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セレスティア人の手記  作者: 五月雨
最後の日 ~????年~
133/210

わたしマルヨ。どこにでもいる普通の

 わたしマルヨ。どこにでもいる普通の女の子だよー。


 普通の子はそんなこと言わないって?でも残念!ホントに正真正銘、どこからどう見ても平凡、なーんにも特別なことなんてない普通の女の子なんだ!


 って、力説することでもなかったよね。要するに残念な子なの。引きこもりだけどすっごく頭がいいエイラちゃんや、貧血でいつも機嫌悪そうだけど午後には元気で力持ちなアメリアちゃんとは違って得意なことがなんにもないの。


 でもね、でもね。そんなわたしのことを、イスモくんは特別だって言ってくれたの。一緒にいると癒される、世界一カワイイって!えへへ。


 ……そんな毎日幸せいっぱいのわたしですが。このほど久しぶりにやらかしちゃいました。大学にも行ってないわたし達を研究所で雇ってくれてる偉い先生のお坊ちゃまを、ちゃん付けの小さな子扱いしてしまったのです!


 あ、ここでいう『偉い先生』は『お坊ちゃま』自身のことだからね。偉い先生の息子さん、って意味じゃないよ。もう……穴があったら入りたい。


 あの後一緒に温室まで行って、そこでレフィアさんから紹介された。名前はダイチ=アトジマ、ブレイザブリク経由でビフレストから逃げてきたんだって。モフモフした黒髪が可愛いんだけど、ニケイア人とのハーフって聞いて納得。


 で、問題はその次。ここの研究は元々、初等科の高学年にしか見えないダイちゃんが考えたものだってこと。レフィアさんはあまり勉強が得意じゃなくて、ただ大人だから形のうえでは責任者を務めてるだけ。


 それってつまり、本当の責任者はあの子ってことだよね……?


 うん、マズいです。久しぶりにやらかしちゃいました。しかも初日にそんなような話をされてるっていうから尚更。ちゃんとごめんなさいして、今後はダイくん先生って呼ばせてもらおう。言葉のニュアンス、伝わるかな?


 他の人達も先生だとは思ってなかったみたいだけど、一番盛大に勘違いしてたのはわたし。だから紹介されたとき、思わずえええええええぇ~って叫んじゃったもん。しっかり謝れて偉いねってイスモくん褒めてくれたけど、その後ダイくん先生を睨んでたような気がするのはなんでだろう……ちょっと不愛想だけど、いい子っぽいのに。ダイくん先生カワイイから、もしかして嫉妬してるとか?へへ、まさかね。


 ところが。ところがですよ。ところがじゃ繋がらないかもだけど、わたしの受難はまだまだ続くのです。わたし死ぬほど不器用だったみたいで、それも全然意外じゃないのが複雑。学生の頃は、そういうのみんなイスモくんが代わってくれてたなぁって。


 どぼん!ぐしゃあ!…どばどば~。


「やっ、コレどうしたらいいんですかぁ?」


「大丈夫だぜハニー。俺が片づけてやるから」


「乱暴に掃かないで!まだ使えるから!」


 レフィアさん、おかんむり。ダイくん先生は落ち着いてるから、取り返しはつくんだと思う……でも、そうだよね。いつまでもイスモくんに頼りきりはいけないよね。


「…ハニー?」


「頑張ってみる。だからイスモくんは見守っててね?」


 丁寧に土を払って、中から芽だけを拾い出す。見ていたレフィアさんが、それからどうすればいいかを教えてくれる。


「土を半分鉢に戻して、次に芽を。根元に少しずつ土を足して、固めすぎないように。最後は保水用の顆粒を……よくできました」


 意外なところで褒めてもらって、つい嬉しさからニッコリ。


 ここに運んできたときは鉢にもう入ってたから、この作業をやったのはわたしだけ。失敗はしちゃったけど、一番に作業を覚えられてラッキー……なのかも。その喜びを分かってほしいのは、共有してほしい人はもちろん。


「ねえ、わたしできたよ!イスモくん!すごいでしょ!」


「あ、ああ!そうだなハニー!ハニーはすごいよ!」


 ちょっと驚いてたみたい。でも、わたしだって成長するのです。これからもイスモくんに、どんどん驚きを提供するよ!…なんて。


 ちょっと大袈裟だったかもしれないけど。でもね、わたしが頑張れるのはイスモくんがいてくれるからなんだよ。この仕事が続けられれば、イスモくんと一緒にいる口実ができるでしょ。何もしてないと女の子だけが行くようなところに行かされてたかも。


 だから先生には感謝。それとイスモくんにも頑張ってほしいな。イスモくんのお父さんとお母さんが他の場所へ行かせようとしないように。もちろんついていきたいけど、それをやっちゃうとウチのお父さんとお母さんがイスモくんに悪い印象を持つし。


 それにね。わたし、ここが気に入ったの。カワイイ先生がいて、厳しいけど優しいお姉さんがいて、また同級生のみんながいて。なんだか学生を続けてるみたいじゃない?


 時々は昔みたいにサボって、昼間からイスモくんといちゃいちゃしたいし。大人はそんなことしたらダメなんだって分かってるけど。えへへ。


 うわあ、今気づいた!お仕事始めたから、わたしってもう大人だったんだ!確かに法律では十八歳からだけど、誰もそんなの気にしてないもんね。配給品を配る当番以外、働いてない人のほうが多いし。大人。オトナかあ……


 オトナになると、今までできなかったいろんなことができる。たとえばアメリアちゃんは、お酒飲んでみたいって言ってた。


 わたしは何がしたいんだろう?とりあえずイスモくんと一緒にできるような何かかな。禁止されてできなかったこと、だよね?そういうのあんまりないかなあ……


 今度イスモくんと話しあってみよう。ひとりで考えるよりふたり。楽しくお喋りしてたら、いい考えが浮かんでくるかもしれないもんね。


 決めた!…えへへ、次のお休みは、ピクニックどこ行こうかな~?

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