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「っってーなッ! 何しやがる!」
「なっ、ななななななななななななっ、なぁにしやがるとはこっちの台詞じゃないっ! あ、あっ、ああああああっ、あんたあんたあんたーッ! いっ、いったいあたしに何するつもりなのよぉっ! ななな、何をどこに入れるのよぉっ! このヘンタイッ! バカッ! 気持ち悪いっ! いやっ! 反吐が出るわっ! うぅ、ううぅぅ、このゲスやろぉっ!」
とかなんとか。なんなんだ、いったい。このヒス女は。
頭から湯気がでそうなほど朱に染まりながら大暴れするハーフヴァンプ少女。さすがは腐っても鯛というか、手枷で捕囚状態にあっても結構な腕力である。か弱い俺はたまらず彼女の腹上から飛びのいて距離をとった。
「くっ、」
手枷をつけたまま、荒い息で器用に跳ね起きたハーフヴァンプ少女は俺に対峙して睨む。が、その直後。自分がどういう破廉恥な格好をしていたのかを、気を利かせて視線を明後日の方向へ向けてあげた俺によって思い出せたのか、「ひゃぁんっ」と可愛い声をあげて腰を落とす。必死で前を隠そうとするが手枷がついてるのでうまくいかず、最終的に膝を抱えて座り込む格好に落ち着いた。それから嗚咽に紛れて何やらブツブツとツイートし始めるのである。
「ひうっ、…………すうぅ、うう……ぅ、……すぅ」
「……え、なんだって?」
仕方がないので聴覚スキル(ランクA)を発動。
「――――こ、ころすぅ。ぶっころしてやるぅ。ぜったい、ころしてやるぅ。確実にぃ、いたぶってからぁ、去勢してぇ、ころしてやるぅ。あたしを、こんな、こんな目にぃ、した報いをぉうう、ぅ、」
「いやいや、おいおい。こえーな。こえーよ。ついさっきまでプレイヤーキルは趣味じゃないとか格好いいこと言って舐めプしてなかったっけ、あんた」
キッと睨まれる。
「なんだよ」
「…………ふぇ、……ふぐっ、うっ、うわあああああああああああああんっ!」
うわ。
とうとう泣き出した。
女の子を泣かせてしまったという貴重な経験に感慨深いものを覚えた。
じゃなくって。
「まあまあまあまあ。ほら。人生、いろんなことあるって。浮くこともあれば、沈むこともまたしかり。いやほんと、マジで」
放物線を描くように涙を両目から放出しているハーフヴァンプ少女を適当にあやす。




