あり得た未来。
あり得た未来。
「まさか、このあたしが地上復興メンバーの一員になれるなんてなあ」
「ねー。わたしもびっくりだよ~」
「最初、鉢植えよく引っくり返してたもんな。こいつ不器用だから絶対クビんなると思ってた」
「ひどいよ~。アメリアちゃんだって毎日遅刻してたじゃない~」
「そこは面倒かけたな。自分で勝ちとれりゃあ、もっとよかったんだが……」
「うふふふふふ。優しい旦那さま、だもんね~」
「うっせ」
「あ。その優しい旦那様のお出ましだよ」
「…何の話です?」
「パシが貧血のことをチクったお蔭で、アメリアもここまでやれたってさ」
「ああ……でも気持ちとしては同じですよ。僕自身、よくここまで来られたものだと」
「だよなー。俺達、特別な才能とか何もないもんな」
「ええ。普通の僕達には、お手伝いできただけでも光栄です。復興の立役者みたいに言われると、こそばゆい感じがします」
「いやオメーは違うだろ。迎えに行かねーと、いつまでも人助けばっかしてるくせに。あたしとルカをほったらかしでさ」
「いや、それは……」
「ないと言えんのか?ん?」
「……すみません。反省してます」
「ほれみろ。言ったとおりじゃねえか」
「あんまり旦那さんを苛めちゃダメだよ?アメリアちゃんだって他人のこと言えないんだからさ~」
「んだよお花畑女。なんか文句でもあんのか?」
「ここにいるみんな、同じって話。一杯いーっぱい人助けして、ここまで来たでしょ?そろそろ自分達のこと優先したいって思うけど、いきなり全部やめるわけにもいかないし。だから仕事と私のことを両立させてくれた、イスモくんはすごいなぁって」
「結局それかよ……何十年も、よく飽きねえな」
「俺はハニー一筋だぜ。仕事だってハニーを喜ばせるためにやってんだ」
「でもよ。さすがに潮時だよな」
「ああ……」
「島から連れてきたガキどもも、もういい歳だ」
「老兵は去るのみ、ですね。あの人達は、老いることを知らないようですけど……」
あり得た未来。
「どうだ。準備のほうは」
「はっ。抜かりなく」
「…そうか。一度助けられたくらいで、いつまでものさばらせておくわけにはいかん。それでは神話のミレニアムやドーア帝国と同じではないか」
「地上は我々のものです。神々には引っ込んでいてもらわないと」
「大人しく篭絡されておればよいものを……」
「女のほうは食い意地が張っておりまして、誘き寄せるのは簡単なのですが……手綱を握っているらしい男のほうは警戒心が異常でして」
「女も効かん、か。既に女がいるならおかしくはない」
「いろいろ調べてはいますが、弱点らしいものは……」
「まったくもって忌々しい。あやつらがいる限り、あの老害どもを排除できぬではないか。何の力もないくせに……神に尻尾を振った駄犬どもめが」
「ですが、準備は整いつつあります」
「そうだったな。これから、ますますマナが必要になる。次の五か年計画へ入る前に、必ず邪魔者を始末しなくては」
「マナ工学が地球の技術ではないなどと、妄想逞しい連中には困ったものです」
「古代宇宙飛行士説というのだってな?ドーア帝国はおろか、ミレニアムやその前の神話時代にもあったそうだ。その件があるからこそ、私は神話時代やミレニアムの実在を疑わない。何とも皮肉な話だがね」
《……事実だよ》
「なっ」
「誰だ?」
《法創術は、人類が生み出した技術ではない。高エネルギー加速器の実験をきっかけに、得体の知れない存在から与えられたものだ。それも置き土産のような形で、顔も見せられないまま一方的にな》
「エルフの末裔か!どこだ!…け、警備の者は何をしていた!?」
《しっかり働いているさ。私は不法侵入などしていない……パシ達が我々に尻尾を振る駄犬なら、お前達は何だというのだ。異星人の差し出す毒入りの餌で簡単につられてしまう、欲深なハイエナか?》
「………っ!」
《実行に移す前でよかったな。もしやっていたら……命だけでは済まないところだ》
あり得た未来。
「…そっか。僕は……」
「いや、私達は。親になるのだな……」
「…どうしたの?」
「アルフの真似。こういう感じのほうがいいか?」
「……アルフさんのほうでお願いします」
あり得た未来。
「ここが世界の果てさ。見えない檻に囲まれた、行き場のない俺達の世界……」
「どうせ、みんな死ぬんだろ。働いたって意味ないじゃないか」
「国など作っている余裕はもうないのだ。残された時間は僅か」
「この子には、あと十年しかないと?たった今、生まれたばかりなのに?」
「神でも何でもいい!あいつらを助けてくれ!家族を救えるのなら、俺は、俺は……!」
「おかえりなさい」
「ああ……」
「お疲れですね」
「現実が見えないほど愚か、とは思いたくないな」
「また、そんなこと……」
「やめましょう、不毛な争いは」
「この世でたった二人、生き残ってしまった化物同士なんですもの」
「……どういうことですか」
「化物って、どういうことですか?あなた達の姿が変わらないことと、何か関係があるんですか」
「聞いていたのか……」
「もう隠し立てしても仕方ないでしょう」
「……そうだな。実は、私達は……」
あり得た未来。
「どうして!?神様なら奇蹟を起こせるんでしょう!?私達の子供を助けて!」
「……できればそうしてやりたいが……もう死んでしまっている。あと少し早ければ、方法もあったのだが」
「自分達の子供じゃないから?いいえ……化物の子じゃないから?そうよ、あなた達は化物!自分でそう言ってたじゃない!」
「落ち着いて。確かに私達は普通の人間じゃない。でもそういうことじゃ」
「殺してやる。殺してやる!うちの子と一緒に死ねええぇえ!」
「何を……やめろっ!」
「きゃあぁあああ!」
「う……」
「いやあああああ!殺される!みんな化物に殺されるっ!」
「どうした!」
「リゼ様!?…あ、アト様これは」
「……黙れよ」
「え……」
「…黙れ。みんな、勝手なことばかり……!」




