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23. 平日の午後 ~お邪魔してます3~ (挿絵)

 リサは少しだけ視線を逸らしたまま、キッチンに立つ。

 フライパンに火を入れる音。

 油のはじける小さな音。

 その一つ一つが、やけに静かな部屋に響く。


(はぁ……緊張する)


 さっきのやり取り。

 あの一言。


("最初からそのつもりで来てる"って……)


 思い出して、また顔が熱くなる。


(いやいや、松前くんだもん。深い意味ないって。)


 でも、手は止めない。

 卵を溶いて、フライパンに流し込む。

 手際は、慣れている。


(ちゃんと作ろ……)


 気合いを入れるわけじゃない。

 でも。


(……美味しいって言ってほしいし)


 自然と、丁寧になる。



 しばらくして。

「……できた」

 小さく呟いて、皿に盛る。

 ケチャップで、軽く線を引く。

 一瞬だけ迷って――


(……やめとこ)


 余計なことはせず、そのままにした。

 深呼吸してから、リビングに戻る。


「……お待たせー」


 テーブルに皿を置く。

 ふわっとした卵に包まれた、見た目はシンプルなオムライスだった。


「ほんとに大したものじゃなくて申し訳ないんだけど」


 目を逸らしながら言う。


「せっかく来てくれたのに、ごめんね」


 声は、さっきより少し弱い。

 マサキはそれを見て、一瞬言葉を止める。


(普通に美味そうなんだが……これが大したことないレベルなら、普段なに食ってんだろう)


「……いただきます」


 小さく言って、スプーンを手に取り、真ん中から柔らかそうな玉子を割る。

 ふわっと割れた卵が、ゆっくりと左右に開く。

 香ばしいバターライスに、半熟の黄色がとろりと流れ込む。


 マサキの手が、一瞬だけ止まる。


(……店で出てくるようなやつだ)


 思っていた"簡単なやつ"のレベルじゃない。

 スプーンで一口すくう。

 卵とライスを一緒に。

 口に運ぶ。


(……うまっ)


 もう一口。

 今度は少し大きめにすくう。

 リサがじっと見ているが、食べる手が止まらない。


 リサは手をぎゅっと握って、


「……ど、どう?」


 少しだけ身を乗り出して、様子を伺う。

 マサキはもう一口食べてから、ようやく口を開く。


「わ、悪い。黙って食べて……」


 ぽつりと、気まずそうに言う。

 視線を逸らしてから、


「……うまいよ」


 今度ははっきりと。

 リサの顔が緩む。


「えへへ、良かった」


 マサキは何も返さない。

 ただ、食べる手は止まらない。


(聞かなくても見てたら分かるか……)


 リサは小さく息を吐く。

 さっきまで胸を締めつけていた不安が、ゆっくりほどけていく。


 ふと、マサキのスプーンを動かす手が、少しゆっくりになる。


「如月さんって、なんで料理できるんだ?」


 ぼそっとした疑問。

 リサはきょとんとしてから、


「食べるの好きって言ったじゃん、作るのも好きなんだよね」


 軽く返す。


「それだけ?」


 マサキは視線を皿に落としたまま、続ける。


「逆になにがあるの?」


 怪訝そうに言い返すと、マサキは一瞬だけ言葉を止める。


(……言うかこれ)


 迷ってから、


「……こういうの、誰かによく作ってるのかと思った。男がいるとか」


 リサの動きが、ぴたりと止まる。


「はぁ、またそれ?」


 呆れたようにため息をつく。


「なんですぐそういう思考になるの?料理できたくらいで」


 不満そうに眉を寄せてから、


「いたら松前くんを家に連れ込むわけないじゃん」


 マサキの手が、ほんの少しだけ止まる。


「連れ込むって言い方」


「事実だもん」


 マサキはオムライスを口に運びながら言う。


「誰かに作ってやるために覚えたのかと思った」


 リサの動きが止まる。


「ないない。そんな健気な理由じゃないよ」


「……そうか」


 短い返事。


「でもそれもいいなって今は思ってる。松前くんめっちゃ食べてくれるんだもん、作り甲斐ありそう」


 少し笑いながら言う。


 マサキはスプーンを持ったまま、視線を逸らす。


「悪い……もう少し味わって食べた方が、よかったよな……?」


 言いにくそうに、ぼそっと。

 リサがきょとんとする。


「なんで?食べてくれるの嬉しいけど」


「いや……」


 視線を逸らしたまま。


「せっかく作ってくれたのに、がっついてるだけだったから……」


「全然そんなことないよ、冷める前に食べてほしいし。ほんとに嬉しい」


 やわらかく言い切る。

 マサキは視線を落とす。


(……そういうもんか)


