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婚約者が浮気をしたら子供になる呪いをかけたのですが、懐かれるなんて思ってもいませんでした  作者: もも


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1 始まり

よろしくお願いします

 宮廷の中庭で楽しそうに寄り添う婚約者と美しい女性の姿を見て、アマリリスは胸を押さえ息を止め呟いた。

「…やはりこうなったのね…」と。

分かっていたこととはいえ実際に目にすると、諦めにも似た辛い気持ちが込み上げた。



ラドクリフ第二王子と公爵令嬢アマリリスの婚約は王家からの申し出で成立したものだ。

喧嘩をすることもなくかといって仲が良いというわけでもないが、冷たくされた覚えはない。茶会や舞踏会のエスコートはして貰ったし誕生日の贈り物や殿下が地方に視察に行った際のお土産は欠かさず届けられていた。


だが今日は月に一度のお茶会の日だ。その日に他の女性といるのを見せるというのはそういうことだ。



婚約期間は十年。多少の情が育っていたのかも知れない。それを振り切るようにアマリリスは踵を返した。



◇◇◇



 アマリリスが前世の記憶を思い出したのは五才の時だ。 鏡で自分の姿を見て 既視感を覚えた。

…ここは「たとえ世界中が敵になる日が来ても 君の側を離れない」という 人気 WEB小説の悪役令嬢の幼少期に似ている。表紙絵が好み過ぎて忘れることはなかった。 いやそっくりなんじゃないの?まさか 転生した?前世より途方もなく可愛いんですけど。

大きくなればもっと美しくなるのだろう。 へえこんな美人の婚約者がいても浮気をする男っているのね。 アマリリスは信じられない思いで一杯になった。




  前世は事務員をしていた。 平凡で地味だが WEB小説好きの平和な人生だった。 昼休憩にコンビニでお菓子を買って帰ろうとしたら、暴走してドアを突き破って来た車に跳ねられたんだった。 痛みは覚えていない 。



小説では、穏やかな間柄だったはずの 婚約者がある日 元平民で伯爵家の庶子の令嬢と恋に落ちる。

それに嫉妬をして邪魔をし嫌がらせをするのがアマリリス だった。

浮気者に怒るのが当たり前なのに、心が狭いと言われて断罪されるのだ。

納得できない。 不貞に寛容な世界なんてクソくらえだ。

テンプレだわ。テンプレ過ぎるよ。面倒くさい。

いずれ 浮気をする男なんていらん。 まだ会っていない 浮気者の王子など婚約をしなければ良いのだ。


そう思って あらゆる手を使ってみたけど婚約は回避できなかった。

泣き落としやハンガーストライキまでしたのに。

最後は王命まで使われた。

何なの?作品の強制力なの?そんなに悪役令嬢の私が必要なの? 運命は無情にも放っておいてくれなかった。


だから 三年かかって研究をしたのよ 、浮気をしたら子供になる呪いをね。

やられたらやり返さないと。

さすがに死んでくれとは思わないし、幽閉もキツイでしょう。なら人生をやり直せと思ったの。

浮気をしたら発動する子どもになる呪いを五才の時に考えた。

単純だと笑わないで。

なんせ五才児なの。たとえ大人の精神が混じっていたとしても。

そして八才の時に研究は成功した。

言っておくけど浮気の動きがなかったら発動しないのよ。







 一週間後アマリリスが隣国の祖母の所に遊びに行っている間に術は発動するだろう。王宮が大騒ぎになるところが見たい気もするが、身の安全は大事だ。疑われては元も子もない。証拠はどこにもない。魔術式は頭の中にある。

今までに婚約解消の為に手を打ったがことごとく失敗していた。

王子妃になるより魔法の勉強がしたい。浮気男は捨てたい。その為の呪いだ。






 これで婚約は解消になるはずだ。王家も七才児との婚約を続けろとは言わないはずだ。漸く運命とやらから逃げ出せたような気がしてアマリリスは少しだけ肩の力を抜いた。


◇◇◇




予想通り隣国のお祖母様の離宮で羽を伸ばしている間に事件は起きた。


「大変でございます!お嬢様。殿下が…殿下が…」

「大きな声ではしたないわよ、ミル。殿下がどうかされたの?お怪我でもされたのかしら?」

その途端真っ青になったのは私の専属侍女だった。ここが何処か思い出したのだろう。

隣国の王子様の話題などスキャンダルにしかならない。例え怪我や病気でも弱みを知られたら命取りになるのが貴族社会だ。ましてや王族、何処に敵がいるのかも分からない。


「申しわけありません。失礼いたしました。お嬢様、耳をお貸しくださいませ」


「待って」

アマリリスは防音魔法を素早く掛けた。

「良いわよ。これで周りには聞こえないわ」

「お嬢様驚かないでくださいませ。何と殿下が子供になる呪いに掛けられたそうでございます」

「えっ!?」


思わず笑いが込み上げたがぼろが出ないように顔を整えた。悪いけど味方から騙さないとね。どこに王家の影がいるのかも知れないのだから。


と思ったアマリリスは魔術の天才だったが残念なことにちょっと抜けていた。

娘のことなどお見通しな母親と国王陛下への対策を考えていなかったのだった。



読んでいただきありがとうございました。完結の目処が付きましたので、毎日2回朝と夕方投稿します。

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