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召喚少女! ~少女たちと召喚士が紡ぐ、カードと絆の物語~  作者: 和泉きよ


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17/40

017.ルナのいない勝利

 大会当日。


 会場には、朝から多くの召喚士が集まっていた。


 天城ユウにとっては、もう見慣れた光景になりつつある。


 受付を済ませ、デッキを確認する。


 カードは完璧だった。


 何度も調整した。


 何度も練習した。


 そして今のユウには――。


「勝てる」


 確かな自信があった。


「今回も優勝しよう!」


 モモが元気よく言う。


「ええ」


 ミレイも微笑んだ。


「このデッキなら問題ありませんわ」


 セレスが胸を張る。


「……戦術にも隙はない」


 ノアが静かに答える。


「面白い試合になりそうだね!」


 クロエは楽しそうだった。


「皆さんのサポートはお任せください」


 エルナも笑顔を見せる。


 そして――。


「レイナ」


 ユウが最後に声をかける。


「準備はいい?」


「もちろん」


 レイナは落ち着いた表情で頷いた。


「今日は、この私たちの力を証明する日よ」


「うん」


 ユウも笑う。


「絶対に勝とう」


「ええ」


 そのとき。


「……ユウ」


 少し離れたところから声がした。


 ルナだった。


「どうしたの?」


「頑張ってね」


「うん」


 ユウは笑った。


「応援してて」


「……うん」


 ルナは頷いた。


 そのやり取りは。


 以前よりずっと短かった。


     ◇


 一回戦。


「レイナ、召喚!」


 光が広がる。


 レイナが場に現れる。


「王者の統率」


 仲間たちの能力が上昇する。


「クロエ、攻撃!」


「任せて!」


 クロエが一気に前へ出る。


「ノア、防御!」


「了解」


 相手の攻撃を受け止める。


「エルナ、サポート!」


「お任せください」


 完璧だった。


 相手に反撃の隙を与えない。


「攻撃!」


「もう一度!」


「そのまま押し切る!」


 ユウの指示が次々と飛ぶ。


 そして――。


「召喚士ゲージ、ゼロ!」


 勝利。


「勝った!」


 ユウは拳を握った。


 周囲から拍手が起こる。


「すごい!」


「やっぱり天城選手は強い!」


 そんな声が聞こえてくる。


 ユウは笑った。


「よし!」


     ◇


 二回戦。


 三回戦。


 準々決勝。


 準決勝。


 勝った。


 また勝った。


 そして。


 決勝戦。


「あと一勝……」


 ユウは手札を確認する。


 相手も強豪だった。


 GRを三枚使った高速デッキ。


 序盤から激しい攻防が続く。


 ノアが攻撃を受ける。


 エルナがサポートする。


 クロエが反撃。


 そしてレイナが全体を強化する。


「グランド・オーダー!」


 レイナの究極技が発動した。


 味方の力が一つに集まり、強烈な攻撃となって相手を襲う。


「これで終わりだ!」


 ユウが叫ぶ。


 最後の一撃。


 相手の召喚士ゲージが――。


 0。


「勝者、天城ユウ選手!」


 会場が大きな歓声に包まれた。


「やった……!」


 ユウは立ち上がった。


「優勝だ!」


 クロエが叫ぶ。


「当然ですわ!」


 セレスも喜んでいる。


「素晴らしい勝利でした」


 エルナが笑う。


「……作戦通り」


 ノアも小さく頷いた。


 レイナはユウを見つめる。


「見事だったわ」


「ありがとう!」


 ユウは笑った。


 周囲から拍手が送られる。


 優勝。


 賞金。


 名声。


 強くなった証。


 全部手に入った。


 なのに。


「……」


 ユウは、ふと会場の端を見た。


 そこにルナがいた。


 拍手をしている。


 笑っている。


 いつものように。


 でも。


 ユウの胸の奥に。


 小さな違和感が生まれた。


「……あれ?」


 嬉しいはずなのに。


 なぜか。


 何かが足りない。


     ◇


 大会が終わった。


 帰り道。


 みんなが楽しそうに話している。


「今日の最後の攻撃、すごかったね!」


「レイナの能力が非常に有効でした」


「もっと攻撃に寄せてもよかったかもしれませんわ」


 ユウも会話に加わる。


「そうだね」


 でも。


 心のどこかが落ち着かなかった。


 隣を見る。


 ルナが歩いている。


