22話
玄関に行きドアを開けると、そこに外崎先生がいた。
「こんにちは、わざわざすみません」
「いえ、どうぞ」
「お邪魔します」
外は夏で暑いため、中に入るように促し、2人は蓬達がいるリビングへと向かう。
『こんにちは…』
「こんにちは、藍沢さん、結城さん」
ニコリと微笑み挨拶をする。
如月先生の方を向くと、笑みを深め挨拶をする。
「こんにちは、如月さん」
「こ、こんにちは…」
気まずい空気が漂う中、雪風が声を発する。
「ところで、外崎先生はどうしてここへ?」
「理由は単純で、先生なのに生徒の家にずっと泊まっている如月先生に自分のお家に帰ってもらおうと思いまして」
「な、なるほど…」
「ええ。さて、如月さん。帰りますよ」
「い、嫌です!」
「嫌と言われても帰らざるを得ないんですよ。本来こんなことはしちゃダメなんですから」
《まあそうだよねー》
雪風達3人の心の声が一致した瞬間である。
「そ、それでも私はここにいたいんです!」
「何故ですか?」
「だって、ここの方が住み心地いいし、ご飯美味しいし、ベッドもふかふかだし…」
「………」
(威圧感たっぷりの)無表情で表情で如月先生を見る。
対して如月先生は誤魔化すように「えへへ…」と笑う。
「…はぁ…」
外崎先生は俯きながら深いため息をつく。
「そ、それに、近いうちに旅行に行くんですよ!」
「旅行?」
「はい!」
テーブルをビシッと効果音が付きそうな勢いで指す。
「…旅行ガイド」
「ええ!どこへ行くかは未定ですが、私達で何泊かして楽しむんですよ!」
「…それで?」
「だ、だから私は家に帰りません!ここが今の私の家です!」
「…………」
外崎先生は俯き考える素振りをする。
数秒の間思考し、答えが出たのか如月先生を見つめる。
「分かりました」
「じゃあ…!」
「ただし、この旅行が終わったらちゃんと家に帰って下さいよ?」
「そ、それは…善処します…」
「…まあ、いいでしょう。では暁さん、用事は済みましたので、これで失礼しますね」
「あの、ちょっといいですか?」
「……?」
突然そんな事を言う雪風に外崎先生は小首を傾げる。
雪風は外崎先生を向くと一息つき、やがて言葉を発する。
「外崎先生が良ければですが、一緒に旅行に行きませんか?」
「…はい?」
外崎先生の素っ頓狂な声がリビングに響き渡った。
○▲○
「一緒に旅行へ…?」
「はい。どうでしょう?」
「…えっと、その結論に至った過程はなんですか?」
「それはですね」
雪風は一息つき、言葉を続ける。
「高校生になり4ヶ月が経ちましたが、新しい生活というのはそう簡単に慣れるものではありません。それにこの先、様々な行事があります。そこで、この先起こる行事をより楽しくするために、先生方と親睦を深めるために一緒に旅行をしようという事です」
「は、はぁ…」
外崎先生は困惑した表情でそう言う。
「暁さんの言う通りですよ外崎先生!」
そこへ如月先生が割り込む。
「私たちはこの先ある行事を生徒と楽しくやりたいんです!そのためには親睦を深め、互いのことを少しでも理解しなければならないと思うんですよ!」
「…うーん」
外崎先生はまだ思うところがあるのか、迷うそぶりを見せる。
「…それじゃあ、外崎先生が考えているであろう悩みを吹き飛ばす一言を」
雪風はニコリと笑みを浮かべ
「教師と生徒が一時的とはいえ同居している時点で、悩みなんてないようなものじゃないですか?」
「なるほど…それもそうですね」
「よ、良かったぁ〜!断られるかと思ったからビクビクしたよー!」
如月先生がそんなことを言う。
「そうするつもりだったんですけどね。けれどこれから先ある行事をより楽しみたい、と言うのは同じ気持ちですし、何より皆で行く旅行、というのはあまりしたことがないですしね。せっかくの機会だし、行ってみようと」
「いやー外崎先生が承認してくれて良かったです!ささ!早速行き先決めましょう!」
「ええ、どんな所がいいかしら」
外崎先生は旅行ガイドをパラパラとめくりながらそう言った。




