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「ああ、もうっ。辛気臭ぇーなっ。やっぱ反省はもういいから。もうテメェは描きたいもん何でも描いて、彫りたいもんを何でも彫ってな」
「え? いいの?」
「どーせ、溜まってたガイドの仕事が終ったばっかで疲れてんだろ? 顔に出てっぞ」
「まじでか」
「ふん。バレねーとでも思ったのか。オレがテメェと何周期一緒にいると思ってんだ。まー、しばらくオレが身の回りのことゼンブやってやんよ。だから気にせず今週期はゆっくり自分のやりたいことでもしてろ」
「ありがとう」
「そういや話は変わっけど、さっき殴ったときテメェ、動きがいつもより鈍かったよな。大丈夫か? もし身体が固くなってんなら、今晩あたりにオレがマッサージでもしてやっけど。いつものやつ。どうする?」
「あ、うん。ありがとう。お願いしようかな」
「しゃーねーなー。覚悟しとけ。くくっ、いつもより滅茶苦茶、痛くしてやるからな」
二カッと笑うメイメイに俺はため息するしかない。
「いやあ、ホント。メイメイには感謝してるよ。っていうか、俺。さっきからメイメイにありがとうしか言ってないし」
「はん。テメェみてーなクズに感謝されても全然嬉しくねーけどな。……あっ、そうだ。今日の晩御飯、トーノは何がいい? 昼から食材買いに街に行くからよ。今のうちにリクエスト聞いといてやるわ。ちなみに今日は牛肉が特売だから、それ使う料理でなるだけ頼むぜ。家計が助かる」
「……………」
「……んだよ。急に黙って」
「いや。なんかこう、メイメイって男をだめにする素質あるよな」
「ア? どーゆー意味だ?」
「良いお嫁さんになるってことだよ」
俺の言葉にメイメイは手に持っていたハタキを床に落とす。
それから、一、二、の三秒のフリーズ後、彼女はオーバーヒートして俺の胸倉を引っ掴んだ。
「なっ、殴られてーのかっ! 殴られてーんだなっ! ああよし、殴ってやっから歯ァくいしばれっ! そんでオレに殴られて呼吸を止めちまえ、この空気ドロボーがっ!」
「まあまあ。まあまあまあ」
馬をいなすようにメイメイをなだめていると、床に座っていたルイルイがいつの間にかカウンターの上にのっていた。そして、そのまま俺とメイメイの間に割り込んでくる。
喧嘩はやめろ、ということだろうか。
それとも自分も混ぜて、ということだろうか。
おそらく後者だろうな。俺とメイメイは互いに見つめ合ってため息を吐く。メイメイが俺の胸倉を掴んでいた手をぱっと放した。




