表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/21

15.夜会

王族主催の夜会まで、あと一週間という頃のことだった。

「セレスさん、これ着てみて」

シオン様の実家を訪れると、お義母様は満面の笑みで大きな箱を差し出した。

「……何ですか」

「ドレスよ。夜会用に仕立てたの。セレスさんにぴったりだと思って」


開けてみると、深い緑色のドレスが入っていた。シンプルだが生地が上質で、光の当たり方で色が微妙に変わる。余計な装飾がなく、それでいて品がある。

「……いただいてもよろしいのですか」

「もちろん。早く着てみて」


断る間もなかった。

仕上がりを見て、シオン様は少し苦笑した。

「……ドレス、僕もプレゼントしたかったんだけどな」

「お母様に先を越されましたね」

「そうなんだよね」

シオン様はため息をついてから、上着のポケットから細長い箱を取り出した。


「せめてこれだけでも」

開けると、細いチェーンに小さな淡い石がついたネックレスが入っていた。控えめで、しかし確かに美しかった。

「……つけてもいいですか」

「どうぞ」


シオン様は私の後ろに回り、そっとネックレスを留めた。

鏡を見る。ドレスと不思議なほど合っていた。


「はぁ……可愛い」

後ろからシオン様の声がした。

「……ありがとうございます」

「本当に可愛い」

「言いすぎです」

「まだ言い足りない」



---



夜会の会場は煌びやかだった。流石王族主催。

シャンデリアの光が床に反射して、至るところで宝石が輝いていた。

以前ならこの光景に委縮していた。義妹と元婚約者が並んで歩いていたのもこういう場所だった。

でも今は、隣にシオン様がいる。


「緊張してる?」

「少しだけ」

「大丈夫。セレスが一番綺麗だから」

「……誰に対してもそういうことを言うんですか」

「セレスにしか言ったことないよ」


シオン様が私の手を取ってエスコートした。会場に入った瞬間、周囲の視線が集まった。

シオン様目当てだろう、と思った。

実際そうだった。あちこちから視線が刺さってくる。令嬢たちの目がこちらに向いていた。正確にはシオン様に、その後、隣の私に。


「気にしなくていいよ」

「わかっています」


シオン様の愛の表明がその後しばらく続いた。

「セレスのドレスの色、本当に似合ってる」「そのネックレスつけてくれてよかった」「今日のセレス特別可愛い」

正直うるさかった。

悪意ある視線や声はあったのかもしれないが、隣のシオン様の声がうるさすぎて何も感じなかった。


しばらくして、一人の令嬢がつかつかとこちらへ歩いてきた。

金髪で、整った顔立ちをしていた。目がシオン様を真っ直ぐに捉えていた。

どこかの貴族の令嬢だろうか。

私は少し身構えた。


しかしシオン様が一歩前に出て、その令嬢と目が合った瞬間。

ウィンクをした。

令嬢の足が止まった。


ごめんね、と言いたげな、それでいて柔らかい笑みを添えて。

令嬢は一瞬固まり、頬を染めて、くるりと向きを変えた。

「……」

「効くんですね」


私は素直に感心した。

「慣れてるから」シオン様はあっさり言った。「これが一番話さなくて済むんだよね。言葉にすると角が立つし」

「なるほど」

「あ」シオン様がこちらを向いた。「セレスにもやってあげようか」

「結構です」

「遠慮しないで。ね」


シオン様はウィンクを私に向けた。

ただ、高速でウィンクしすぎてほとんど瞬きだった。


私は吹き出してしまった。あまりにも面白くて。


シオン様はたいそう嬉しそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