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「ふん、それより本当にヘンなことしてないでしょうね。……えっちなこととか」
「ねーよ」
「どうだか」
「まあ、寝顔は可愛かったしずっと眺めてたけどさ」
「…………なっ!? な、なによ、……もう。………………えっちなことしてんじゃん。ぶっころすわよバカ」
「え、えー。うそー。えっちの敷居が低すぎじゃないか、それ。男の立場から言わせてもらうけど、そんなままだといつまでたっても処女のままだぜ。ほら、えっちの基準はせめて胸を揉むとか、ちゅーするとかさ。そんな感じで貞操観念の高さ調節した方がよくない?」
「はっ! 大きなお世話よっ! だいたいあんたがっ――――」
ぐー。
「っ!?」
ははあん。
「おや? おやおやおや。今なにか聞こえたような。気のせいかな」
「…………くっ、アホっ」
ハーフヴァンプ少女が放り投げてきた小石を避ける。
それからお腹を必死で押さえて腹の虫を殺そうとしている彼女をしばらく眺めて満足した俺は、彼女に【レムバス】を放り投げてやる。しかし、悲しいかな。【レムバス】は放り投げ返されてしまう。
「見栄を張るなよ。お腹が減ってるんだろう? たとえそのぷに腹に脂肪がつこうがつくまいが、仮想現実であっても生理現象からは逃げられねえぞ。そら、大人しく食べたほうがいい。美味いんだぜ、わりと。クロワッサン生地みたいで」
「ぷに腹って言うなっ! 太ってないもんっ! だいたい何よそれっ。カロリー多すぎでしょつ! そんなもの食べるもんですかっ!」
ほう。食料アイテムのカロリー数を見極めるか。そういえば、このアマはランクEの【アイテム鑑定】スキルを持ってたなー。確かにその通りで、【レムバス】一つにつき一日分のカロリーを摂取できた。この仮想世界では、日々の活動で消費されなかった摂取カロリーはその数値分、確実に脂肪という形でキャラに反映されるので、現実よりも残酷ではある。まあ、裏を返せば、運動すりゃ確実に痩せられるんだけど。
しばらく【レムバス】のキャッチボールが俺とハーフバンプ少女の間で行われる。
そして――――。
ぐー。
腹筋で必死に腹の虫と戦っていたようだけどついに陥落か。敗北の音が聞こえる。それはもちろん真っ赤になっているハーフヴァンプ少女のヘソのあたりから出ていた。




