47 自然に乗って行く①
「アキラ君おはよっ!」
朝の支度をしていると、ミケが声をかけてくる。
昨日は、なんだかんだ色々あり、エステルちゃんとカティアちゃんと何故か一緒に寝る事になった。朝を迎えると二人は、まだ寝ぼけていたので先に支度をしている所だ。
「ん? ミケおはよう。ってどうした?」
顔を洗ってタオルで拭いていると、背後からミケが抱き着いてくる。
「うーん……なんとなくかなっ?」
声がいつもと違って、弱弱しく感じた。
なんだ? ミケどうしたんだろ? いつもより元気ない感じだけど? 体調でも悪いのかな? あっでも、この体勢は……柔らかい物があたって、とても素晴らしいです。
後ろを振り返るが、ミケの大きくてふわふわな狐耳しか見えない。その耳はペタンとしている。
「うんっ! もう大丈夫っ!」
少し時間が立つと、ミケはそう言って背中から離れて行った。
「うん? 大丈夫ならいいけど……」
こちらを笑顔で見つめるミケは、いつも通り可愛らしい笑顔と先ほどまで伏せていた大きな耳も、今は綺麗にピンっと伸びている。
「じゃあっそゆことでっ!」
ミケは元気よくそう言った後、軽快なステップを踏みながら部屋を出て行く。
元気になってたし大丈夫かな? 俺もさっさと用意して、お仕事しにいかないとな。今日は何するんだろなパトリシアちゃん。おじさんはなるべく簡単なのがいいです、熊とかはちょっと……。
少し不安になりながらも、用意をすませ玄関に向かっていった。外に出ると門の近くで、綺麗なブロンドの長い髪を人差し指で絡めるように回し、壁に寄りかかるパトリシアちゃんがいた。
「おっ? アキラおはよう!」
こちらに気づいたパトリシアちゃんが元気よく挨拶してくる。
「おはようパトリシアちゃん。今日も迎えに来てくれたんだね、ありがとうね。ちょっと待っててね、ミケとアリスちゃんも、もうちょっとで来ると思うから」
アリスちゃんは昨日寝るのが遅かったのか、今朝はなかなか目が覚めない様子だった。
寝坊助のアリスちゃんは可愛らしくてよかったな。なんかこう……胸にくるものがあるね。
今朝の事を思い出していると、用意が出来たのかミケとアリスちゃんがお家から出て来たようだ。
「二人とも準備出来たみたいだね。あれ? あの二人も出掛けるのかな?」
ミケとアリスちゃんがお家から出てくると、後からエステルちゃんとカティアちゃんも一緒に。こちらに近づいてくる四人。若干一名の方が凄く睨んでくる。エステルちゃんですね。
「アキラおねえちゃん達おまたせー」
アリスちゃんが元気よく言ってくる。その後ろからエステルちゃんの熱い視線を感じる。
「うっうん。それじゃぁ……そろそろ行こうか……」
危険を感じ取り、早々に移動しようと試みたが、その前にエステルちゃんが一歩前に出て口を開く。
「ふーん……あなたがアキラのPTメンバーねぇ……ってあんた、パトリシア?」
高圧的な態度から、キョトンとするエステルちゃん。
「アキラ、このチンチクリンは誰なの? あたしの事知ってるみたいだけど……」
エステルちゃんを指さしながらパトリシアちゃんが言ってくる。
あれ? エステルちゃんは知ってるようだけど、パトリシアちゃんは知らない様子だな。ってかパトリシアちゃんその発言はちょっと……。
不安になっていると、エステルちゃんがワナワナと震えている。
「ちょっとあんた! 誰がチンチクリンよ! それにっ! なんで私の事覚えてないのよ!」
プンプンするエステルちゃん。可愛らしい。
「小さい頃この街で私が一緒に遊んであげたじゃない!」
それを聞いたパトリシアちゃんは少し悩んだ後、思い出したのかビックリした様子でエステルちゃんを見た。
「ああ! あの貴族の家の子! 小さい時にいきなり絡んできて色々連れまわされたような……」
小さい時に会って以来なのかな? てか、小さいエステルちゃんか……やべぇな。
小さい頃のエステルちゃんを想像していると、現在でも可愛らしいエステルちゃんがパトリシアちゃんに近づいて行った。
「たくっ……パトリシア、あんたねぇ……覚えてないってひどいじゃないの」
呆れた口調で告げるエステルちゃん。その瞳は寂しげだった。
「いやぁ……ごめんって。小さい頃の事はあまり覚えてないんだ。でも……エステルに会ったら色々思い出してきたぞ! エステルのせいで色々とひどい目にあったことを……」
遠くを見つめながら伝えるパトリシアちゃん。
パトリシアちゃんも色々とエステルちゃんではちゃめちゃを楽しんだんだね……おじさんなんとなく仲間意識が芽生えたよ。
しんみりした気持ちになっていると、エステルちゃんが話を続けた。
「ひどい目ってなによ! パトリシアが元気ないから、連れまわしてあげたんじゃないの!」
あ、連れまわしたことは認めるんだねエステルちゃん。
「ほんとにあんたねぇ……昔のパトリシアは静かな性格だったのに、随分変わったわね。私は別に……嫌いじゃ……ないけど」
