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ダンジョンガイドさんの仮想現実生活ログ  作者: まいなす
『第1話 ダンジョンガイドさんは迷った』
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5


 もうすぐ昼食時といったところ。

 雑貨屋『みちしるべ』の会計カウンター奥で店主である俺は暇人と化していた。


 いつもなら、まだ閑古鳥の鳴く時間帯ではない。しかし、今日はたまたま午前中の早い時間に【ド・ルス】から馴染みの客が数人どっと来て日用雑貨を買っていってしまったのだ。だから今日の来客はもういないような気がする。


 俺の足元の床に座っているルイルイは、俺がプレゼントしたスケッチッブックに何やら数字の羅列を楽しそうに書き込んでいる。スケブに絵を描かないという発想がステキだ。ルイルイの頭を撫でてあげると、彼女は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。


 ついで、目線を店内に戻す。

 コンビニを思わせる整然と並んだ棚には仮想現実内で生活していくのに必要な日用雑貨がきっちりと五十音順に並んでいた。また、日用雑貨にまぎれて、俺が彫った彫刻や描いた絵画が綺麗に飾られている。そして、窓際には日替わりで数輪の花が瑞々しい彩色を与えている――――。


 それら店内のレイアウトは、それを一手に任されているメイメイのきっちりした性格、美的センス、さらには女の子らしさが如実に表されていた。っていうか、もういっそ店長の座に、座ってほしいくらい。


 そのメイメイであるが、今はいつのも【拳士】装備の上に白エプロンを着用し、ハタキでもってパタパタと店内を掃除していた。嫌な顔一つせず、上から下へ、隅から隅まで。こんなふうに毎日、客がいない空いた時間には欠かさず彼女がひとしきり掃除してくれているので、店内にはほこりなどはまったくない。


「手伝おうかー?」


「……いい。オレが好きでやってんだ」


 いつものやり取りを行う。彼女はそう言ってるが、俺はマゼンタさんからルイルイがリアルで、ほこりアレルギーだということを聞いている。


「いつも、ありがとな。まったく、ルイルイが羨ましいよ。こんなに素敵な妹がいてさ」


 こっちを見上げたルイルイはきょとんとした顔で首を傾げる。


「ばっ。だから好きでやってるだけだっつってんだろっ。ミドリムシの分際でヘンなこと言ってんじゃねーよっ」


 一方でメイメイは照れたのか、こっちに背中を向けてハタキの速度を三倍にした。

 可愛い。


 俄然、そんな彼女の背中に美しさを感じたので、俺は自分のスケブを取り出して鉛筆を構える。


「メイメイ、あのさー」


「んだよクソボケ」


「描いてもいいか?」


 ハタキの音が止まった。

 メイメイが振り返ってこっちを見る。彼女の頬は心なしか少し赤い。


「やめろ。オレなんか描いても仕方ねえだろ。……恥ずいし。んなことよりっ、テメェは今朝のことでも反省してろやドヘンタイ野郎っ」


「はい」


 今朝のことというのは、俺がルイルイにちゅーしちゃったことを指しているのだろう。

 今度からはルイルイが顔を近づけてきた時はダンジョン潜ってるとき並みに緊張しなければなるまい。なんせルイルイは心が無垢すぎるせいで、PvP専門の俺でさえ初動がまったく読めないのだ。もはやランクA+相当の不意打ちスキルでも発動してるんじゃないかってくらいである。


 くっそう。油断したなあ。

 それに、ルイルイには悪いことしたなあ。

 こういう場合は、年上であるこっちが『そういうことはしちゃいけません』と、やられる前にちゃんと制止して諭してあげなきゃいけなかった。

 こんな可愛い女子中学生に黒歴史作らせて、何やってんだ俺。

 しゅん。


 カウンターに突っ伏した俺の頭を、メイメイが近づいてきてパシンと叩く。


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