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エッセイのプロムナード  作者: 多谷昇太
引越し顛末記(一)・信じられない五つのこと

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車上暮らしへの転落

しかし信じられないだろうがその行く先々において件の男二人プラス女一人(?か二人)が私を追って現れるか、もしくは寮に住まえばこいつらとは別の人間が隣室に入り込んで来、こいつら同様に私を叩き起こすのだった。畢竟仕事が続かず、移動のための出費ばかりを費やして、いくばくもなく‘危ない’アパートへと舞いもどるしかなかった。そのたびに件の真下の夫婦者があざ笑っていたが、しかしそうこうするうちに今度はその夫婦者の部屋で騒ぎが起こる。伝わってくる感じでは亭主がどうでも私をこのアパートから追い出そうとする余り、どうも仕事にも行かなくなり、四六時中の騒音立てに徹しようと部屋にこもってしまったようだ。すると銭が尽きたのだろう、かつての隣室同様に(いやもっと激しく)私が食事を作り出すと、それこそ凄まじい勢いで部屋の中で足踏みを始める(震度3くらいだったか)。そんなバカを続けるものだから女房が出て行こうとしたらしく、しかしその時にさらにバカをしでかしてしまったようだ(詳述不能)。その反対にいつの間にか隣室の窮乏と蹴り合いは終わったようで壁を鳴らす音もしなくなった。意味するところは女が男を乗り換えたのだろうか?知らず、である。興味もない。それどころかついに私の方の窮乏が極まって来て、家賃も払えなくなり、またそれよりなにより、この気違いアパートに心底嫌気がさして、ついに私はここを引き払って車上暮らしを始めることとなる。階下の亭主の念願成就という次第だったろう。その後私はなけなしの金で性懲りもなく埼玉県は田沼町などに行ったりして、寮つきの仕事を求めたがうまく行かず(例のアンビリーバブルな追跡があったのと、目がすっかり悪くなっていた。下の亭主の睡眠妨害をかわそうとして耳に粘土を詰め込んだり、さらにその上からヘッドフォンをして音楽を鳴らしながら寝たりしているうちに、眼中で黒い星が光った。つまり内出血したのであり、しかしすでに保険証もなくなっていてほったらかしている内に目がかすむようになってしまった。ついでに耳も、内耳炎が嵩じて左耳がほとんど聞こえなくなる)、横浜方面に帰るためのガソリン代も尽きてしまう。万策尽き果てて実は私はここで久しく音信を絶やしていた姉に無心の電話をかけたのだった。例の矢切の渡し場辺りからのことで、前記した胆管ガン手術の前にもこのように、ていたらくの極みの内に助けを求めていたのである。その折りは「止んぬるかな」そのものの心境だった…。

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プロムナードが時に歩く(=読む)に堪え難い、恥っさらしな「引越し顛末記」だったりして申しわけありません。不快をもよおした方はここを飛ばされて結構です。以後はできるだけ歩くにまともな道(エッセイ)を敷くつもりですが、しかしこの難所の「引越し顛末記」はあともう一章ほど続ける予定です。
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