エステルちゃんは呆れた様子でいたが、その口元は笑顔になっていた。
「昔のあたしって、そんな感じだった? でも……エステルはなんか小っちゃくなってないか?」
「それは、あんたがでっかくなっただけでしょうが! 身長も私より大きいし、それに……むっ胸も……
べッ別に気にしてないわよ! 私はこれからだもん!」
エステルちゃん小さい事気にしてるもんね。でもね、大きいとか小さいとかじゃなくて、そこにおっぱいがあればおじさんは幸せになれるから大丈夫だよ。
じゃれ合う女の子を眺めながらそう思うおじさんであった。そんな二人を楽しんでいると、エステルちゃんがこちらを見つめてくる。
「アキラはなんで笑ってるのよ……」
エステルちゃんがジト目で見つめてくる。たまらん。
「えぇっと……可愛らしい女の子がじゃれ合う姿が微笑ましいと思いまして……」
「かっかわいいって……そうゆう事はみんなの前で言われるのは恥ずかしいぞ……」
何故かパトリシアちゃんはモジモジと恥ずかしがっている。
「なっ! パトリシアあんたまさか! ちょっとこっち来なさいよ……」
パトリシアちゃんの様子を見たエステルちゃんが、少し離れた所にパトリシアちゃんを連れて行き、何かこそこそと話をしているようだ。
「いやぁ~エステルは、なんだか楽しそうっすね」
ネコ耳カティアちゃんが近づいて来てそう言ってきた。
「あれ? カティアちゃんはパトリシアちゃんの事は知らないの?」
「自分はエステルと会ったのは、みんなと比べたら遅いほうっスからねぇ~」
頭の後ろで腕を組みながら話すカティアちゃん。おっぱいはエステルちゃんより大きいようだ。
小っちゃい頃からみんな一緒かと思ったけど、そうゆうわけでもないんだな。お……? なんだ?
カティアちゃんと話していると、コソコソ話をしていた二人が、こちらに向かってくる。
「ちょっとアキラ! どうゆうことなの!」
「そっそうだぞ! アキラ!」
勢い良く懐に飛び込んできた二人は、そのままの勢いで話をはじめた。
「昨日の、でっデートの相手ってパトリシアだったの!? それに……膝枕したってどうゆうことよ、私だって……」
エステルちゃんは服にしがみつきながら言ってくる。
「いやっだから……デートじゃっ……」
エステルちゃんに圧倒されつつも説明をしようとするが、同じように胸の服にしがみつくパトリシアちゃんが割って入る。
「一緒に! 一緒に同じベッドで寝たって本当なのか! ずっずるいぞ!」
パトリシアちゃんはそう言い、服を引っ張てくる。そしてエステルちゃんにも服を引っ張られている。
「たしかに寝たけどっそこの、ネコ耳のっカティアちゃんも一緒だったよ!」
ぶんぶん振り回されている俺の横で、ニヤニヤしていたカティアちゃんも巻き込む事にした。
カティアちゃんは俺の発言を聞くと、そそくさと逃げようとしたがパトリシアちゃんが一瞬にして背後を取りカティアちゃんを捕まえていた。
「ネコ耳さんもなの! どんな感じだったんだ!?」
カティアちゃんを背後から羽交い絞めにしながら聞くパトリシアちゃん。
「ちょっ……アキラ姉! 離れるのひどいっスよ! いや、自分は特に何もしてないっスから……どんな感じと言われてもっスね……」
パトリシアちゃんが移動した時に、エステルちゃんだけだったので、抱き上げて安全圏まで動くことが出来た。エステルちゃん小さくて良かった。
ネコ耳さんすまないな。おじさんは危険が危ないだったんだよ。
捕まっているカティアちゃんを見つつそう思っていると、抱き上げたままだったエステルちゃんと目が合う。
「ちょっと……みんなの前だと、私も恥ずかしいわよ……」
そう言い、顔が赤くなっているエステルちゃんは、そのまま胸に顔を埋めていく。
「ごっごめんね、気づかなくて……」
そっとエステルちゃんを地面におろす。エステルちゃんは地面に足が付いた後も、抱き着いたままだった。
「ちょっとエステルずるいぞ!」
カティアちゃんを背後から捕まえたまま、そう言ってくるパトリシアちゃん。
「ほっほら! エステルの方に行くっスよ! 自分は本当にアキラ姉とはなにも……してないっスから……」
エステルちゃんの方へ行かせようとしたカティアちゃんが、何かを思い出したかのように声が徐々に小さくなっていった。
それを聞いたエステルちゃんが抱き着くのやめ、カティアちゃんの方へ向かっていった。
「カティア……私はすぐ寝ちゃってあまり覚えてないんだけど、あの後何かしてたでしょ? 声の感じで嘘ついてるの分かるわよ……」
詰め寄っていくエステルちゃん。笑っていたが威圧感がここまで伝わってきた。
「いや、エステル……アキラ姉! 自分は変な事は何もしてないっスよね!」
カティアちゃんが助けを求めてくると同時にエステルちゃんがこちらに見つめてくる。
「本当なの……アキラ?」
ジト目のエステルちゃんに気圧される。
これはどうするべきか……いやでも変な事はしてないよな? おじさんは無実だ!
