第四十五話 リョーガと忍の親玉
…残すところは『目黒一家』の頭領の『目黒 赤之條』を残すのみとなった。
俺達は、捕らえた目黒一家のメンバーから情報を引き出したり三番隊の情報網を駆使して目黒の居場所を徹底的に探し出した。
目黒は現在、西大陸の外れの山奥に潜んでいるらしい…
「ふぅ、とてもじゃないけど人が通るような場所じゃねぇな…」
「うへぇ、スゴイ険しい道っす…ウチの住んでた山より酷いっす」
「気をつけるぜよ、もしかしたら罠か何か仕込んであるかもしれんきに…」
「あぁ…」
“カチッ”
「ん?なんだ今の音?」
「兄ちゃん、なんか変なの踏んじゃった…」
「おい、まさかそれ…」
するとその時、目の前に太い丸太が飛んできた。
「危ねぇ!」
ギリギリのところで上手くかわす
「うわぁっ!」
「ひぃっ!」
それから、次々と罠が作動し俺達は死ぬ気で罠を回避する
「ぜぇ、ぜぇ…一体どんだけ罠仕込んでやがんだ?」
「ん~、困ったねぇ…今のでウチの隊士達もやられちゃったみたいだし…」
なんとか罠をくぐり抜けられたのは俺達とリョウ三郎のパーティー、そしてアレクさんだけだった。
「随分と減ってしもうたのう…どうするぜよリョウの字?」
「どうするもこうするも、もう引き下がれんぜよ…とにかく前に進むしかなぁぜよ」
「リョウ三郎のいう通りだ、お前らしっかりついてこいよ」
山道を進むこと数時間、一つの小屋を発見した。
「あれは…」
「…小屋の中から一人の気配を感じる、きっと目黒じゃ」
「よし、いくか!」
意を決して小屋の中に踏み込む、そこにいたのは…
「…ほう、ここまでたどり着いたか」
座布団の上に鎮座した六十代ほどの初老の男、臙脂色の忍装束に茶色の陣羽織を羽織っている。
「お前が、目黒 赤之條…だな?」
「あぁ、そうだとも…大方お主ら、儂を捕まえにきたのであろう?」
「そうだ、大人しく捕まればそれで良し…だが抵抗するってんなら実力行使させてもらう…」
「…フン、老いさらばえたとはいえまだまだお主らのような小童どもなどに遅れなどとるまいよ…」
「何ぃ?」
「見るがいい!『忍法・空間転軸の術』!!」
すると、足元に大きな魔方陣が現れた。
「なっ!?うわっ!?」
「うわっ!?」
「!?」
「マズイ!逃げるがじゃ!」
全員一目散に小屋から逃げる
「あれ?兄ちゃんは?」
「ホントだ、いないでやんす!」
「あのスケベ侍もいねぇ…どこいった?」
「アレク隊長殿もいないでありますな…」
「!?、おいみんな!こっちを見てみろ!」
小屋を覗くと、その中はもぬけの殻となっていた。
「なっ!?どうなっとるがじゃ!?」
「リョーガはんもリョウ三郎はんもアレクはんも、それに目黒まで消えてしまったでありんすなぁ…」
「もしかしたら、さっきのは『空間転移魔術』の一種かもしれないぷよ…」
「てことは、リョーガ達はあの野郎にどっかに飛ばされたってことか?」
「恐らくは…」
「くっ…一体どこへ飛ばされたんじゃ、主殿」
「メリッサ、お前たしか空間転移魔術使えたよな?なんとかリョーガ達のいるところまで行けね?」
「それは無理なのだ…空間転移魔術は行ったことや見たことのある場所とかを明確にイメージしないと転移できないのだ、第一どこにリョーガちん飛ばされたのかも分かんないのに」
「そっか、くそ…せめてどこへ転移したのかさえ分かればな…」
「うーん、せめてリョーガちんの魔力だけでも感じ取ることができれば直接リョーガちんのいるところへ転移できるかもしれないのだ…」
「ならば、拙僧にお任せを…」
「ソウカイ殿…」
「拙僧の法術でリョーガ殿の魔力を探知してみましょう」
「できるでやんすか?」
「分からぬ、とにかくやってみるしかあるまい…」
「分かった、頼む…」
「…兄ちゃん」
「先輩、大丈夫でやんす!リョーガの旦那はそう簡単にやられるようなお人じゃないって知ってるでやんしょ?」
「そうぷよ!ご主人様は強いぷよ!」
「ガウッ!」
「ゲータ…ぷよたん、クリム」
不安がるミーニャを励ますゲータ達
「そうじゃ、ミーニャ嬢…心配なぞ無用ぜよ、なんたってリョウの字がついちょるきにのう」
「おじちゃん…」
「つーか、あのスケベ野郎ホントに強いのか?」
