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吹雪とフブキ  作者: 爆進王


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第1話 見習騎手・吹雪真白

 

「吹雪真白、吹雪真白。あった!!少し順位が上がってるぞ!!」



 


 俺は騎手リーディングを見て、自分の名前を探し出す。





「真白、今年0勝の騎手がリーディングなんて見てんじゃない!!」



 


 すかさず調教師の白井先生にツッコまれた。





「確かに勝っていませんが、先週、2着が一回あったので、0勝仲間の間でも、順位が上になってるんです!!」




「レベルが低いというか、志が低いというか…お前、騎手学校で主席だったんだろ?同期の奴らにも差を付けられてるじゃないか!!情けないわ!!」




「先生、俺は褒められて伸びるタイプです。ダメ出しをする前に褒めてください!!」




「褒める要素が無いんだよ!!」





 白井先生は呆れ顔で俺の顔を見る。





「今日、二歳馬が入厩して来た。馬名はフブキ。キタサンブラック産駒の牡馬だ。来年のクラシック、この馬で取りに行くぞ!!」





 先生はそう言った後『ドヤ顔』を決める。





「父親がイクイノックスやクロワデュノールを出したキタサンブラックですか!?確かにクラシックを狙える血統ですね。俺に乗らせてください!!」





 ダメ元で言ってみる。





「うむっ!!この馬は真白、お前に任せるぞ!!」





 先生がためらいなく言った。





「真面目にですか!?」





 俺は違和感を覚えて聞き返す。自分で言うのもなんだが、クラシックを狙える馬を俺に託すはずがない。





「本当に俺でいいんですか?何か隠してませんか?」




「……………」





 俺が疑いの眼差しを向けると、先生が無言になり目を逸らす。





「まあ、色々と理由はあるが…。美雪嬢からの要望だからな。無下にはできん」





 先生は少し苦い表情で言う。





「…美雪さんからの?」




「あぁ…馬体を見れば理由が分かる。今から見てこい!!」





 俺はそう言われ、急いで馬房へと向かう。





(馬体を見れば理由が分かるって…さっぱり意味が分からないぞ?)





 俺はそう思いながらも厩舎の中へと入っていく。





(あぁ…そういう事か。なんとなく分かった)





 馬房の中にいた馬は白毛。真っ白でとても綺麗な毛並みをしていたのだった。





「真白君、見て!!この白毛の美しいお馬さんを!!私にピッタリのお馬さんでしょう!!私はこのフブキちゃんを擁して、白毛牧場を作り上げようと思っているのよ。そして白毛馬を世界に広げるの!!」





 嬉々とした女性の声が聞こえ、振り向いた。




 そこには爽やかな笑顔を浮かべ、パンツスーツ姿が凛々しいクールビューティー熟女が立っていた。





「こ、こんにちわ 。美雪さん、なぜここに!?」





 俺は驚いて挨拶をする。




 美雪さんは、本名を金子美雪という。最近、馬主になった40代後半の女性だ。カリスマ経営者として有名で、20代で起業し、今では上場企業の社長である。




 俺の名前『吹雪真白』が気に入ったと言って、よく騎乗依頼をくれる。




 最近はインフルエンサーとしても影響力を強めていて、見た目は30代に見える事から『美熟女業界』ではクールビューティー熟女と呼ばれ、カリスマ的な人気を誇っている。





「真白君、こんにちわ。相変わらず、可愛いわね!!」





 俺の身長は164㎝だが、美雪さんは170㎝を超えていて、まるでファッションモデルのようだ。




 正直『可愛いわね!!て言われても…』微妙な気持ちになる。




 美雪さんは、そんな俺の気持ちなどお構いなしにハグをする。





(この見た目で40代後半なんて信じられん…が、しかし!!いくら美人であっても、さすがに母親よりも年上の女性は恋愛対象には…残念でならない!!でも、本当に魅力的で、人として尊敬できるんだよなあ)





 俺は美雪さんにハグをされながら思う。





「あぁ…真っ白な毛並み。芦毛では無く、本当の白毛。なんて美しいの。きっと、私のために生まれてきたに違いないわ!!白毛のお馬さん、馬名はフブキ。馬主の名前が美雪。調教師は白井先生。そして主戦ジョッキーが吹雪真白。完璧だわ!!完璧な組み合わせよ!!100%理想通りだわ!!これで純白軍団の完成よ」





