8話
「双子だから顔がそっくりなのは認めるけど、俺は弟」
男は指で白衣の胸元を指差すと〝朽葉〟と書かれたネームプレート。薫達はぽかんと口を開け朽葉を凝視するが、どう見ても椿と瓜二つ、双子にしても似過ぎている。同一人物としか思えない。
「はぁ? まだ疑ってるの?」
朽葉は低い声で呟き、イライラした様子で薫達を見下ろし「これでも解らない?」と、片目を隠している長い前髪を掻き上げる。
すると、左の眉から下に向かって頬まで刻まれた深い切り傷が現れた。
「こんな醜い傷、目まで潰れてるから人に見せたくないのに……まだ椿だって言う? 殺すよ?」
「それより朽葉さんは味方? それとも敵?」
憂己は朽葉を睨み付けながら冷たく言う。
「君たちを助けに来たわけでもないし、殺しもしないよ」
「じゃあ何しに来たの? 鬱陶しいから消えてよ」
「鬱陶しいとか言っちゃうんだぁ? あーあ、死ねばいいのに」
睨み合う憂己と朽葉。
「にぃ! いい加減にして。で、どうすれば外に出られるわけ?」
すっかり泣き止んだ凛々が朽葉に詰め寄る。朽葉は凛々の頭に着いている耳を弄りながら言った。
「出口まで辿り着けばいい。あ、『脱出口』ぜーんぶ開かないから逃げようとしても無駄だよぉ?」
「何でこんな目に遭うのが俺たちなんだよ……」
薫が呟くと、朽葉は嬉しそうに言う。
「素質があるからだよ? 今まで見込み違いの奴等はみーんな無様に死んじゃったけど、君たちは失望させないでよね?」
「意味解んねぇ……」
「勝手に選ばれちゃって哀れだけど、君たちを試してるって訳。ま、死なないように頑張ってよ」
朽葉は「ほらほら」と先へ進むように四人の背中を押して促すと笑顔で手を振る。
そんな朽葉に呆れながらも、彼のおかげで気が抜けたのか、逃げられないと理解し覚悟したのか、先程まで感じていた恐怖が不思議と柔らぎ四人は歩き始めた。
難しい……。
表現したいこと色々あるのに。
本当にここまで読んで頂き感謝です!