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エッセイのプロムナード  作者: 多谷昇太
引越し顛末記(二)

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まんまと罠に

こんなところに不動産などあるのかと歩き行く先に間口二間ほどの小さな店があったのでそこに入った。七十くらいの親父がいて好々爺然とした風情、私の要望を聞いてすぐに賃料5万円で2DKのアパートを紹介してくれた。四世帯アパートの2F角部屋でいま空いているのはこの部屋だけ、ほかは埋まっているとのこと。一応願ってもない条件だったがただ場所が上永谷だった。躊躇しないでもなかったが強く勧めてくる。とにかくいっしょに見に行くことにした。上永谷駅から徒歩10分ほどのアパートは確かに説明通りでアパート前には駐車場も付いている。中の造りは風呂桶と云いトイレと云い旧式だったが思ったより広い。私の希望通りで断る理由はないのだが…なにか、なぜか引っかかる。私はしつこいほどにいま居る住人たちのプロフィールを彼に訊いた。気になる真下の部屋は大家の弟だから間違いのない人で、隣は勤め人の女性、その下も男性の勤め人とのことだ。この住民像も願ってもないものだった。その私の様子を鋭く見ながら「とにかく口入れだけしておけばよい。まだ仮契約ではないから断ることもできる」などと交渉上手に云われ、私は応諾した。では店に戻って申込書を書いてくれと云われ部屋から出たとき「ふふふ、願ってもない環境でしょう?角部屋だし、隣は埋まってるし」などと揶揄う女の声が心中に伝わって来た。どこかで聞いたような声だ。またぞろ嫌な気になったが頭を振って不動産屋の車に乗り込んだ…。

 以上つらつらと記した一連のことが実は先に記した‘ワル’霊視の「働き方」に当たるのだ。と書いてもピンと来まいが結論から云ってこのアパートこそが件のチンピラヤクザ四人組の胴元、つまり親分(ではないかと私が疑っている人物)の持ち不動産だったのだ。幾許もなくここに男女四人組と、その後しばらくしてからなんと前のアパートの私の部屋の真下にいた夫婦者までもが移り住んで来た。悲惨を極めた車上生活の果てにつかんだ畳の上の生活だったのに、再びの悪夢がまた始まろうとしていたのである。平成17年のことだった。

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プロムナードが時に歩く(=読む)に堪え難い、恥っさらしな「引越し顛末記」だったりして申しわけありません。不快をもよおした方はここを飛ばされて結構です。以後はできるだけ歩くにまともな道(エッセイ)を敷くつもりですが、しかしこの難所の「引越し顛末記」はあともう一章ほど続ける予定です。
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