 美雪さんは、フブキを前にしてうっとりと悦に入り、鼻筋にキスをしようとする…が、当のフブキは、嫌そうに首を振る。






「美雪さん、フブキが嫌がっていますよ」





 俺はフブキのご機嫌を直そうと鼻筋を撫でながら、りんごを差し出した。




 りんごを美味しそうに食べるフブキ。





「もう、フブキちゃんは推しなのよ、推し」





 美雪さんはそう言うと、爽やかな笑顔を浮かべる。




 俺は美雪さんの笑顔を見て『ドキッ』とする。





(きっと10代20代、30代の時には、モテまくったに違いない!!いや、今でもか!!男からは美雪姉さん、女からは美雪お姉様と呼ばれ、大人気なのだが…)





 俺はりんごをねだってくるフブキを撫でながら思う。





「真白君、フブキちゃんの主戦騎手は頼むわね。さっきも言ったけど、吹雪とフブキ。私が美雪。そして調教師が白井先生。この三人と一頭がそろって、ストーリーが動き出すのよ!!分かるわね?」





 時々、美雪さんは自分だけの世界に入り込み、周りの人たちを置いてきぼりにしてしまう。才能が豊かで行動力があり、好奇心が旺盛な人なんだろうけど、正直対応に困る時がある。




 俺は『ストーリーが動き出すって、どういう事?』と困惑しながら苦笑いを浮かべる。




 しかし、そんな事を美雪さんに言えるわけも無く…





「お任せください!!美雪さんが描いているストーリー。必ずサクセスストーリーにしてみせますよ!!」





 俺はキメ顔を作って言う。





「まあ、嬉しい!!でも…そこまで競走成績にこだわっていないから、気楽に乗ってね」




「キタサンブラック産駒ですよ?この馬でクラシックを狙いにいくんじゃあ…」




「勝ってくれるに越した事は無いけど、重要なのはそこじゃないわ。私はフブキちゃんを種牡馬にしようと思っているのよ!!」




「でも、種牡馬にするんだったら、競走成績が重要になると思うんですが?」




「3歳で引退。未勝利でも種牡馬入りする。これは決定事項です!!」




「マジですか!?」




「うふふふっ、実はフブキちゃんを購入した時、ついでに牧場も購入したのよ。今、血統も勉強中で、フブキちゃんと合う配合も考えてるわ」




「ついでに…牧場を…ですか?」





 俺は(金持ちスゲー!!)と密かに思う。





「私はフブキちゃんを見た瞬間、体に衝撃が走るのを感じたの。この美しい白毛を世界に広める事が私の使命だと思ったのよ」




「要するに、白毛が気に入ったという事ですか?」




「そうとも言うわね。真白君、私のイメージカラーって純白でしょう。ピッタリだと思わない?」





 俺は(イメージカラーが純白?また変な事を言い出した…何て答えたらいいんだよ!?)と対応に困る。





「ねえ、美雪って書いて何て読むと思う?」




「い、いや…みゆきですよね?」




「違うわ!!美雪と書いてじゅんぱくと読みます!!」




(読まねえよ!!)





 俺は心の中でツッコミを入れるが、どう対応していいのか悩む。





「なにっ、おかしいかしら?」





 美雪さんが能面のような顔になり俺を見る。




 俺は慌てて『少し驚いてしまって…でも、素敵だと思います!!』と言う。





「でしょう?でも、なぜか家庭裁判所に改名の申請を却下されたのよ。おかしいと思わない?」




「……………」




「仕方が無いから『金子・ジュンパク・美雪』にしようと思ったんだけど、これも却下されたのよね。ねえ、真白君はどう思う?」




「……………」





 俺は言葉が出ず、立ち尽くす。





「社長、もうそろそろお時間です」





 背後に控えていた美人秘書軍団の一人が美雪さんに声を掛ける。





「そんな時間?仕方が無いわね。じゃあ、フブキちゃんの事はお願いね!!デビュー、楽しみにして待ってるから!!」





 美雪さんはそう言い残し、美人秘書軍団を従えて、足早に去っていったのであった。

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