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婚約者が浮気をしたら子供になる呪いをかけたのですが、懐かれるなんて思ってもいませんでした  作者: もも


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14 最終回

「かあさま抱っこ」

リビングで座っていると、膝に乗り首に手を回し頬寄せしがみついてくるのは嫡男のルイ三才。髪は銀色、瞳は碧眼でラドクリフ様を小さくしたみたいにそっくりだそう。


「ふふっ、もう抱っこしてるじゃない。甘えん坊さんね」

「えへへ、かあさま大好き。ねえおにわにおさんぽに行こう。きれいなお花がさいているんだよ」

「良いわよ行きましょうか。帽子を被ってね」

「は~い」

わたくしの天使が微笑んだ。


二人の帽子を持って近づいてきたのは夫のラドクリフ様だった。

「今日も二人が可愛くて癒されるねえ」

「父さま抱っこ!」

「おいで、ルイ」

目線が高くなったせいでキャッキャッと笑うルイと、慈愛の籠もった目でわたくしを見つめるラドクリフ様を見て嬉しくなってしまう。



 あれからラドクリフ殿下は臣籍降下して公爵位を賜った。

約束通りラドクリフ様が執務をわたくしは魔術の研究や化粧品とポーションの開発をしている。

ローズ商会は国内に六店舗に増え、お祖母様の隣国にも三店舗を出店している。

隣国の責任者は全面的に信用できるアーサーにお願いした。わたくしの右腕に成長したアーサー以外に任せられる者はいないのだもの。




 あの騒動の後直ぐにわたくしは転移魔法を会得した。隣国のお祖母様の離宮に行きたいときに行けるようになったのだ。

最初は一人で転移するのがやっとだったが、やがて二人に増え三人でも出来るようになった。

わたくしが離宮に突然現れた時のお祖母様の驚いた顔は今でも忘れられない。


お母様と一緒に転移した時には泣きそうになっていたのよ。あのクールなお祖母様が。三人で笑い泣きしたものだ。

もちろんラドクリフ様と一緒にご挨拶にも伺ったわ。あの殿下がお祖母様のオーラに当てられ緊張していたのよ。なんだか感激したわ。


 転移魔法で抜き打ちに隣国の支店を訪れるのが楽しみでしょうがない。だってその度にすっかり紳士になり統括然としたアーサーが腰を抜かしそうに驚くんですもの。楽しいわ。

あっ、アーサーは陛下から働きを認められ男爵位を賜ったの。恐れ多いと言っていたけど、貴族相手の商談もあるしね。色々と都合が良いのよ。



 利益のお返しは国民にと思ったわたくし達は陛下の御代に教育施設を充実させるお手伝いをした。

国内に五歳から通える学校を作ったのだ。国民の識字率が上がると国が繁栄するのは、前世の記憶で知っていたからだ。領地でも成功していたしね。

教師は文官を引退した人や貴族家の次男や三男の他、職業婦人になってもいいと言ってくれる女性にお願いした。


最低でも読み書きと計算が出来れば生きて行きやすくなる。騙されることも減るかもしれない。子どもを労働力と考えて学校に出さない親には厳格な審査の上で奨学金の名目でお金を出すことにした。きちんと学べば返還の必要がないものだ。学校で勉強をした子どもたちは家に帰り大人たちに教え、識字率は緩やかに上がっていった。

国民は国の財産だもの、大事にしないと。








◇◇◇



 ルイと親子三人でピクニックに来ている。久しぶりのラドクリフ様の休みだ。王都から馬車で三十分程の広い公園だ。湖の眺めが美しく木々が整備されている。赤やピンク黄色のチューリップが咲いていて綺麗だ。


「すごい!お花がいっぱい。あっ!ちょうちょ だ。 つかまえたい。お父さま 行ってっても良い?」

「良いけど、湖の近くに行っては駄目だよ」

護衛騎士三人がさっと近づいた。虫籠や網を持っている者もいる。

「うん、分かった。近づかない」

そう言うとルイは既に駆け出していた。

「子どもってじっとしていられないのね」

「そうだね、動かずにはいられないんだろう」

「貴方も馬で駆けて来て良いのよ。せっかくの休みなんですもの」

「たまの休みだからリリスの側にいたいんだよ。忙しすぎてリリス成分が足りない」

そう言うと腰に手を回し身体を引き寄せ額に口づけた。

「な、何をするの。ここは公園よ。恥ずかしいでしょう」

「いつまで経ってもリリスは乙女の様にかわいいね。直ぐ真っ赤になるんだから」

頬に両手を添えたラドクリフ様の熱の籠もった瞳がわたくしを見つめていた。

「ルイは可愛いけどリリスを独占する時間が欲しいんだ」

「なっ、何を言ってるの?毎晩一緒に寝ているではありませんか」

(わたくしを抱き枕にしているのは誰なの。充分足りていると思うんですけど)


「…足りない。デートがしたい。観劇に行ったり、レストランに行ったりリリスと大人の時間を楽しみたい」

(駄々っ子みたいだわ)


「まあ困った旦那様ですこと。乳母達と時間の相談をしてみますね」

「うん、愛してるよリリス。僕の女神」

そう言うとチュッチュッと頬に唇に小鳥のようなキスを落としてくる。

いつもきりっとしているラドクリフ様の色気が半端ない。


お母様によるとこういう旦那様の不満を受け止めるのが妻としての役目だそうだ。見過ごすと余所見するのだそう。今でもモテる旦那様ですものね。

呪われると思っているので浮気はしていないが…。抑止力は必要ね。

目一杯甘やかしてあげないと。



わたくしかラドクリフ様が死ぬ間際に告白しようと思っている。

「とっくに呪いは無くなっていますのよ」と。どんな顔をするのか楽しみでならないわ。






ここまでお付き合いくださりありがとうございました。これで完結です。

前世の記憶が怖くて呪いをかけたお茶目で魔法の天才アマリリスと、やっと素直になれたラドクリフのお話を読んでくださりありがとうございました。

次作でもお会い出来ますように。

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