 小さく息を吐く。


「松前くんって、変なとこ気にするんだね」


「……そりゃあ、女に料理作ってもらったのは初めてだから」


 リサの動きが止まる。


「初めてか」


 思わず聞き返す。


「……ああ」


 最後の一口まで、マサキの手は止まらなかった。

 スプーンを置いて、軽く息を吐く。


「えっ……ごめん、初めてなのにオムライスとか。もっとちゃんと準備できてたら良かった」


 慌てた声。

 マサキは一瞬だけ黙る。


(なに言ってんだこの人)


「……美味いし、十分だろ」


 リサは照れたように笑いながら、


「だって、初めてって印象に残るでしょ」


 声が、思ったより弾む。

 嬉しさを隠す気もなく笑う。


 マサキは残りのオムライスを食べきってから、スプーンを置いた。


「……ごちそうさま」


「お粗末さまでした」


 リサが柔らかく返す。

 それから小さく息を吸って、


「今度はもっと豪勢にするからね」


 マサキはちらっとだけ視線を上げる。


「如月さんが作るなら、別に豪勢じゃなくていい」


「……っ」


 リサの動きが止まる。


(それって……あたしが作ったものなら、何でもいいってこと?)


 顔が、じわっと熱くなる。


 マサキはグラスのお茶を飲み干してから、静かに立ち上がる。

 その動きに、リサの胸が少し落ちる。


(……帰るんだ)


 当然だった。

 今日はご飯に誘っただけ。

 家に来てもらって、食べてもらって、それで終わり。

 引き止める理由なんて、別にない。


 リサが立ち上がりかけたとき。


 マサキはすぐ玄関へ向かわなかった。

 リビングの奥。

 廊下。

 吹き抜けの階段。

 静かに視線を巡らせている。


「……松前くん?」


 呼ぶと、マサキは視線だけこちらへ向ける。


「如月さん、親がニューヨークにいるって言ってたけど」


「うん?」


「……二人とも?」


 思いがけない質問だった。

 リサはぱちりと瞬きをしてから、軽く首を振る。


「お母さんだけ」


 そう答えてから、少しだけ間を置く。


「お父さんは、幼稚園のころに亡くなってるから」


 マサキの視線が、わずかに止まった。

 リサは逆に不思議そうな顔になる。


(……なんで急にそんな話?)


 誰かに話すたび、相手は決まって「大変だったね」とか、「可哀想に」とか、そんな顔をする。

 だからリサも、空気を重くしないよう笑って流すことに慣れていた。


 でもマサキは、そういうことを言わなかった。

 代わりに、もう一度だけ家の奥へ視線を向ける。

 静かな廊下。

 階段の先。

 人の気配の薄い広い家。


 それから、


「手を合わせる場所ある?」


 ぽつりと聞く。


「……え?」


 リサが目を丸くする。


「この家で飯、食わせてもらったから」


 言葉を探すみたいに、一拍置く。


「……家の人に、挨拶くらいは」


 リサは数秒、黙ったままマサキを見る。

 お父さんの話を、"可哀想な過去"みたいに扱わなかった。

 そのことが、胸の奥へ静かに残る。


「……っ」


 視線を逸らして、


「こ、こっち」


 早口で言って、くるりと背を向ける。

 長い髪がふわりと揺れて、細い肩越しに見える耳が、まだ少し赤い。


 マサキは何も言わず、その後ろをついていく。


 ◇


 廊下の奥の部屋。

 リサが静かに扉を開けると、空気が少し変わった。


 線香の残り香が、淡く部屋に残っている。

 大きすぎない仏壇。

 綺麗に整えられた花。

 埃ひとつない棚。

 リサが、ちゃんと手入れしているのが分かる。


 仏壇の写真立てには、若い男の人の写真。

 マサキはそこで、


(……若い)


