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セレスティア人の手記  作者: 五月雨
最後の日 ~????年~
208/210

あり得た未来。

 あり得た未来。



「まさか、このあたしが地上復興メンバーの一員になれるなんてなあ」


「ねー。わたしもびっくりだよ~」


「最初、鉢植えよく引っくり返してたもんな。こいつ不器用だから絶対クビんなると思ってた」


「ひどいよ~。アメリアちゃんだって毎日遅刻してたじゃない~」


「そこは面倒かけたな。自分で勝ちとれりゃあ、もっとよかったんだが……」


「うふふふふふ。優しい旦那さま、だもんね~」


「うっせ」


「あ。その優しい旦那様のお出ましだよ」


「…何の話です?」


「パシが貧血のことをチクったお蔭で、アメリアもここまでやれたってさ」


「ああ……でも気持ちとしては同じですよ。僕自身、よくここまで来られたものだと」


「だよなー。俺達、特別な才能とか何もないもんな」


「ええ。普通の僕達には、お手伝いできただけでも光栄です。復興の立役者みたいに言われると、こそばゆい感じがします」


「いやオメーは違うだろ。迎えに行かねーと、いつまでも人助けばっかしてるくせに。あたしとルカをほったらかしでさ」


「いや、それは……」


「ないと言えんのか?ん?」


「……すみません。反省してます」


「ほれみろ。言ったとおりじゃねえか」


「あんまり旦那さんを苛めちゃダメだよ?アメリアちゃんだって他人のこと言えないんだからさ~」


「んだよお花畑女。なんか文句でもあんのか?」


「ここにいるみんな、同じって話。一杯いーっぱい人助けして、ここまで来たでしょ?そろそろ自分達のこと優先したいって思うけど、いきなり全部やめるわけにもいかないし。だから仕事と私のことを両立させてくれた、イスモくんはすごいなぁって」


「結局それかよ……何十年も、よく飽きねえな」


「俺はハニー一筋だぜ。仕事だってハニーを喜ばせるためにやってんだ」


「でもよ。さすがに潮時だよな」


「ああ……」


「島から連れてきたガキどもも、もういい歳だ」


「老兵は去るのみ、ですね。あの人達は、老いることを知らないようですけど……」



 あり得た未来。



「どうだ。準備のほうは」


「はっ。抜かりなく」


「…そうか。一度助けられたくらいで、いつまでものさばらせておくわけにはいかん。それでは神話のミレニアムやドーア帝国と同じではないか」


「地上は我々のものです。神々には引っ込んでいてもらわないと」


「大人しく篭絡されておればよいものを……」


「女のほうは食い意地が張っておりまして、誘き寄せるのは簡単なのですが……手綱を握っているらしい男のほうは警戒心が異常でして」


「女も効かん、か。既に女がいるならおかしくはない」


「いろいろ調べてはいますが、弱点らしいものは……」


「まったくもって忌々しい。あやつらがいる限り、あの老害どもを排除できぬではないか。何の力もないくせに……神に尻尾を振った駄犬どもめが」


「ですが、準備は整いつつあります」


「そうだったな。これから、ますますマナが必要になる。次の五か年計画へ入る前に、必ず邪魔者を始末しなくては」


「マナ工学が地球の技術ではないなどと、妄想逞しい連中には困ったものです」


「古代宇宙飛行士説というのだってな?ドーア帝国はおろか、ミレニアムやその前の神話時代にもあったそうだ。その件があるからこそ、私は神話時代やミレニアムの実在を疑わない。何とも皮肉な話だがね」


《……事実だよ》


「なっ」


「誰だ?」


《法創術は、人類が生み出した技術ではない。高エネルギー加速器の実験をきっかけに、得体の知れない存在から与えられたものだ。それも置き土産のような形で、顔も見せられないまま一方的にな》


「エルフの末裔か!どこだ!…け、警備の者は何をしていた!?」


《しっかり働いているさ。私は不法侵入などしていない……パシ達が我々に尻尾を振る駄犬なら、お前達は何だというのだ。異星人の差し出す毒入りの餌で簡単につられてしまう、欲深なハイエナか?》


「………っ!」


《実行に移す前でよかったな。もしやっていたら……命だけでは済まないところだ》



 あり得た未来。



「…そっか。僕は……」


「いや、私達は。親になるのだな……」


「…どうしたの?」


「アルフの真似。こういう感じのほうがいいか?」


「……アルフさんのほうでお願いします」



 あり得た未来。



「ここが世界の果てさ。見えない檻に囲まれた、行き場のない俺達の世界……」


「どうせ、みんな死ぬんだろ。働いたって意味ないじゃないか」


「国など作っている余裕はもうないのだ。残された時間は僅か」


「この子には、あと十年しかないと?たった今、生まれたばかりなのに?」


「神でも何でもいい!あいつらを助けてくれ!家族を救えるのなら、俺は、俺は……!」


「おかえりなさい」


「ああ……」


「お疲れですね」


「現実が見えないほど愚か、とは思いたくないな」


「また、そんなこと……」


「やめましょう、不毛な争いは」


「この世でたった二人、生き残ってしまった化物同士なんですもの」


「……どういうことですか」


「化物って、どういうことですか?あなた達の姿が変わらないことと、何か関係があるんですか」


「聞いていたのか……」


「もう隠し立てしても仕方ないでしょう」


「……そうだな。実は、私達は……」



 あり得た未来。



「どうして!?神様なら奇蹟を起こせるんでしょう!?私達の子供を助けて!」


「……できればそうしてやりたいが……もう死んでしまっている。あと少し早ければ、方法もあったのだが」


「自分達の子供じゃないから?いいえ……化物の子じゃないから?そうよ、あなた達は化物!自分でそう言ってたじゃない!」


「落ち着いて。確かに私達は普通の人間じゃない。でもそういうことじゃ」


「殺してやる。殺してやる!うちの子と一緒に死ねええぇえ!」


「何を……やめろっ!」


「きゃあぁあああ!」


「う……」


「いやあああああ!殺される!みんな化物に殺されるっ!」


「どうした!」


「リゼ様!?…あ、アト様これは」


「……黙れよ」


「え……」


「…黙れ。みんな、勝手なことばかり……!」

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