表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/77

71. 席替え 前編 ~集中できるわけがない~

 夏休みの終わりが近かった。

 窓の外では、夜の湿った風がカーテンをわずかに揺らしている。

 マサキの部屋は静かだった。


 机。

 参考書。

 シャーペン。

 イヤホン。


 必要最低限しかない空間。

 スマホの画面には、途中で止めた音楽アプリが表示されたままになっていた。

 マサキは問題集を睨む。


 数学。

 何回見ても、途中で式が絡まる。


「……違う」


 ぽつりと呟いて、消しゴムで途中式を消す。

 また最初からやり直す。

 だが、集中しようとするほど、別の言葉が頭に浮かんだ。


『セブンの表紙を飾ること。単独で』


 リサの声。

 笑っていた。

 でも、あれは本気だった。

 マサキはシャーペンを止める。


 その時のリサの顔を思い出していた。

 自分のやりたいことを、自分の言葉で言える顔。

 まっすぐ前を見ていた目。

 ああいう顔を、自分はしたことがない。


 机の上には、ミオにもらったノートが置かれていた。

 必要な部分だけ、綺麗に整理された字。


『わたし将来は教師になりたいんですよ』


 あの時もミオは、当然の顔をして言っていた。


 教師。

 モデル。

 同い年。


 同じ高校生、なのに。


(……違う)


 マサキは背もたれへ体重を預ける。

 天井を見る。

 自分だけ、ずっと同じ場所にいる感覚があった。


 何かを目指してるわけでもない。

 得意なことを伸ばしてるわけでもない。

 ただ。

 面倒を避けて、目立たない場所へ逃げて、一日が終わるのを待っていた。


(同い年なのに)


 リサは前へ進んでいる。

 ミオも、自分の未来を見ている。

 それに比べて自分は。


(自分には、なにもないから)


 シャーペンの端を、机に押し当てた。

 別に、急に夢が欲しいわけじゃない。

 大きいことをしたいわけでもない。


 でも、リサが前へ進んでいる時に、自分だけ何も積み上げていないまま隣へ立つのは。

 それだけは嫌だった。

 マサキはゆっくり目を閉じる。


(追いつくとかじゃない)


 そんなの無理だ。

 最初から分かってる。

 リサは眩しい。

 自分とは違う。

 でも。


(せめて、同じところまで)


 話す時。

 隣に立つ時。

 自分の足で立っていたかった。


 マサキは机へ向き直り、問題集を開いてシャーペンを握る。

 難しい。

 頭も疲れている。

 それでも、前よりはマシだった。


 "やらない理由"を考えるより先に、手を動かしていた。


「……ここからか」


 静かな部屋に、シャーペンの音だけが続いていた。


 ◇ ◇ ◇


 夏休み明けの教室は、騒がしかった。

 髪を少し切った女子、焼けた男子、「宿題終わってない」と騒ぐ声。


 そのざわつきから半歩だけ外れるように、マサキは窓際の席でスマホを伏せる。

 机の上には問題集。

 夏休みの後半から、少しずつ勉強へ手を伸ばし始めていた。


 ページを開く。

 並んだ数式へ目を落としながら、マサキは無意識にシャーペンを握り直した。

 見覚えのある問題だった。


 少し前なら、こんなところで手は止まらなかったはずだ。

 それなのに式を追っている途中で考えが途切れ、どこまで理解していたのか分からなくなる。

 最初へ戻り、もう一度読み直しても同じところで引っ掛かる。


 分からないはずない。

 解けないはずない。

 なのに問題文のその途中で、数字や条件が頭の中で絡まり始める。


 マサキは眉間を押さえた。

 昨日も寝たのは遅かった。

 最近は勉強時間を増やして、そのまま新学期まで続けている。


 だから疲れているのかもしれない。

 そんな考えが頭をよぎったが、すぐに消えた。

 単純に自分のやり方が悪いだけだと思ったからだ。


 なりたいものは、まだない。

 でも、だからこそ今は、積めるものを積むしかない。

 学生のうちにやれることをやる。

 それは少なくとも、間違った方向ではない気がしていた。


 ◇


 休み明けの教室、窓際。

 女子たちの輪は朝から熱を帯びていた。


「で?」


 一人が身を乗り出す。


「夏休みどうだったの、松前くんと」


 一瞬で、視線が全部集まる。

 リサは両手で真っ赤になった頬を覆いながら、目をあちこちへ泳がせた。


「ええっと、その……」


(恥ずかしい……)


 こんな話を誰かにするなんて、生まれて初めてで、とてつもなくハードルが高い。

 でも——嫌じゃなかった。

 大好きな人のことを聞いてもらって、この感情を共有したくてたまらない自分がいる。


「絶対なんかあった顔してるー」


「花火大会、松前くんといたって聞いたんだけど」


 リサは両手で頬を軽く押さえる。


(そんな、勝手に話せない…)


