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「落ち着けテメエらッ! どいつもこいつも仕方ねえやつらめ、順番だぁッ! まず俺がこのメスとそっちのガキどもを味見してからまわしてやるぜぇッ、へへっ」
一番の仕方ねえ人間はお前だとでも突っ込んでほしいのだろうか。なんだか形容したくねえエグい表情になったゴッドヒルトさんは、レザーアーマーの腰ベルトに左手をかけ、そして右手はハーフヴァンプ少女の胸部に伸ばした。
……ああ、もー。
ああもーっ!
できれば穏便に済ませたかったのだが、これ以上傍観していると寝覚めが悪くなりそうな展開だ。ため息を吐いた俺は念のために外套のフードを目深に被って【インビジブル・ヴェール】を解除した。
「はい、そこまでー。こっからは俺が引き継ぐぞー。気はあまり乗らないが」
「あーんっ? …………なッ、テメ何もンだッ! っていうか、どっから現れたッ!?」
向こうからしたら急に出現したように見えるだろう俺に、ゴッドヒルトさん含め汚いおっさんズの面々はハトが豆鉄砲を食らったような顔になる。まだ戦闘状態にはなっていない。そうなると、今しばらく話し合いの余地はあるな。期待薄だけど。
「まあまあまあ。俺がどっから現れようが、この際、置いておこうじゃないか。そんなことよりも実りのある話をしようぜ。かくいう俺は、そっちの二人の知り合いなんだよ。そこで、あんたらに提案がある。二人とも今すぐに開放してくれ。あ、できればこの子もついでに。頼むよ」
俺は向こうにいるメイメイとルイルイ、それから地面で伸びているハーフヴァンプ少女を指した。ゴッドヒルトさんは俺の力量を値踏みするように眺めた後、大いに噴き出す。