「ちょっアキラ姉! 言っちゃ……」
覚悟を決め話そうとすると、カティアちゃんが止めようとしてくる。
「はいっちょっとだけ耳とかシッポ触らせてもらったくらいです……」
それを聞いたエステルちゃんは目を見開きカティアちゃんを見る。パトリシアちゃんも驚いた様子だった。
止めようとしたカティアちゃんは動きを止めた。固まっているカティアちゃんを見ていると徐々に顔が真っ赤になっていく。
「あうぅぅぅ……」
言葉にならない声を出した後、カティアちゃんは両手を顔に当てて隠していた。
カティアちゃんのネコ耳はペタンとなり、シッポは自分の足に巻き付けていた。
あれ? なんかまずい感じですか? おじさんは何かまずい事いいましたか?
みんな動けずにいると、先ほどからミケと一緒に、こちらの様子を微笑ましく見ていたアリスちゃんが駆け寄ってくる。
「アキラおねえちゃん。獣人さんのお耳はね、家族とか大事な人とかにしか触らせないんだよ?」
笑顔が眩しいアリスちゃんが伝えてくる。
おっと……これは、お風呂屋さんの再来ですかね?
「アキラ君は乙女心が分からないからしょうがないよっ」
いつの間にか近くに居たミケに伝えられる。
「いや……分からないわけじゃ……」
いやね? 文化とか前と違うじゃない? ルールとか知らないからしょうがないよね? まぁ中身おじさんだしね?
言い訳をしようしたが、ミケが続けて話す。
「でもっ! アキラ君はミケの大事な人だから、何時でも耳触ってもいいんだよっ」
ミケはそう言うと耳をこちらの顔に近づけて来た。
ミケさん、この状況でそれはまずいんじゃないんですかね? ほら、二人とも盛り上がってきてるよ? ここは……あれだな。
「アリスちゃん! ギルドまで競争しようか! 勝ったらお菓子買ってあげるね!」
ギルドへ向かって走り出す。
俺は逃げることにした。アリスちゃんはワーイと言って走り出す俺の後を追いかけて来た。ついでにミケも。
後ろの方で騒いでいる二人が居るが気にせず走っていく。チラっと背後に目をやると、カティアちゃんは先ほどと変わらぬ様子で両手を顔にやっていた。
まぁほら、勝てない時は逃げないとね?
そんな事を心に思いながら走っていく。ギルドへは俺が一番に着いたが、二人には後で逃げるのに付き合って貰ったお礼もかねて、お菓子を買ってあげる事にした。
ギルドの中に入り掲示板の前に行くと、そこにはシエナちゃんが依頼を探しているようだった。
「あっ! アキラさんおはようございます! 今丁度良さそうな依頼が合ったんですよ」
元気よく挨拶してくるシエナちゃんに癒されながら、張り出されている依頼を確認する。
「シエナちゃんおはよう。依頼ってどんなの? え? これ……?」
シエナちゃんが見つけた依頼を見て固まる。
「はいっ! ワイルドベアを狩るんですよ! パトリシアちゃんも喜んでくれますよ!」
固まる俺を余所に元気よく告げてくれるシエナちゃん。
「ささっ! 準備しましょう」
シエナちゃんに手を引かれ受付に向かっていった。
あれ? ワイルドな熊さんって結構危なくない? いきなり熊ってどうなの?
おじさんが狩られちゃいそうだよ……。