 でも——


(……話したい)


 胸の奥がくすぐったくなる。

 口を開きかけて、また迷う。

 それでも、止まれなかった。


「えっと……夏祭りで……ちょっと怖い大人の人たちに絡まれて、人いないとこに連れて行かれそうだったんだけど」


「え、なにそれ…怖」


「大丈夫だったの?」


 リサはコクリと頷いた。

 思い出すだけで、頬が熱くなる。


「松前くんが……助けてくれて」


「きゃー!」


「どうやって?松前くんでしょ?」


「なんか、冷静に理詰めで…スマホでね、通話画面出しながら今かけるって煽って」


「おおっ」


「その時に、あたしの腕をぐって引いて……『これはオレの』って…い、言われた」


 あのときの声が、頭の中で再生される。

 低くて、迷いがなくて、かっこよかった。

 一瞬の静寂。

 次の瞬間——


『『『きゃーーーっ!』』』


「なにそれ!」


「やばくない?」


「所有物扱い!」


「少女漫画みたい」


 リサ自身、口に出して思い出すだけで顔から火が出そうだった。


「待ってほんと無理……無理……」


「いや無理なのはこっち!」


「続き続き!」


 逃がしてもらえない。

 リサは指の隙間から息を吐く。


「あと……そのあと、アイス食べて」


「うんうん」


「スプーン1個でぇ……」


「あーーー!」


「間接キス?!」


「……うん」


 ひそかに認める。


『『『きゃーー!!』』』


「それから?」


「そ、そういう雰囲気かと思って…」


 全員が身を乗り出す。


「キス、したの?」


 一気に核心。

 リサは一瞬固まる。


「……しようとした」


「え」


「したの!?」


 リサはシュンとして、首を横に振り、前を向いた。


「……ううん。雰囲気でごまかしてキスしようとしたら……止められた」


 トーンが落ちた。

 なのに——女子たちの反応は逆だった。


「え、なにそれ!めっちゃ誠実じゃん」


「松前くんて雰囲気で手ェ出したりする男じゃないってことだよね」


「うんうん、めちゃくちゃ大事にされてる証拠」


「えっ……そ、そうかな……?」


「なんて言って止められたの?」


(……これ以上は、言えない。恥ずかしすぎる)


 頭ではそうストップをかけている。

 なのに——


「あ、あたしとするのは…イヤじゃないけど。ちゃんとした理由がないまま、してみたいからするのって…不誠実だから、みたいな」


 リサは顔を押さえたまま、もごもごと続ける。


「え、なにそれ」


「真面目すぎ」


「でも、そんなん言われたらもっと好きにならない?」


「なっちゃった……」


 ぼそっと本音が漏れる。


『『『かわいいー!!』』』


「他は!?」


「もーダメ、こっちが恥ずかしくなっちゃう」


「花火大会以外にどっか行ったの?」


「……プ、プールに」


「はい来たーー」


「如月さんの水着姿なんて直視できなそう」


 逃げ場がない。

 リサは躊躇ってから、


「ウォータースライダーでぇ……」


「うんうん」


「ちょっと……くっついたりとか……」


「どっちから?」


「……あたし」


「積極的!!」


「で?」


 言葉が詰まる。

 でも、止まれない。


「男の人の体って、ちゃんと触ったの初めてで……筋肉とか骨とか、すごく硬くて、びっくりした」


 一瞬、女子たちが黙る。


「きゃー!」


「生々しい!」


「びっくりしたとか、可愛すぎるんだけど」


「純度高すぎ!」


 笑いと歓声が混ざる。

 リサは完全に顔を赤くしたまま俯く。


「ちょっと待て、さすがにもうないよね?」


「もー処理おいつかない」


 頭ではそうストップをかけている。

 なのに、誰かを好きで好きでたまらないこの感情を、言葉にして口に出す喜びに抗えない。

 語るたびに、松前くんの不器用な優しさが鮮明に形を持っていくのが愛おしかった。


「あたし、外ふらふらして……日射病?熱中症みたいなのになっちゃって、軽くなんだけど」


 まだまだ溢れてくる思い出を前に、もう一度口を開いていた。


「まだあるの?」


 誰かが食いつくように言う。


「えっ、それ大丈夫だったの?」


 リサは目を落とす。

 口を開くたびに、松前くんの匂いや体温が蘇ってきて、胸が苦しいくらいに甘くなる。


「うん、それで……松前くんが……その……お、お姫様だっこ……」


「え?」


「で………運んでくれてぇ」


『『『うそぉぉぉーっ!』』』


『『『きゃーーー!!』』』


 教室の端まで響きそうな悲鳴が上がる。

 あの普段は気怠げな松前くんが、お姫様だっこ。

 そのギャップに、女子たちの興奮はすでに最高潮に達しつつあった。


「なにそれ」


「守られすぎ!」


「もう付き合ってるじゃん!」


「まーた如月さんが松前くんの株爆上げしてるー」


 リサは完全に顔を覆う。


(ぴぇー無理無理)