「あぁ、いまいち信用できんのぅ」
「いんや、リョウの字は普段はあん通り女子にだらしないちゃらんぽらんぜよ、ほいじゃけどいざっちゅう時には誰よりも頼りになる男ぜよ!」
「うむ…そうでなければ我らの頭は務まらぬ故…」
「お前ら…」
「とにかく、今のワシらにできることは三人の無事を祈ることだけじゃき」
「あぁ、そうだな…」
・・・・・
一方、俺達は…目黒の術によって不思議な空間に飛ばされた
「ここは、どこだ?」
「どうやら、奴の術で作られた異次元空間のようぜよ」
「ん~、これほどまでに精度の高い空間術は初めて見るねぇ…これは一筋縄では脱出も無理そうだ」
「フッフッフッ、驚いたかね?」
「目黒…」
「ここなら思う存分に戦えるであろう?さぁ、始めようか?」
「あぁ、やってやんよ!」
「フッフッフッ、くらうがいい!『火忍法・灼火飛弾の術』!!」
火の弾を飛ばす目黒
「これしき!」
刀を抜いて一つ残らず斬り落とすリョウ三郎
「これしきの火など怖くもなんともなぁぜよ!」
「リョーガ君!」
「あぁ!」
アレクさんと両サイドから斬りかかる
「『地忍法・土腕の術』!」
と、地面から強大な腕が現れて俺達の剣をがっしりと受け止めた
「何っ!?」
「えぇい!」
そのまま勢いよくぶん投げられた
「くっ!」
「ん~これは、噂にたがわぬ強さだねぇ」
「ワシら三人掛かりでこれとは、厄介ぜよ…」
「その程度か?ならばこちらからいくぞ!『火忍法・鳳炎刃の術』!!」
炎の刃が俺達を襲う
「くっ!『水流陣』!!」
咄嗟に水の膜を張って防御するも、全ては御しきれずあまりの火力に水はほとんど蒸発してしまった。
「ぐあっ!?」
「ハッハッハッ!そんなちゃちな術が儂に通用するものか!」
「リョーガ君、大丈夫かい?」
「あぁ、くそ…なんて野郎だ、格が違いすぎる」
「お遊びは終わりじゃ…一瞬にして屠ってくれよう」
「…っ!?」
「終わりだ!『火忍法・紅蓮炎王殺』!!」
馬鹿デカい炎のビームを放つ、もう終わりかと思ったその時だった…。
“ザシュッ!”
「??」
俺は一瞬目を疑った…なんとリョウ三郎があの炎のビームをたったの一太刀で一刀両断に斬り裂いたのだった。
「な、なんだと…今の一撃を、たったの一太刀で」
「リ、リョウ三郎…」
「リョーガ殿、アレク殿…危ないき、ちっくと下がっとおせ…」
「な、ア、アンタ…」
「あーあ、ここまで追い詰められるが久方ぶりぜよ!おんしにじゃったら、ワシの本気…見せちゃろうかのう?」
「な、何を…」
「リョーガ殿、実はワシのう…生まれつき常人の十倍以上の魔力ば持って生まれてきたんじゃ、ガキの頃はロクに制御もできんくて親父や叔父貴にもしょっちゅうどやされたぜよ…」
「…?」
「じゃがのう、ワシは七つの頃に『火竜の里』に預けられてそこで力の使い方を学んだんじゃ」
「火竜の里?」
それってたしか、ルカの故郷じゃ…
「おんしのところにもおったじゃろう、可愛らしい火竜族の娘っ子が…ワシはそこで火竜族と寝食を共にし力を磨き上げたきに、その結果…今ワシはSランク冒険者としてここにおるがじゃ!」
するとリョウ三郎は着物の上をはだけて上半身裸になる、その背中には猛々しい赤い龍の刺青が刻まれていた。
「目にもの見せちゃるき…覚悟せい!」
すると、リョウ三郎の刀が突然発火しリョウ三郎の周りも真っ赤な炎に包まれた。
「す、凄まじい魔力だ…」
「あぁ、近づくだけで火傷しそうだ…」
「いくぜよ!うぉぉぉぉぉ!!」
熱い炎のオーラを纏って突進する
「小癪な!『地忍法・土石龍の術』!」
龍の形をした土の弾をぶつける目黒、だがそれもリョウ三郎にいとも簡単に斬り崩されてしまう。
「効かんわぁ!」
「くっ!『地忍法・土腕の術』!」
巨大な土の腕でリョウ三郎の太刀を真剣白刃取りする
「ぐぬぬ…」
「ふぉぉぉ!」
「リョーガ君!私達も!」
「あぁ!」
俺とアレクさんで目黒の両足を斬りつけ体勢を崩させた。
「ぐあっ!」
「今ぜよ!」
体勢を崩した隙を狙い袈裟斬りに斬りつける
「ぐあぁぁぁぁ!!お、己ぇ!」
「これで終わりじゃ!」
「頭に乗るなよ…小童どもぉ!」
すると、突然…目黒の魔力が急激に膨れ上がり俺達三人を吹き飛ばした。