「ルナ」


「ん?」


「今日、どうだった?」


「すごかったよ」


 ルナは笑った。


「優勝、おめでとう」


「ありがとう」


「みんな、頑張ってたね」


「うん」


 そこで会話が終わる。


 以前なら。


 ここからもっと話が続いた。


「ルナのあの場面がよかった」


「次はこうしよう」


「帰ったら一緒にカードしよう」


 そんな言葉が自然に出てきた。


 でも今日は。


 何も思いつかなかった。


「……」


 ユウは歩きながら考える。


 ――どうしてだろう。


     ◇


 家に帰ると、祝勝会が始まった。


「優勝おめでとう!」


「おめでとうございます!」


「さすがユウ!」


 モモが料理を並べる。


 ミレイが飲み物を用意する。


 セレスが今日の試合を振り返る。


 クロエは次の大会の話をしている。


 ノアは静かに聞いている。


 エルナは皆の世話をしている。


 レイナは次の戦術についてユウと話していた。


 賑やかだった。


 楽しかった。


 最高の仲間がいる。


 最高のデッキがある。


 最高の結果を出した。


 なのに。


「……」


 ユウはふと、部屋の隅を見る。


 そこにルナが座っていた。


 楽しそうに笑っている。


 みんなと話している。


 でも。


 ユウは、ルナとほとんど話していなかった。


「……」


 ユウは立ち上がった。


「ルナ」


「なに?」


「ちょっと外、行かない?」


「……え?」


 ルナが驚く。


「二人で話したい」


「……うん」


 二人はベランダへ出た。


 夜空には月が浮かんでいる。


「綺麗ね」


 ルナが空を見上げる。


「うん」


 ユウも月を見る。


 そして。


「……今日、勝ったのに」


「うん」


「なんか、変なんだ」


「変?」


「うん」


 ユウは胸元に手を当てる。


「前に優勝したときは、もっと嬉しかった気がする」


 ルナは黙っていた。


「今回は、みんなが頑張ってくれて、ちゃんと勝てた」


「そうね」


「なのに……」


 ユウは言葉を探す。


「何か足りない気がする」


 ルナは少しだけ笑った。


「……そうなんだ」


「ルナは分かる?」


「分からない」


 そう答えてから。


 少しだけ間を置いた。


「でも」


「うん?」


「ユウが本当に嬉しいと思えるなら、それでいいんじゃない?」


「……」


 その言葉を聞いて。


 ユウは何も言えなかった。


     ◇


 その夜。


 みんなが寝静まったあと。


 ユウは一人で机に向かっていた。


 今日使ったデッキを眺める。


 レイナ。


 クロエ。


 ノア。


 エルナ。


 ミレイ。


 どのカードも強い。


 どれも大切な仲間だ。


 なのに。


 ユウの手が止まった。


 机の端に。


 一枚のカードが置いてある。


 ルナ。


 最初に引いたGR。


 最初に召喚した少女。


 初めて一緒に勝った相手。


 初めて「相棒」と呼んだ少女。


「……ルナ」


 カードを手に取る。


 その瞬間。


 初めて召喚した日のことを思い出した。


 月明かり。


 召喚陣。


 そして。


 目の前に現れた少女。


『あなたが私の召喚主?』


 あの日。


 ユウは何も知らなかった。


 強いカードも。


 効率のいいデッキも。


 大会で勝つ方法も。


 ただ。


 一枚のカードを引いて。


 一人の少女と出会った。


 それだけだった。


「……」


 ユウはカードを見つめる。


「僕は……」


 何かを言おうとした。


 でも。


 言葉にならなかった。


     ◇


 翌朝。


「ユウ」


 ルナが声をかける。


「おはよう」


「おはよう」


 ユウは少し考えてから言った。


「今日、久しぶりに二人でカードバトルしない?」


「……!」


 ルナの目が少しだけ輝いた。


「本当に?」


「うん」


「……うん!」


 ルナは嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見て。


 ユウも笑った。


 ――やっぱり。


 何かが足りなかった。


 でも。


 それが何なのか。


 このときのユウには、まだ分からなかった。


 ただ。


 勝つことだけを追いかけていたはずなのに。


 勝利した瞬間。


 最初に探していたのは――。


 ルナの姿だった。


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