 でも——指の隙間から、笑ってしまう。


(……楽しい)


 こんなふうに誰かのことを話すのも、こんなにちゃんと好きって思うのも、初めてで、止まらない。


(松前くん、ごめん……)


 リサは顔を上げて、はっきりと笑った。


「好きな人のこと話すのって、こんな楽しいんだね」


 その言葉に、笑い声がいっそう温かくなる。


「え、うそ。可愛すぎる」


「なにそれ、松前くんが羨ましすぎ」


「私が松前くんならもう食べちゃってるよ」


 でもすぐに——


「で、次は?デート!」


「絶対報告してよ!?」


「告白はいつするの!?」


 また騒がしくなる。

 リサはその中で、もう一度だけ静かに笑った。


「……くふっ」


 胸の奥が、じんわりあったかい。


(次かぁ…)


 前を見る。

 夏は終わったけど、その続きを、ちゃんと自分で進めたくなっていた。


 ◇


 休み明けの教室、後ろの席。

 男子の輪だけがやけに熱を持っていた。


「で?」


 開口一番。

 マサキはまだ解けない問題を睨んでいたままだった。


「夏休み、なにしてた?」


「……別に」


 いつも通りの温度で返す。

 だが、その曖昧さが逆に火をつける。


「別に、で済むわけねーだろ」


「如月さんと会ってたんだろ?」


「てか遊んでたよな?」


「もうバレてんだから、隠すなよ」


 言葉が重なる。

 マサキは問題集から顔を上げないまま、


「……まぁ」


 短く肯定する。

 その瞬間——一気にざわつく。


「LINEしてんの?」


「してる」


「じゃあ、あっちから来るのか」


「来る」


「ちゃんと返してる?」


「してる」


「ほんとか?」


「返信しないと家までくるから返してる」


 ぼそっと答える。


「は?」


「家に来るの?」


 一瞬、教室の空気が止まる。


「冗談?」


 と誰かが笑いかけるように言うが、声の途中で尻すぼみになる。


「いや、松前はそういう冗談言わないだろ……」


 別の男子がそう言って、みんなが黙る。

 確認みたいな沈黙が広がる。

 マサキの顔をちらちら見るが、本人は特に何も変えない。


「これって触れていいのか?」


 誰かがひそかに呟く。

 当のマサキはというと、頭の中では別の方向で止まっていた。


(変なこと言ってないよな…?)


 家に来るという事実だけで、会話のどこに引っかかる要素があるのかが分からない。


「じゃあさ、飯とかどうしてんの?ちゃんと奢ってんの?」


「割り勘?」


 マサキは間を置く。

 一瞬考えて、


「……如月もち」


「は?」


「如月さんが払うの?」


「その言い方だと、たまにじゃなくて常にっぽくね?」


 空気が一段階重くなる。

 誰も結論を出せないまま、その空白を埋めるみたいに誰かが言う。


「で?」


「どこまでいった?」


 一拍。

 マサキの指が、机の上で止まる。


(だから、どこまでがそれに入るんだ)


 沈黙。

 その一瞬で——


『『ざわっ』』


「おい、確定きたぞ!」


「幸せの共有しろ!俺たちにもお裾分け!」


 一気に詰め寄られる。


(まずい。思い出した…これは、黙っていれば肯定、間を置いても肯定の流れだ)


「じゃあキスは?」


(即答して正しいことを言わなければ、こいつらは面白がって追及してくる)


「してない」


 即答。


「お、これはマジっぽい」


(……そうだ、こうやって即答で短く流せばいい)


「じゃあ逆にその手前は?」


「手くらいは繋ぐよな?」


「……」


 マサキは前を向いたまま黙る。


(繋いだ)


 その間が、もう答えになる。


「はい噂通り」


「それは知ってるんだけどな」


 さらに詰められる。


(黙ると面倒だ)


「じゃあ胸とかさわった?」


 マサキは考えて、


(短く答える)


「………さわってない」


 しかし、わずかな間があったことを男子生徒は見逃さなかった。


「触った感想は?」


「……重い」


 ぽつり。

 一瞬、静寂。


「……は?」


「うわリアル!!」


「ちょっと待てそれ!!」


「お前触ってんじゃねーか!」


「感想がガチすぎる!」


「いやでも分かるわそれは」


「あれは重いだろ!」


 マサキは眉をひそめる。


(間違えた。考える暇がないとやばい)


 さらに追撃。


「他は!?他!」


(間を置かずに即答、それでいて答えは少しズラす)