 と思う。

 笑い方がどこか柔らかくて、目元が少しだけリサに似ていた。


 リサは仏壇の前へ座ると、慣れた手つきで小さな蝋燭を取り出す。

 その横顔を、マサキは少し後ろから見ていた。

 さっきまで慌てていたのに、今は妙に静かだった。

 長い髪を耳へかける仕草も、火を扱う指先も、落ち着いている。


 カチ、と小さな音。

 ライターの火が揺れて、蝋燭の芯へ移る。

 細い炎が、ゆっくり灯った。

 橙色の光が、リサの頬を淡く照らす。


「……どうぞ」


 リサが身体をずらして、マサキの場所を空けた。

 マサキは静かに座り、線香を立てて手を合わせる。

 細く上がっていく煙が、ゆっくり天井へ消えていく。

 目を閉じて、少しだけ頭を下げる。


(……お邪魔してます)


 慣れているわけじゃない。

 何を言うのが正しいのかも分からない。


(娘さんと同じクラスの、松前っていいます)


 隣では、リサが静かに座っている。

 さっきまで顔を真っ赤にして慌てていた人と同じとは思えないくらい、今は大人しかった。


(今日は、ご飯食べさせてもらいました)


 自然と視線が、隣へ向く。

 リサは気づかないまま、仏壇の方を見ていた。


(あなたは、見てないんですよね。この子が料理してるところ。どれだけしっかりしてるか)


 一人でも平気そうに笑う。

 寂しいとか、不安とか、そういうのを前へ出さない。

 でも実際は、たぶんずっと頑張ってる。

 幼稚園のころに亡くなったなら。

 この人は、今のリサを知らない。


(……ちゃんと育ってます。頑張ってるし)


 誰に頼まれたわけでもないのに、そんなことが頭に浮かぶ。


(料理も、上手かったです)


 大丈夫です、と。

 娘さん、ちゃんとやってます、と。

 安心させたい感覚に近かった。


(あなたが見れなかった今を、オレは見てます)


挿絵(By みてみん)


 そこまで考えたところで、マサキは小さく目を伏せた。

 なんでこんなことを考えているのか、自分でもよく分からなかった。


 やがてマサキは静かに手を下ろした。

 畳へ軽く視線を落としてから、小さく頭を下げる。

 それで終わりだった。

 でも、その動きだけで十分ちゃんとして見えた。


 リサはぼんやりその横顔を見ていた。

 線香の香りの中で見るマサキは、いつもより少し大人びて見える。


 今まで、お父さんの話をすると。

 相手は決まって、少し困ったみたいな顔をした。


『大変だったね』

『寂しかったでしょ』


 そういう空気になる。

 だからリサも、先回りして笑う。

 平気そうにして、「もう慣れてるから」と流す。

 気を遣われるたびに、逆に相手へ気を遣う時間になっていた。


 でも、マサキは違った。

 変に優しくしない。

 可哀想そうな顔もしない。

 慰めるみたいな言葉もない。


 ただ静かに、仏壇の前で手を合わせている。

 “亡くなった人”としてではなく。

 “リサのお父さん”として。

 今もこの家にいる人みたいに、自然に扱っている。


 しかも本人は、それを特別なことだと思っていない。

 そのことが、リサの胸へじわりと残る。


 広い家の静けさの中で、自分だけが知っていた空気を、少しだけ共有された気がした。


 鼻の奥がじわっとした。

 泣きたくなるほどじゃない。


 マサキは立ち上がると、仏壇へもう一度だけ軽く会釈する。

 その姿を見て、リサの胸の奥がまた小さく揺れた。


(お父さんに、ちゃんと届いた気がした)


