48 自然に乗って行く②
「いや……だからな、いきなりワイルドベアはちょっとな……」
意気揚々とシエナちゃんが依頼を受けようしたところ、ギルドマスターのシュルツさんが割って入ってきたところだ。
「シュルツさん大丈夫ですよ! パトリシアちゃんもいますし!」
シエナちゃんの勢いに圧倒されるシュルツさん。
そんな圧倒されている我がギルドマスターがこちらに目をやってくる。
「うーん……アキラはともかく、アリスちゃんやミケが心配だからな。もう少し簡単なのから始めたらどうだ?」
心配な様子で伝えてくるシュルツさん。
「うぅ……でもぉっ!」
シエナちゃんはそれでも、ワイルドベアを倒したい様子だ。
いきなり熊さんはちょっと敷居たかいよシエナちゃん。熊ってあの熊さんでしょ? 黄色いヤツじゃないんでしょ? それにミケやアリスちゃんも居るし、あんまり危ない事はって……なんか随分楽しそうだな。
二人が話し合っている横で、サブリーさんとミケ、アリスちゃんが楽しそうに話している。
「ミケちゃんはぁ、こうゆうのも似合うと思いますよぉ~。気に入ったならあげますよぉ」
サブリーさんがミケのケープに、可愛らしい動物の姿が描かれているワッペンを着けていた。
「わぁ! 可愛いキツネさん!」
「ほんとだっ! ありがとうサブリーちゃん!」
ミケとアリスちゃんは楽し気にはしゃいでいた。
ミケもいつの間にか仲良くなってたんだね。結構ミケもみんなと馴染んで来て良かったよ。
三人の様子を見ていると心が休まる気がした。そうしていると、先ほど置いてきたパトリシアちゃんがやってきたようだ。
「ちょっとアキラぁ……置いてくのはひどいぞぉ。ってシエナとギルマスなにしてんの?」
少しふてくされた様子のパトリシアちゃんが伝えてくる。
「ああ、パトリシアか。シエナがどうしてもワイルドベアをこのPTで倒したいそうだぞ? どう思う?」
そう伝えたシュルツさんの表情は真剣だった。
「うーん……ちょっと無理かな。あたしがみんなを……守り切れるか……」
考えた様子で呟くパトリシアちゃん。
それを聞いたシュルツさんは最初驚いた様子だったが、徐々に苦笑いに代わっていった。
「パトリシアは相変わらずだが……アキラと出会ってちょっと変わったか?」
「ななっ! なに言ってるんだギルマス! あたしはそんなことっ……」
顔赤くして焦った様子で返事をするパトリシアちゃん。
その様子を見たシュルツさんは、まぁいいやっと言って違う依頼が書かれた紙を持ってくる。
「最初はこのくらいでやってみたらどうだ? シエナもパトリシアが無理そうだって言ってんだから、これで我慢してくれよ?」
腑に落ちない様子でいたシエナちゃんもパトリシアちゃんが無理と言った事によって諦めたようだ。
なんとかまとめてくれたのねシュルツさん。さすがギルドマスター、こうゆう時は頼もしいね! さてさて、熊さんじゃない別の奴ってなんだろうな……? 見た感じそんな危険そうな奴じゃなさそうだな。
紙に書かれた依頼に目を通すと、野生動物やそこまで危険ではない魔物の名前が書かれている。
「セルバ? これってどんな魔物なんですか?」
近くに居たシュルツさんに聞いた。
「ああ、それはな……」
シュルツさんからの話を聞いた限りだと、大きな鹿っぽい生き物らしい。いちよう魔物との事。
鹿かぁ……あいつらでかい奴結構でかいから、おじさんちょっと怖いな。でも、パトリシアちゃんも居るし! 初心者向けっぽいから大丈夫っしょ!
