書庫で司書をしているグール強くね?
透明な液体を口腔から溢れさせながら醜悪な生き物が倒れていく
三匹もいたグールはたった一人の存在によって倒された
もしもその偉業を成したのが人間であれば
多くの人々からその功績を褒め称えられただろう
少女を庇いながらであれば尚更だ
しかし、現実にはグールを相手に戦っていたソレは
リチャードという人からすれば倒れ伏した生物と
同じくらい醜い化け物であった
まあ、そもそも褒め称える人間も恐怖する人間もここにはいないのだが
「コレデイイノカ?」
「目標敵性生物の排除を確認」
「リチャードの肉体的消耗は最小限と推測」
「問題ないならこのまま進む」
「アア、ワカッタ」
少女はグールが死んだことを確認するとリチャードに
先に進むことを提案する
先ほどの戦いでリチャードは怪我を負わず
また、ほとんど一撃で倒していたので問題ないと
判断したからだ
リチャードも想像以上にグールが弱かったため
少しばかり拍子抜けしていたが先に進むという言葉を聞き
これから先も同じようには行かないだろうと自分の気を引き締めた
暫く二人が壁に沿って歩いていると
先の方に白い扉が見えた
「この扉の向こうは書庫になっていて司書が書物を管理している」
「シショ?」
「そう、グールの長で書物を愛し、書物を管理する者」
「グール?ソイツハダイジョウブナノカ?」
「問題ない」
「彼は人と変わらない知能を持っている」
「貴方を見れば彼も襲ってこないはず」
「ソウナノカ?ソレナラバイインダガ・・・」
因みにここに来るまでにリチャードは他二体のグールを倒している
グールはリチャードにとって酷い悪臭を放っているので
既にグールに対する忌避感が植え付けられていた
「書庫には私が持っていない情報もある」
「中に入って損はない」
「ナラバアケルゾ?」
アイが頷いたのを確認してリチャードは
純白の扉を開く
キィッという音と共に薄暗い空間に光が差し込み
リチャードとアイは目を閉じる
再び二人が目を開くと
そこはたくさんの書籍が本棚に隙間なく収められた
非常に広大な書庫であった
「ココガショコ?」
「すごい・・・本がこんなにたくさん」
「おい、誰だ勝手に俺の部屋に入ってくる奴は」
二人が書庫室の光景に目を見開いていると
豪華な装飾に身を包んだ汚い犬のような顔をした
人物がどこからともなく現れて二人を鋭く睨みつけた
「申し訳ないグールの長バーラル殿」
「ほう、俺の名前を知っているか」
「はい、私は彼の道案内をするために生みだされたので」
「なるほど・・・」
そう言いながらグールの長はリチャードの方を向く
「お前、どうして自分がここにいるか分かるか」
「・・・・イヤ、ソレハワカラナイ」
「そうか・・・」
バーラルは何かを思案する素振りを見せた後、
「まあ、お前さんは大丈夫そうだから」
「そうだな・・・俺の大切なベビーたちに傷つけないのなら」
「この部屋にある本を使って何か調べてもいいぞ」
「!感謝するバーラル殿」
「・・・ベビー?ナンダソレハ?」
「俺が管理している本たちのことさ」
「読むのはいいが絶対に傷つけないようにな」
「ベビーは可愛いが不機嫌になると凄く怒るんだ」
「?ホンガオコル?」
「それじゃ、俺は自分の仕事があるから」
そう言って、書庫の管理人は現れた時と同じように
霧のように消えていった
「・・・ナンダソレハ・・」
「おそらく不可視化と門の創造の魔法を使った現象」
「門の創造は可視状態で門が生成される魔法」
「それと同時に不可視化の魔法をかけることで目の前から消えたように見えただけ」
魔法とはリチャードにとって理解しがたいものではあったが
先ほどのグールは確かに魔法を使っていたのだ
「ソンナコトガデキルトハ・・・」
「アノグールハワタシヨリモツヨイノデハナイカ?」
「彼の魔法に攻撃系は存在しなかったはずだから」
「戦いになったとしても貴方なら勝てる」
「ソウカ?」
「ソレデケッキョク、ホンガオコルトハドウイウコトナノダ?」
「この書庫に収められている本には意思がある」
「話したり動いたりすることはできないけれど」
「怒ると大変なことになる・・・らしい」
リチャードはアイの最後の言葉で具体的に起こることを知っているわけではないのだと察した
それにバーラルとの約束を破る気はないのだ
リチャードは本に傷を付けないように気を付けようと思った
本を怒らせると何が起きるのか
具体的な内容が分からなくても
どう考えても悪いことにしかならないと理解できるだろう
「ソウイエバ・・・」
ただ、リチャードには本を読むにあたって不安なことが一つあった
それは、文字が読めるのかどうかだ
本棚から本を一冊手に取って表紙を見てみる
そこには『グールの生活』と書かれた文字が見えた
リチャードは自分が文字を読めることに少し安心した
この書庫に何か大切な情報があっても
文字を読んで理解することができなければどうにもならないからだ
リチャードは最初に手に取った本を開いてページを捲りながら
本を読んでいった