「……ありがと」


 気づけば、そんな言葉がこぼれていた。


 マサキは視線を動かす。


「別に」


 短い返事。

 でも、声はいつもより少し柔らかかった。


 リサは小さく笑ってから、立ち上がる。

 蝋燭の火を消すと、細い煙がすっと消えた。

 さっきまで灯っていた橙色が消えて、部屋はまた薄暗くなった。


「……戻ろっか」


 リサがそう言うと、マサキは小さく頷く。

 先に立ったリサの後ろを、マサキが静かについていく。

 後ろで静かに扉が閉まる。


 そこには、いつも通り静かな仏間があるだけだった。

 けれど、いつも一人で手を合わせていた場所へ、今日はマサキがいた。

 そのことが、リサの中へ妙に残っていた。


 ◇


 リビングへ戻るころには、家の中はさっきまでより静かに感じた。


 マサキは軽く視線を巡らせてから、小さく息を吐く。


「……じゃあ、そろそろ帰るな」


「……うん」


 リサは間を置いて頷いた。

 ご飯に誘っただけ。

 引き止める理由なんて、別にない。

 なのに、さっき仏壇の前で手を合わせていた背中が、まだ目に残っている。


「玄関こっち」


 軽く言って、先に歩き出す。

 マサキは何も言わず、その後をついていく。

 広い廊下。

 並ぶ間接照明。

 さっき通ったはずなのに、玄関までの距離が妙に短く感じた。


(……もう帰るんだ)