PTと言う事もあり、その依頼を受ける事にした。
「みんな元気だねぇ……」
依頼を受けた後、街から出発していったが、途中から何故か森の中を進みながら行く事に。途中途中に収集品やら何やらがあるようで、夕食の為の素材集めもついでに行っていた。
「ほらほらぁ、アキラがんばれぇ」
パトリシアちゃんに背中を押され歩いて行く。
「いつもすまないねぇ、パトリシアちゃん」
体力的には問題はなかったが、精神的に慣れない森の中を進んでいた為少し疲れていた。
「もぉ~アキラなんだか、おじいちゃんみたいだぞぉ」
そう言ったパトリシアちゃんの方に顔を向けると、可愛らしい笑顔を向けて来た。
相変わらず可愛いねパトリシアちゃん。普段はわりと男前な感じなのにたまに見せるあどけない表情がたまりませんわ。
「ありがとうねぇ。パトリシアちゃんの可愛らしい笑顔みたら、なんだか頑張れる気がするよ」
パトリシアちゃんにお礼を言った後、また歩き出していく。
「なっ! そっそんな事、急に言ったらだっだめだぞっ!」
立ち止まり、そう言ってくるパトリシアちゃん。顔が赤くなっている気がした。
「ごめんごめん。ほら、みんなに追いついてきたよ」
少し先を歩いている、アリスちゃん達の方へ向かっていった。
駄目って言ってたけど、笑顔だったから大丈夫っしょ。さてと、みんなに追いついたけど、なんでみんなかがんでるんだ? おや? あれは……。
アリスちゃん達に追いつくと、木の陰に隠れ、前方の様子を伺っていた。
「みんなどうし……」
「シッ! アキラおねえちゃん静かに……」
近づいてアリスちゃんに声をかけようとすると、制止された。
不思議に思っていると、少し先にどうやら何かが居るようだ。
「アキラ……あれがセルバだよ」
気が付くと隣にパトリシアちゃんが屈んでいた。
おお、あれがセルバって奴か。本当に鹿みたいな奴だけど……結構でかくない? あ、パトリシアちゃんの生足やばいな。
屈んでいるパトリシアちゃんの生足とセルバを交互に見ていると、シエナちゃんが弓を構える。
「1匹で居ますんで……これなら……っ!」
一瞬、弓矢が光り包まれた。弓矢は音もなく凄い速さで飛んでいく。
セルバが気づいた時には弓矢はもう心臓を貫いていた。声なき声を上げながら横たわっていく。
「おぉ……すげぇな。あれも魔法なの? でも、すごいね。このサイズを一発で……」
横たわっているセルバに近づいていくと、100キロは超えて居そうな個体だった。
「そうですね、これも風魔法の一種ですかね? 私はまだまだなんで、自在に矢を操ったりとかは出来ませんが……消音や速くするくらいなら。それに……このセルバは小さい方でしたからね。もっと大きいと流石に矢1本では……」
そう言いながら、慣れた手つきでセルバの処理を始めるシエナちゃん。アリスちゃんも手伝っている。
え? これより大きいの? 大型バイクよりでかい気がするけど? え? 自動車くらいのあるの? そんな鹿怖すぎるんだけど。おじさんお寺に居る鹿くらいじゃないとちょっとキツイよ……。
呆気にとられながらも作業を手伝っていると、今いる場所より少し奥をパトリシアちゃんが警戒していた。
ミケもパトリシアちゃんの近くで様子を伺っているようだ。
「……どうしたの? なんかまだいる?」
静かに二人に近づき、小声で伝える。
「アキラも見て。すごいぞアレは……」
パトリシアちゃんが静かに答えると、顔をアレの方に向けた。
パトリシアちゃんの向いた方向を見ると、そこには沢山のセルバが居た。どうやら群れのようだ。その中でも際立って大きい個体が目に入った。
「あれはちょっと……大きすぎない?」
先ほどのセルバに似たり寄ったりのサイズが群れをなしていたが、その奥に体高が2メートルを言うに超えている個体がいる。
あれはちょっと無理なんじゃ……。
そう思っているとパトリシアちゃんが武器を出し、戦闘態勢に入って行く。後ろの方で処理をしていたシエナちゃん達も一度手を止め、臨戦態勢に移行しはじめた。
「ふっふっふ……久しぶりに良い相手だぞ」
パトリシアちゃんの握る槍に力が入る。
これはどうやら戦うようですね。俺もがんば……いや! あんなの怖いだろ!
ビビっている俺を余所に、みんな準備万端なようだ。
せめて怪我しないように……がんばろう……。
2018/04/06
多忙と体調が悪く更新が止まってしまいました。完結はさせたいと思っています。更新が遅いかもしれませんが、読んで頂けると嬉しいです。




