、神楽は「ふふっ」と微笑むと、
「うん。やっぱり怒った顔も可愛い」
「なっ!? ご、誤魔化さないでよね! 私は本気で考えてるんだから!」
「いいよ、友理奈が望んでいるならば……」
「ふえぇ!?」
「どうしたんだよ? 友理奈?」
「はわわ……」
「そんなに驚かなくったっていいじゃないか。友理奈のその驚いている顔も可愛いよ」
「プシュ―――――……(思考停止)」
「あれ? 本当にどうしたの? 友理奈~?」
「ああ、こりゃ甘々イチャラブやねぇ……」
「きゃっ!?(思考復活)」
「藍那先輩!?」
突如割って入ってくる藍那先輩。
そう。実は、私たちは今、同じ家に住んでいる。
えっと、実は先日の事件の後、部室棟を損壊させたという理由で、私たちの処遇に関して、学校の方でも話し合いがもたれたようだ。
私のお父様のお力添えもあって、私たちは何とか退学処分だけは免れた。
だけど、さすがに寮生活を送ることは継続することが出来なくなった。
そこで私のお父様が、学校に一番近い家を買い取って、私たちに与えてくれたわけ。
で、どうして私が家から出されてしまったかというと、私自身も反省すべき点が多くて、高校生活が終了するまでは、きちんと共同生活を行って、様々な経験値を高めて来いという命令が下されたのだ。
買い取った家は大きな家で、江奈ちゃん、久遠寺さん、藍那先輩、ゆ、祐二(照れ……)、黒崎先生、そして私の6人が生活できるようになっていた。
黒崎先生はこんかいのけんにかんして 詳しく知っている人物ということで、私たちの監視役に任命されたそうだ。
一見、寮が使えなくなっただけの様な印象を与えてしまいそうだが、それだけではない。朝食は食堂で取ることは許されず、私たちみんなで当番制となっている。それに風呂や洗濯といった家事一切もこれまで寮母だとか私であれば侍女がしてくれていたことを、すべて自分たちでやらなければならなくなったのだ。
つまり、不自由の方が増したのだ。
「もう、名前呼ぶだけでそんなに赤くなってしまうなんて、初々しいわぁ……。朝食前にすでに糖度高めのラブコメが展開されるなんてなぁ……。あ、神楽、ウチは夜伽で使うてくれてかまへんからね。そのちっぱい子は神楽とセックスできへんねんし」
「ちょ、ちょっと!? せ、セックスはできないけれど、色々とご奉仕は出来るもんね!」
「ほほぅ。じゃあ、メイド服とかバニー姿して、神楽に甘えてご奉仕して上げれるん?」
な、何ですって!?
メイド服とかバニー姿!? 想像するだけでエッチなの分かってるじゃない!
そ、そんな衣装のどこが良いのよ……。
私はチラリと神楽の方を見て、
「ゆ、祐二はそういう格好で私にご奉仕されたい?」
「……ゴクリ。いいのか?」
あ、これはメチャクチャ望んでるわ。
もう、目が本気なんだけど……。お母様に頼めば衣装くらい用意してくれるのかしら……て、恥ずかしすぎるから自分で用意するしかないわね……。
「……で、出来るわよ!」
「うぐぅ!? 摩耶も強くなったわね!」
「ふんっ! いつまでも奥手な私じゃないんだから! 祐二と付き合うようになった彼女なんだから!」
「あら? ちゃんと名前で呼べるようになったのね……。こうやって恋愛の階段を上っていく姿って本当に見ていて素敵だわ」
藍那先輩は私たちの光景を見て、うっとりと微笑んでいるが、どうも安心できない。
「絶対に渡しませんからね!」
「ええねぇ。恋敵というのはいつでもこうであれへんと! 神楽~、シとうなったら、いつでもウチを呼ぶんやでぇ~」
そう言って、藍那先輩は返事も待たずに部屋を立ち去った。
怒涛の様な私への攻めに、私は絶対に屈する気は無い。
威嚇するような猫みたいにフーフーッと息巻いていると、そっと後ろから抱きしめられる。
「……………え。」
「友理奈、嬉しいよ、俺」
「うん、私も」
「友理奈が色んなコスプレして、エッチしてくれるなんて……」
「え゛…………!?」
「メイドにバニー、それにナースもいいなぁ……。マイクロビキニなんてのもありだよね!」
何やら楽し気に話しかけてくる祐二。
あ、コイツ、やっぱりただのエロ男だったのかも……。
逃げ………れないよ………………………。
すでに抱きしめていた腕は力が弱まっているものの、エロ魔人の指はすでに私の双丘の先っちょに向かっていた。
コリコリッ………
と、弄ばれるだけで、私は身体を祐二に預けてしまう。
て、何で素直になってるのよ!? 私は!!
「……ダメだよぉ……祐二ぃ……」
「その言い方、他の男にするなよ……。絶対に誘ってるって勘違いされるから」
「当り前じゃない。こんな声、祐二の前でしか出せないわよぉ……」
私ったら、いつの間にか祐二に甘えてしまっている。
祐二はそれに応えるように、私を抱き寄せて、再び唇を重ね合わせた。
今度は軽いキスではなく、ねっとりと舌を絡ませたエッチなキスをした。
「……んんっ。祐二……大好き……♡」
今、私はその言葉を言っても、胸に痛みは走らない。
だって、私たちの呪いのひとつである「光の杭」はもう、どこにもないのだから―――。
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