 マサキは神経を集中させる。


「じゃあ、如月さんの先っぽ何色?」


 流れのままに飛んできた、最も直接的で下品な質問。

 完全にテンポを崩されたマサキは、動揺を悟られまいとするあまり、思考を通さずに反射的に口を開いてしまう。


「……サクラ色」


『『うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』』


 教室の後ろが、一気に爆発した。


「リアルすぎるだろ!」


「お前それ絶対見たよな!」


「如月さんの……サクラ色!」


「おい松前マジでふざけんなよ」


 男子たちは逆に生々しすぎるその回答に、これ以上ないほど盛り上がった。

 しまった、とマサキは自分の失言に気づき、机に突っ伏して頭を抱えた。


(……最悪だ)


 机を叩く音、笑い声、叫び声。

 一気に収拾がつかなくなる。

 その騒ぎの中で、


(……なんでこうなる)


 イヤホンを耳に差し込む。

 でも、もう遅い。


「おいもっと喋れよ!」


「夏休みの続きあるだろ!」


「ちゃんと報告しろよ!」


「独占すんな!」


 声は止まらない。

 マサキは机を見たまま、何も答えない。

 ただ一つだけ——


(如月ごめん)


 ◇ ◇ ◇


 始業式の日のホームルーム。


「はいはい、静かにー」


 担任が教卓を叩く。


「2学期の最初だから、席替えするぞー」


 教室が一気にざわついた。


「マジ!?」


「窓側ほしー!」


「如月さんの近く頼む……!」


 マサキは静かに目を閉じる。


(……窓際がいい)


 それだけだった。

 騒がしい中心から少し離れられる。

 今はそのくらいで十分だった。


 くじが回ってくる。

 マサキは無言で一本引いた。

 番号を見ると、窓側だった。


(……よし)


 肩の力が抜ける。

 だが。

 数分後。

 聞き慣れた声が上がった。


「え、 うそ」


 マサキが顔を上げる。

 くじを見つめたまま、リサが目を丸くしていた。

 その瞬間だけで、周囲の男子の視線が一気に集まる。


 相変わらず目立つ。

 いや、夏休みを挟んでむしろ完成度が増していた。


 柔らかく巻かれた髪。

 白い肌。

 制服の上からでも分かる綺麗なシルエット。

 立っているだけで、教室の熱が上がる。


「松前くん隣?」


 リサは自分の席を確認してから、もう一度くじを見る。

 本当に間違っていないか確かめるみたいに。

 それから口元をひっそり緩めた。


 肩までの髪が揺れる。

 隠そうとしているのに隠しきれていない。

 そんな顔だった。


 男子たちが騒ぐ理由も分かる。

 あんな顔を向けられて平然としていられるやつなんて、たぶんいない。

 次の瞬間、リサは顔全体でぱっと笑った。


「やったー、嬉しい」


 教室がざわつく。


「は!?」


「なんでまた松前なんだよ!」


「それはさすがにずるいだろ!」


 男子たちの声が飛ぶ。

 マサキは黙ったままだった。


(……いや待て)


 スカートがふわりと揺れる。

 細い脚が見える。

 鞄を持ち直した拍子に、胸元のラインがわずかに動いて、マサキは反射的に前を向いた。


(集中できるか、これ)


 リサはそんなこと知るはずもなく、隣の席へ座った。

 フローラル系の香りがした。

 近い。

 近すぎた。


「よろしくね、松前くん」


 にこにこしている。


「……ああ」


 短く返す。

 それだけなのに、リサは満足そうだった。

 周囲ではまだ男子たちが騒いでいた。


「いいなぁ……」


「如月さん絶対嬉しそうじゃん」


「松前なんなんだよマジで……」


 マサキは窓の外へ目を向ける。


(……今は勉強)


 リサの横顔が視界へ入る。

 綺麗だった。

 だから余計に落ち着かない。


(集中しろ)


 せっかく、自分のことを考え始めたのに。

 なのに。


「松前くん」


「……なんだ」


「隣、嫌だった?」


 不安そうな声だった。

 マサキは一瞬黙る。


 本当は違う。

 嫌なわけがない。

 むしろ、近すぎて困っている。


 でも、それを説明できるほど器用じゃない。


「……騒がしくなる」


「えへへ、ごめん」


 リサは困ったように笑った。

 その笑顔を見て、マサキは目を落とす。


(……そんな顔してほしくない)


 責めたいわけじゃない。

 自分のせいで、リサが気を遣うことになる方が嫌だった。


「……悪い意味じゃない」


 ぽつりと付け足す。

 一瞬で、リサの表情が明るくなる。


「うん」


 嬉しそうだった。

 その声を聞きながら、マサキは片耳だけイヤホンをつける。


 窓の外を見る。

 だが結局、隣から聞こえる小さな鼻歌のせいで、全然集中できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