 少し前まで、普通に隣でご飯を食べていた。

 それだけなのに、空気が少しずつ切り替わっていく。


 リサは玄関の前で足を止めた。

 振り返って、少しだけ笑う。


「今日はありがと、来てくれて」


 マサキはそのままドアへ手をかける。


「……あとさ」


 マサキが足を止める。

 リサは視線を逸らしながら、


「手、合わせてくれてありがと」


 ぼそっと言った。

 誰に言われたわけでもなく。

 当たり前みたいに、お父さんへ挨拶してくれた。

 そのことが、まだ胸の奥へ残っている。


 マサキは瞬きをしてから、


「……別に普通だろ」


 短く返す。

 本当に、特別なことだと思っていない声だった。

 この家で飯を食べた。

 だから挨拶した。

 たぶん、それだけの感覚。


 でもリサには、その"普通みたいにやる感じ"の方が、妙に嬉しかった。


「……じゃ」


 短く言って、玄関のドアを開ける。

 夜の空気がひんやり流れ込んだ。

 一歩外へ出る。

 リサはドアの内側で、その背中を見る。

 マサキが思い出したように、少しだけ振り返った。


「……またな」


 シンプルな一言。

 でも、その声が思ったより自然で。


「うん!」


 リサは反射みたいに頷いていた。

 ドアが閉まる。

 静かになった玄関で、リサはそのまま立ち尽くす。



 ◇ ◇



 リサの家の前の道。

 夜になりかけの時間帯。

 帰り道の男子生徒が、友達と並んで歩いていた。


「なあ今の見たか?」


「何が」


「今さ、あの家から出てきたやつ」


 そう言って、男子生徒はリサの家を顎で指す。

 もう一人が振り返る。


「……あそこ、如月さんの家だろ?」


「そうそう」


 男子生徒は少しだけ眉をひそめる。


「今出てきたやつ、松前じゃね?」


「は?」


 友達が思わず声を上げる。


「いやいや、違うだろ」


「いやマジあいつだって。背とか髪とか」


 一瞬、二人とも黙る。

 そしてもう一人が、声を落として言う。


「如月さんの家に、松前?」


 信じたくない、という空気。

 けれど"松前"という名前が出た瞬間、妙にリアルになる。


「……いや待て、ガチあいつだったらやばくね?」


 足を止めたまま、先に口を開いた方が声を落とす。


「いやいや、如月さんの家だぞ?さすがにないだろ」


 隣の友達は即座に否定するが、視線はまだ玄関の方に残っている。


「……いや、でもさ」


「もし本当に松前だったら」


 その一言で、空気がわずかに重くなる。


「え?」


 反射みたいに聞き返した声が、やけに間抜けに響いた。


「いや、あいつが如月さんの家行けるルートって何?」


 問いかけられても、すぐには返せない。


「……いや分かんねぇ」


 沈黙が一瞬だけ落ちる。

 それから、別の声が現実的に言い直す。


「てかそもそも如月さんが家に入れるとしても、松前じゃないだろ」


「だよな。普通もっと選ぶ」


 言葉にしながら、自分で少し納得して頷く。

 その流れのまま、軽く笑い飛ばそうとしたところで――


「おい、じゃあ松前が選ばれた側になるじゃん」


 冗談めかした声が落ちた瞬間、空気が止まる。


「やめろその言い方、気持ち悪い」


 即座に否定が返るが、声は少し遅れていた。


「いやでもそうなるだろ」


 笑いにはならないまま、その言葉だけが妙に残る。



 ◇ ◇ ◇



 翌日。

 マサキが教室に入った瞬間から、空気が妙にざわついていた。


(……なんだ?)


 机に鞄を置いたところで、背後から声が飛ぶ。


「おい松前」


 振り向くと、同じクラスの男子数人が、やけに真剣な顔で立っていた。


「昨日さ」


 先頭の男子が、声を落とす。


「如月さんの家、行ってたよな?」


 一瞬、教室の音が遠くなる。


 マサキは目だけで相手を見る。


「行ってたけど」


 あっさりした返事。

 その瞬間、別の男子が身を乗り出した。


「何してたんだよ!?」


「え、普通に」


「普通って?!」


 食い気味に詰められて、マサキはほんの少しだけ眉をひそめる。


「飯、食ってた」


「は?」


 一斉に固まる。


「……飯?」


 沈黙。

 一拍置いて、誰かが小さく言う。


「……なに食った?」


「オムライス」


 そこから一気に空気が変わる。


「え、待て待て、なんでお前が如月さんの家で飯食ってんの?」


「それって手料理?」


「如月さんの家ってどんな匂いした?」


「お前さ、靴どこ置いた?」


 質問が重なってくるが、マサキは淡々としていた。


「誘われたから行ったんだよ」


「誘われた!?」


 そこが一番食いつかれる。


「お前が如月さんに?」


「ん」


 短く終わらせると、男子たちの表情がさらに崩れる。


「でさ……」


 先頭の男子が、急に真面目な声に戻る。


「どうやったら家に誘われる?」


「は?」


 今度はマサキが聞き返す側になる。


「いや、如月さんってさ……普通に話しかけても無理じゃん」


「俺ら全滅だし」


「お前だけなんか別枠っぽいんだよ」


 勝手な評価が積み上がっていく。

 マサキはしばらく黙ってから、面倒そうに息を吐く。


「……別に、普通に話せばいいんじゃね」


「それができねぇんだよ!!」


 完全に詰まる一同。

 しばらく騒いだあと、核心だけが残る。


「でさ」


 先頭の男子が、真剣な顔になる。


「如月さんって、どういう話をすれば盛り上がるんだ?」


 教室の空気が一瞬静かになる。


 マサキは少し考えてから、ぼそっと言った。


「……話はあんましなくていい」


「え?」


「喜ばない」


「じゃあ何すりゃいいんだよ」


 マサキは間を置かずに続ける。


「黙ってても向こうが喋る」


 一瞬、教室が止まった。


「……え?」


 誰かが素で聞き返す。


「それじゃ会話成立しねぇだろ」


「しないけど、むこうが喋るから」


 先頭の男子が食い気味に続ける。


「だからさ、それで気に入られてるのが意味わかんねぇんだけど」


「いや、オレだってわかんねぇよ」


「なんでお前がわかんねぇポジなんだよ!」


 机を叩きそうな勢いで詰められる。

 マサキは目を細めた。


(こいつらの方がよっぽど如月さんと喋ってなかったか?)


「でさ、結局どうすりゃいいんだよ」


 一瞬、空気が落ち着く。


「如月さんと仲良くなるには」


 全員がマサキを見る。

 しばらく沈黙してから、面倒そうに言う。


「オレが知りたい」

挿絵はAI生成。

SDで生成、GPTで編集しています。

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