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召喚少女! ~少女たちと召喚士が紡ぐ、カードと絆の物語~  作者: 和泉きよ


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034.あなたは選ばれた少女

それから数日。


ミナとリリは、二人で旅を続けていた。


町に立ち寄れば、荷物運びを手伝ったり、店の片付けを手伝ったり。

道に迷っている人を見つければ、目的地まで案内する。


特別なことをしているつもりはなかった。


けれど、誰かに「ありがとう」と言われるたびに、二人は自然と笑顔になった。


「ミナ!」


ある日の昼下がり。


リリが道端で何かを拾い上げた。


「これ、落とし物かな?」


小さな袋だった。


「近くに持ち主がいるかもしれないね」


「探してみよう!」


二人で周囲を見回す。


すると少し離れた場所で、一人の女性が辺りを探していた。


「すみません!」


リリが駆け寄る。


「これ、落としませんでしたか?」


「あっ……!」


女性は袋を見ると、驚いた顔をした。


「それ、私のです!」


「よかった!」


「本当にありがとう。大切なものが入っていたの」


女性は何度も頭を下げる。


「見つかってよかったです」


ミナが微笑むと、女性はもう一度お礼を言って、その場を去っていった。


「よかったね、ミナ!」


「うん」


「こういうことがあると、ちょっと嬉しいね」


「そうだね」


二人は再び歩き始めた。


しばらくすると、リリがふとミナの横顔を見る。


「ねえ、ミナ」


「どうしたの?」


「前から聞いてみたかったんだけど……」


リリは少しだけ考えてから尋ねた。


「ミナって、どんな召喚主に召喚されたの?」


「私?」


「うん」


リリは興味深そうにミナを見る。


「ミナみたいな子を選んだ人なら、きっと優しい人なんだろうなって思って」


その言葉を聞いた瞬間。


ミナの脳裏に、一人の青年の姿が浮かんだ。


天城ユウ。


いつも優しくて。


誰かが困っていると放っておけなくて。


そして、自分にも何度も声をかけてくれた。


『ミナがいると安心するよ』


その言葉を思い出し、ミナは小さく笑った。


「……うん。優しい人だよ」


「やっぱり!」


リリが嬉しそうに声を上げる。


「ミナを見つけたんだもん。きっと、ちゃんとミナのことを見てくれたんだね」


「……」


ミナは少しだけ視線を落とした。


「そうだと……いいね」


「絶対そうだよ」


リリは迷いなく答える。


「だって、ミナは人を助けるのが上手だし、困っている人を見つけるとすぐに声をかけるでしょ?」


「それは……」


「昨日だって、疲れていたおじさんに気づいたじゃん」


「たまたまだよ」


「それだけじゃないよ」


リリは指を一本立てる。


「お店の手伝いだって、ミナがいなかったらもっと時間がかかってた」


さらにもう一本。


「それに、私が落ち込んでるときも、ちゃんと話を聞いてくれる」


「リリちゃん……」


「だから私は、ミナってすごく素敵な子だと思う」


ミナは何も言えなかった。


「……ありがとう」


ようやく出てきたのは、それだけだった。


リリは満足そうに笑う。


「だから、ミナを召喚した人も、きっとそう思ってるよ」


「……そうかな」


「うん!」


その返事には、迷いがなかった。


けれど。


「私の召喚主は……」


リリの声が小さくなる。


「……」


途中で言葉が止まった。


ミナはリリを見る。


「リリちゃん?」


「ううん。なんでもない」


リリは笑おうとした。


けれど、その表情には少しだけ寂しさが残っていた。


ミナは、それ以上聞かなかった。


無理に過去を話す必要はない。


そう思ったからだ。


二人はそのまま歩き続けた。


夕方になるころ、小さな町へ到着する。


宿を見つけて部屋に入ると、リリはベッドに腰を下ろした。


「今日もいっぱい歩いたね」


「そうだね」


「でも、楽しかった!」


「私も」


少し休んでから、リリがぽつりと言った。


「ねえ、ミナ」


「うん?」


「私、ミナと出会えてよかった」


ミナは驚いたようにリリを見る。


「急にどうしたの?」


「だって、一人だったときは寂しかったから」


リリは窓の外を見る。


「何をすればいいのかも分からなかったし、これからどうすればいいのかも分からなかった」


「……」


「でも、今はミナがいる」


リリは振り返った。


「それだけで、前よりずっと楽しいよ」


「私も同じだよ」


ミナは優しく答えた。


「リリちゃんと一緒にいると、毎日いろんなことがあるから」


「えへへ」


リリが笑う。


「これからも、いろんなところに行こうね」


「うん」


二人は小さく頷き合った。


その夜。


リリが眠ったあと、ミナは一人で窓辺に立っていた。


月明かりが、静かな部屋を照らしている。


「……ユウ」


思わず名前がこぼれた。


家を出てから、まだそれほど時間は経っていない。


それなのに。


みんなと過ごしていた日々が、ずっと遠い昔のことのように感じられた。


楽しかった時間。


一緒に笑ったこと。


そして、自分を頼ってくれたこと。


ミナはそっと目を閉じる。


「元気にしてるかな……」


もちろん、答えは返ってこない。


ミナは窓の外を見つめた。


遠く離れた場所にある、帰る場所。


そこを思い浮かべると、胸の奥が少しだけ苦しくなる。


けれど、今はまだ戻れない。


「……もう少しだけ」


ミナは小さく呟いた。


「もう少しだけ、ここにいるね」


隣では、リリが静かな寝息を立てている。


ミナはその姿を見て、そっと微笑んだ。


自分のことを信じてくれる少女。


一緒に歩いてくれる少女。


今は、その存在が何よりありがたかった。


――けれど。


ミナが胸の奥にしまっている本当の気持ちは、まだ誰にも語られていない。


その想いが言葉になるのは、もう少し先のことだった。


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