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セレスティア人の手記  作者: 五月雨
最後の日 ~????年~
171/210

拍子抜けしてしまった若者達。

 拍子抜けしてしまった若者達。無理はない、挨拶のほとんどが教え子達の近況確認だったのだから。マルヨからも夕食まで自由行動と告げられ、目新しさに釣られただけの参加者達は途方に暮れた。何かの参考にしようなんて目的は元々ないのだ。


 そういう子らのうち、ミーハーな女子はアメリアにまとわりついている。レフィア派の子達も探しにゆくか逡巡したが、結局手近な確実を選んだらしい。


 一方の男子は手持ち無沙汰。ノアトゥン復興会議はほとんどが高齢者、マルヨとアメリアは売約済み。エイラはこの期に及んで船から降りてこない。一部はユホと旧交を温め、復興会議メンバーに親戚や家族の知り合いがいる者はそちらと話したり。そういった繋がりが何もない子は……船で知り合った友人と屯するしかない。


 そんな中で、明らかに周囲と違う行動をとる子達が二人。言うまでもないことだが、ヘタとアクだ。ずんずん進むヘタが止めるアクを引きずる形で一直線。


「落ち着けって。飯時の前は交渉に不向きって言ったろ。多かれ少なかれ、無自覚でも大抵の人は気が立ってるんだ。夕食の後に訪ねるのは不作法だから、今日はもう無理。明日の午前、朝食が済んでからすぐが一番いい。出発まで時間があるし、相手の仕事を中断させることにもならない。話しあって、そう決めただろ」


「そんなの行ってみなけりゃ分からないじゃない。まだ1時間はあるんだから、立ち止まらずにレッツゴー!」


「行ってダメだったらお終いなんだよ!大体ヘタ、アトジマさんとエディルさんがどこにいるか知ってるの?」


 一瞬立ち止まり、周囲に目を走らせる。何やら作業している人を見つけ、アクの拘束が緩んだ隙に駆け寄った。


「すみませーん!ちょっと訊きたいんですけど!アトジマさんとエディルさんって、どこにいるか知ってます?」


「うぉっ!?…あ、ああ……今日がその日か。嬢ちゃん達、ヴァルハラから来たのかい。ダイチ君とレフィアさんなら、いつも実験棟にいるよ。寝るのもそこの仮眠室使ってるから、いないときはほとんどないね。必要なものは俺達が運ぶし」


「……んん、ん?」


 ここでは若手らしい壮年男性の話を聞いて、やや固まるヘタ。


「……ふたり、一緒なの?男の人と、女の人だよね?」


「男の人、って……姉弟みたいなもんだからなあ」


 その反応には、まだ子供だろうという感想も含まれている。だが、この話を聞いてもじもじしてしまったヘタも子供だ。ダイチより歳下の。


 結局アクが話を聞き、今度はゆっくり実験棟へ向かって歩き出した。延期したほうがよいと思うが、場所くらいは確認しておくべきと考えなおしたのだ。また突撃しようものなら、やはり止めないといけないけれども。


「……倍は歳上のお姉さんと?いやいやいや……と、とにかくけしからんな……」


 何やらブツブツ言っている。


(どうせまた、くだらないこと考えてるんだろうけど……)


 アクには、ヘタの考えていることが手に取るように分かった。


 これでヘタは乙女なのだ。マルヨやイスモみたいな恋愛脳とは違うが。それと四年前はリクの娘ミラと同級生扱いだったことを知らないのか忘れたのか。


 ミラは今、17歳だ。『ゆらかぜ』の航海に応募する資格はあったが、このところ連絡がつかなくなっていた。応募の締め切りからはヘタもアクも忙しくなって、それどころではなく。まあミラ姉のことだから、どうせ港か採水部隊の整備場にでも張りついて涎を垂らしているのだろうと。父親に憧れるミラは、潜航士を目指している。


(とりあえず今は、けしからん連中のことだよね。二人っきりでどんな生活を……じゃなくて、明日どう話を切り出すか偵察しないと)


 目的の建物が見えてきた。二階建ての、しかし平屋部分が広い鉄筋コンクリート造。一階が研究施設で、たぶん二階が住居だろう――こんなものを建てた資材は一体どこから?不審に思ったのはアク。よくも悪くも、ヘタは目の前のことしか見えない。


 ぱしん、と両手で顔を叩く。気合を入れなおしたのだが、それは思わぬところへ飛び火した。どうも近くにいた誰かが、驚いて転んでしまったらしい。


「わわっ!?」


「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


 すぐ駆け寄るヘタ。それにアクも続く。


 植え込みの世話をしていたようだ。目隠しになり、お互い気づけなかったのだろう。


「あ、ありがと……」


「どういたしまして。あたしはヴァルハラから来た見学者の……」


 ヘタが助け起こし、顔を合わせ。そこで二人とも、いやアクを含めた三人が固まる。


「…ミラ姉?」


「ヘタちゃん……と、アク君?」


「……………」


 罵詈雑言と涙声が飛び交ったのは言うまでもない。

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