失恋生活四十日目
「アババババ!!」
「むんむんむーん!!」
私は感電しながら謎の悲鳴を上げていた。そしてオイルでテカテカするモテルパパの手に誘われるように相変わらず感電しながらの社交ダンスが続いていく。
やってることはプロレスのデスマッチじゃん!!
私はヌタウナギとミミズに囲まれて強制的に社交ダンスを続けた。マズいわね、これは電流をどうにかしないと本当に延々とダンスをさせられちゃう。
こうなったら奥の手よ!!
「アホ毛ビット、戻って来なさい!!」
「むん?」
ビット攻撃を展開していたアホ毛がガシャガシャと音を立てて私の毛根に帰還してきた。そして全て収まるなりウイーンと音を立てて角度を変えていく。
天井に向かってアホ毛が立つとそこに私に流されていた電流が全て伝わっていく。伝わった電流は空気に放電されていく。
つまりアホ毛はヒューズ代わりになるのだ!!
アホ毛ヒューズが効率良く私の体内に流れる電流を放出してくれる。
……良し、手は動くわね。若干感電のせいで動きに違和感はあるけど戦うことは出来る。
もうここまでテカテカに触れたらどうでも良くなった。
「アホ毛カッター・ゼヒツェーン!!」
私はモテルパパの腕を振り解いて十六本のアホ毛カッターを投げつけた。もう大事なアホ毛だからってテカテカに触りたくないとか言ってられるか!!
私って十六本もアホ毛が生えてたんだ。こんなにアホ毛があるなんてそれこそ問題よ!!
「むんむんむんーん!!」
だけど十六本もアホ毛を投げつけれておきながらモテルパパは最も簡単に私の攻撃を回避する。華麗に避けていく。
どうして?
だってモテルパパだって感電してるのよ? そもそも最初の電撃の時からモテルパパには効果が無かった気がする。
…………あ!!
気付いちゃった。モテルパパは電撃が効かないんじゃない、最初から対外へ放出していたのだ。私の対処と同様にヒューズを作っていたのだ。
…………まさかチ◯コをヒューズ代わりにしているとは。
そして放電のおかげでモザイク処理が施されているですって!? モテルパパって変態のくせにデリカシーだけはあるのね?
逆にムカつくんだけど。
だったら最初からちゃんと服を着れば良いじゃん!!
ブチッ!!
モテルパパのそのあまりにも斜め上な発想に私はキレました。だけどまたしても忘れていました。そうなんです、私とミケは喧嘩中でした。
「にゃにゃにゃにゃにゃ、にゃにゃにゃーーーーーー!!」
ギョエーーーーーー!! ミケが私に向かって冷気を放って来たーーーーーーー!?
ミケの背後に白鳥さんが見える!? つまりコレは『アレ』ね、あれとしか思えない。銅の戦士のもう一人の少年の代名詞とも言える必殺技だ。
「ヒョエエエエエエエ!! ヌルヌルが凍り付いていくーーーーーーーー!?」
「にゃにゃ!!」
はい、ミケは「絶対零度を舐めんるにゃ!!」と言ってます。
「むんむんむーん」
モテルパパはモテルパパでこっちの事情なんてお構いなしに私の手を引っ張るし……、誰も私の話を聞いてくれない。
いや、ちょっと待った。
ええ!? モテルパパがミケの凍らせたヌルヌル粘液の上を滑走し始めた。私の手を引っ張ってさっきまでと同じ様にフィギュアスケートを始めちゃった。
もはや頭がパンクした私の手を強引に引っ張ってステップシークエンスから私の体を持ち上げてリフト、そしてツイストリフトをしたかと思えばデススパイラルですって!?
モテルパパが私の手を掴んだまま回転を始めた。
もう本当に状況を整理出来なくなるから止めんかい!!
「あーーーーーーれーーーーーーー。回転しながら無自覚に合コン参加者をしばき倒していくーーーーーーーー」
私はモテルパパになすがままに回転し続けて、その足でティラノサウルスとかマンモスとかヌタウナギとかミミズとか。
全ての頭を蹴り上げていった。
ファーーーーーー!!
レレレーーーーー!!
ヌルヌルヌルヌル!!
ニュルニュルニュルニュル!!
バッタバタと合コン参加者が倒れていく。カルデラ湖の湖畔に佇む素敵な一軒家は、もはや救いすら見当たらない地獄と化していく。
「むんむんむーん!!」
そして終始ハイテンションのモテルパパ。
もうここはモザイクマンションじゃい!!
私はミケがモデルとなったモアイ像のような表情になってされるがままにデススパイラルを続けた。そしてふとミケの方に視線を向けた。
その時、気付いたのだ。
ミケの様子がおかしいと、苦しそうに鎧を剥がして痛いのか頭を抱え込んで悶えていた。私は驚いて、心配になってミケに向かって叫んでいた。
「ミケ!! どうしちゃったの!?」
「にゃ…………、シャーーーーーーーーー!!」
「ええ!? ミケが巨大化したーーーー!?」
なんとミケは何の前触れも無くグングンと体を巨大化させていった。
「むーん」
そしてミケの変化にモテルパパは慌てるでもなく葉っぱを装着したまま胸を張って立っていた。
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