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ここはドコ?私はダレ?貴方のナマエハ?

更新しました。


生と死の狭間に微睡み漂う脆弱な存在

だが、それらは人間という好奇心によって生かされ道徳心や倫理観のないメスを入れられる

苦痛を伴う絶叫

救いを求める喘ぎ

そして

それらを意に介さない銀色の輝き

自らの肉を裂き

血を滴らせ

なおもソレの体を走る

そしてソレはついに痛みという感覚を忘れ

自らがここに至った理由を模索した

しかし、ソレは何も分からなかった

ソレには記憶がなかった

否、

過去を思い起こそうとするたびに

記憶に激痛が走った

ソレには理解できなかった

自分の置かれている状況が

自分の存在理由が

ワタシはナニモノで

ドウシテここにいて

何故カラダをイジラレテいるのか

何も分からないまま

時が過ぎ

メスが止まる

拘束が解かれる

ソレは少しの時間をおいて

顔を動かし

そして起き上がった

そこには誰もおらず

四角いレンガ造りの部屋があるだけだった

後ろを振リ向くと

自分が横になっていたはずの台が消え

茶色の扉がそこに鎮座していた

壁に接しておらず

まるで置物のように立っていた

しかし、扉を開けてみると

扉の向こうには白い空間が広がり

その部屋の中央には球体状の透明な物体が浮かび上がっており

それ以外には何もなかった

不思議な場所だ

ソレは最初にそう思った

部屋を見渡していると

不意に目覚めたときの痛みを思い出し

自分の体を見てみると

そこには傷一つない鮮やかなピンク色が映える

肉の塊が目に映る

無傷の肢体を眺めながら

先ほどの出来事について考えを巡らせる

一体自分は何をしていたのか?

自分は何をされていたのか

何の痕跡も残っていない自分の体を見つめながら

刹那の時を思考の渦に沈め

そしてその行為に何の意味もないと悟った

それからソレはこの場所から出ようと思い

自分がいた部屋をもう一度見渡してみる

赤褐色のレンガで出来た

扉があるだけの部屋

そして何故かは分からないが

壁に接していないのに

別の場所に繋がる扉

扉の先には透明な球体が浮いているだけで何もない部屋


透明な球体

これが何なのか

どうして浮いているのか

気になったソレは

白い部屋に入り

透明な球体に触れてみた

すると

その球体はソレの触れた指先から波紋を生じさせ

表面に沿って全体に波紋が広がっていった

何処から差しているのかもわからない

光を反射して

透明だった球体は

眩い光を放つ

暫くすると光が収まり

球体は光の収束に伴いその体積を縮ませる

そして球体の輝きが失われ

球体は一匹の生物と大きい鍵のようなものに変化した

生物はソレよりも小柄で

少々奇妙な形をしている

四つの四肢と思われるものが胴体から生え

四肢のうちの二つの間から頭部らしき球体の部位が見える

ソレには少しばかりその生き物に見覚えがあった

それはおそらく人間という生き物だろう

何の記憶もないソレはしかしその生き物が人間であると自然ながらに理解していたのだ

そして、人は普通服という布を身に纏うことも知識として知っていた

しかしその人間は一切服を着ていなかった

全裸である

ソレはそんな人間もいるのだろうと納得した

ソレには人間に対する知識は何故だか持っていたが人間の美醜感覚や性的な感情は持ち合わせることはなかった

少しの間思考を巡らせていると

その人間は目を覚ました

「貴方は誰?」

人間が話しかけてきた

しかし、ソレは人の言語を話すのが少し苦手だったのでちゃんと話が通じるのか疑問だった

しかし対話を行わないと何も話が進まないので

人間の問いに答えることにした

「ワタシガダレナノカハワタシニモワカラナイ」

その言葉が相手に伝わったのか不安になりながら問いに答えると

「そう。」

その人間はそう返して扉へと目を向けた

ソレも人間につられて扉の方を向くと

そこには先ほどとは全く異なる大きな扉が聳えていた

先ほどの扉はソレがギリギリ通れるくらいの大きさしかなかったが

今ある扉はソレの二倍の高さはあるだろうか

それに木で出来ていたと思われる材質も今は重厚な鉄のようだった

突然変化した扉の様子にソレは驚き人間の方に向き直る

この部屋で唯一変化があったのはソレが球体に触れたことと人間が現れたことだからだ

どちらにせよこの場所から出られる手がかりを見つけたということだろう

ソレはこの不思議な場所から出られるかもしれないと予感し歓喜した

人間が言葉を発する

「どうして・・・扉が・・・」

おそらく扉の様子が変わっていることに驚いてるのだろう

いや、この人間は最初の扉を見ていないだろうから

扉の大きさかあるいは壁から離れて立っていることに驚いているのかもしれない

ソレは人間の側にあった鍵を手に取り扉へ駆け寄る

人間はソレの行動に驚きそして危険を知らせようと声を上げる

「待って!」

「!」

ソレは人間の叫び声を聞き動きを止める

「ドウシタ?」

この不気味で不可思議な場所から出られる喜びと安堵に心を突き動かされ、扉を開けようとしていたソレは

人間の言葉にその行為を止められたことに少しばかりの苛立ちを感じ

それを露わにしながら人間に問いかける

「その扉を開けては駄目」

人間はソレの感情に気づいた様子も見せずに

忠告、いや警告を放つ

ソレにとってその人間の言葉は不可解だった

何故この部屋に突如現れた人間がこの場所のことについて知っているのか

人間はこの場所について何を知っているのか、どうしてここにいるのか

その時初めてソレは人間に対してはっきりと疑問を感じた

そして、今まで人間に対して何も質問をしていなかった自分に憤りと呆れを感じながらソレは人間に疑問をぶつける

「ナゼトビラヲアケテハイケナイノカ?」

人間はソレの質問に答える

「その扉の先には『喰屍鬼(グール)』が徘徊している」

「その扉を開ければ彼らは私たちに襲い掛かってくる」

人間の情報は非常に重要なものだった

それを知らなければソレは死んでいたかもしれない

しかし、やはりこの人間が向こうの部屋の様子を知っているのは不思議だ

ソレは人間に別の問いを投げかける

「オマエハイッタイナンナノダ?」

「私はこの箱庭に連れてこられた挑戦者のナビゲーションとアドバイザーをしている」

「今回は貴方の担当として生み出された」



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