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吹雪とフブキ  作者: 爆進王


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17/22

第17話 ダービージョッキー

 美雪さんの自宅で祝勝会が行われている。




 皐月賞の時には、隅のほうで『ジッ』としていても許されたのだが、今回は許されない。俺は美雪さんと共に、パーティーの中心にいる。




 俺はダービージョッキーになった事を実感する。




 有名芸能人やスポーツ選手らと共に談笑をするが、どこか場違いな感じがしている。





「有名人ばかりで緊張しますね」




「何を言っているの?真白君、あなたはダービージョッキーなのよ。充分、あなたも有名人なのよ!!」




「…はあ」




「いまいち実感が無いようね。でも、すぐに実感する事になるでしょう。明日からは世界が変わるわよ!!」




「そんなものなんですかね?」




「世間がほっとかないわよ!!若くてこんなに可愛いんですもの!!」





 美雪さんが俺を誘惑するように体を密着させてくる。




 香水の甘い匂いが俺を惑わせる。




 美雪さんのぬくもりが伝わってきて、まるで蝶が蜘蛛の巣に引き寄せられるがごとく『フラフラ』と美雪さんの胸元に吸い込まれそうになる…が、しかし!!俺は美雪さんの真意を測りかね、この場はひとまず脱出する。





「もう。真白君ったら、恥ずかしがり屋さんなんだから!!」





 俺は美雪さんの言葉を背で聞きながら、トイレに駆け込むのだった。





「真白、危なかったな!!」





 俺の後から入ってきた白井先生が、半笑いで冷やかしてきた。





「見てたんですか?」




「あぁ、バッチリな!!」




「助けてくださいよ!!」




「何でだ?未成年でもあるまいし、お前が良ければいいんじゃないか?」




「むっちゃ美人ですけど、母親と歳があまり変わらないんですよ!!」




「恋愛に歳は関係ない。お互いの気持ち次第だぞ」




「…先生、楽しんでませんか?」




「わはははっ、そうとも言うな!!まあ、美雪嬢も恋愛経験の浅いお前をからかっているだけだろう。本気ではないと思うぞ」




「でしょうけど、正直、よく分かりません」




「まあ、後の事は俺に任せて『コソッ』と逃げろ」




「恩に着ます!!」





 俺は忍びのごとく気配を消し去り、パーティー会場から抜け出したのだった。






 数日後…




 フブキの様子を見に白井厩舎まで来た。




 厩舎関係者に挨拶をすると…





「ダービージョッキー様がお越しになられました!!」





 そう大声で言われ、大爆笑された。




 俺は苦笑いをしながら、フブキの馬房に向かう。




 しばらく調教はお休みなので、フブキはのんびりとした様子で草を食べていたのだった。





(真白!!遅い、遅すぎるぞ!!)





 フブキは俺の姿を見るなり激怒する。





(馬体の検査とかがあると思って…。でも、ちゃんと持ってきたから!!)




(うむっ!!早く切り分けるがよいぞ!!)





 美味しそうに高級りんごを食べるフブキを見ていると、自然と笑みがこぼれてきた。





(フブキ、美雪さんに『ダービージョッキーになった事で世界が変わる』と言われたんだけど、本当にそうだった。新幹線で栗東に帰って来る時、何人ものファンから握手とサインを求められたんだ。初めての経験で戸惑ったんだけど、嬉しかった)




(わはははっ、初めはファンの目が恐いと言っておったのにな。結局、プロは結果が全てという事なのだ。良い結果が出れば、周囲が勝手に変わっていくのだ)




(本当にそう思うよ。ただし、俺の場合は本当に俺の力かどうか、かなり疑問だけど…)




(まあ、時間はまだある。精々、励むがよいぞ!!)




(あぁ、そうするよ!!フブキはしばらくレースは無いから、ゆっくりできるね)




(そうであるな。我は秋に向けて英気を養うとしよう。そして、来春の種牡馬に備え、トレーニングを開始するのだ!!)




(腰を振るな!!まだ早いわ!!馬っ気を出すんじゃない!!)





 俺はフブキに呆れ、早々に馬房を後にしたのであった。






 三か月余りが過ぎた。




 今年も暑い夏だったが、猛暑といわれるほどでは無かった。




 フブキも順調に夏を過ごした。




 夏の間に白井先生と美雪さんとの間で、秋のローテーションの話し合いが行われた。




 その結果…





 神戸新聞杯(GⅡ)


 菊花賞  (GⅠ)


 有馬記念 (GⅠ)





 秋3戦というローテーションに決定した。美雪さんは4歳以降の現役続行はしないと明言した。当初の予定通り、来春から種牡馬にして白毛馬の生産をするとの事。





(秋、3レースか。そして引退…)





 俺は無敗の三冠馬というプレッシャーよりも、秋3レースで引退という寂しさのほうが強い。





(少しでも成長して、フブキの負担を少なくしてあげられれば…)





 俺はそう決意して、毎日のトレーニングに励み、週末のレースに乗る。




 そしてフブキは休み明けの神戸新聞杯に快勝する。




 俺はフブキを無敗の三冠馬にするべく、菊花賞が行われる10月26日に向けて、トレーニングをこなしていくのであった。

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