「…よもや、この術だけは使うまいと思っておったが…致し方なし!」
「まだなんか隠してやがんのか?」
「見るがいい!これぞ我が最強の秘奥義!『火忍法・加具土命』!!」
するとそこへ、目黒の背後に全身真っ赤に燃え盛る炎の巨人が現れた。
「なんだあれ…?」
「デカい…」
「こりゃ…とんでもなぁぜよ」
「フハハハハハ!燃えろ燃えろ!すべて燃えて灰になってしまえ!」
「これは、流石にワシの手にも余るぜよ…」
「だったら、目黒本人をぶっ飛ばせばあのデカブツも止まるよな!?」
「ん~、でもおいそれと近づけそうもないねぇ…」
「リョウ三郎、数秒だけでいい…あのデカブツを足止めしてくれ」
「任せるぜよ!」
「アレクさんは俺の援護を頼む」
「分かった、でも何をする気だ?」
「俺が、直接アイツの懐に飛び込んでぶちのめす!」
「ダメだ!危険すぎる!」
「だからこそ、アンタ達の協力が必要だ…頼む、力を貸してくれ!」
「ん~、分かった!そこまで覚悟を決めたのなら、私も男だ…最後まで付き合うよ!」
「恩に着る…」
「では、早速いくぜよ!」
「あぁ!」
「何か企んでいるのか?どうせ下手な考え休むに似たりだろう?無駄なことだ…」
「いくぜ!」
「うおぉぉぉぉ!!」
リョウ三郎が炎の巨人を全力で足止めする、その間に俺は目黒に向かって真っすぐに走る
「最早ヤケにでもなったか?これでもくらえ!『地忍法・礫手裏剣の術』!」
無数の石礫が飛んでくる
「全力で守る!はぁっ!」
アレクさんが飛んできた石を剣で弾いて落とす
「今だ!いけぇ!」
「はい!はぁぁぁぁ!!」
右手に魔力を込めていく
「っ!?」
「くらえ!『炎熱鉄拳』!!」
渾身の炎熱鉄拳で目黒を殴り飛ばす、目黒は倒れ込んで気絶し炎の巨人も消えてなくなった。
「ハァ、ハァ、ハァ…終わったな」
「あぁ、すごいよリョーガ君!」
「いや、俺一人じゃ絶対に敵わなかった…全部アンタらのおかげだ」
「リョーガ君…」
「ところで、ここからどうやって出るぜよ?」
「そうだった!あ、でもリョーガ君なら空間転移魔術を使えるんじゃ…」
「あー、まぁ使えるには使えるけど…今の一撃で魔力使い果たしてもう魔術使うほど魔力が…」
「そ、そんな…」
「ん~、参ったねぇ」
と、そんな時だった。
「リョーガちーーーん!!」
「メリッサ!?お前、どうやって?」
「ソウカイちんに頼んでリョーガちん達の魔力を探ってもらって漸く探しにこられたのだ!」
「そうか、助かるぜ…」
「てなわけで、早速帰るのだ!みんなメリッサにつかまって!」
「あぁ」
「よっしゃぁ!しっかりつかまったぜよ!」
と、俺とアレクさんがメリッサの手を握るのに対し、リョウ三郎はというと後ろからメリッサの胸を鷲掴みにした。
「!?」
「おっほぉ!小ぶりながらも中々張りのあるイイ乳じゃ…」
「キャアァァァァ!何をするのだえっちぃぃぃぃぃ!!」
と、当然ながらメリッサにビンタされる
「ぐはっ!」
「えーん!リョーガち〜ん!触られた、まだ誰にも触られたことないのにおっぱい触られたのだぁ!」
「おいおい、あーもうよしよし…泣くな泣くな」
「ん~、懲りない人だねぇ…やれやれ」
結局、それからリョウ三郎にメリッサを触らせないように俺の右手とアレクさんの左手でがっちりと手を繋いだ。
「くぅ、よもや男と手を繋ぐ羽目になるとは…」
「うっせー馬鹿、自業自得だ」
「戻ったらユラちんにうんとお仕置きしてもらうのだ」
「そ、それだけは勘弁じゃき!許してたもうせ!」
「フンっなのだ!」
「じゃ、さっさと帰ろうぜ…メリッサ頼む」
「うん!それじゃいくよ!『テレポート』!」
・・・・・
「…あっ!戻ってきたっす!」
「今戻った」
「それで、目黒は?」
「心配ない、ちゃんといるぜ」
と、気絶した状態で縄に縛られた目黒を見せる
「兎にも角にも、これで一件落着じゃな」
「あぁ、あー疲れた…」
…こうして、無事に目黒一家を捕らえることができ事態は一件落着
屋敷へ帰る頃にはすっかり夜遅くなっていた。
「今回はおんしらにはすっかり世話になったのう」
「まぁな…それにしても、まさかアンタが火竜族の里で修行していたなんてな」
「おぉ!里の者らにはえらい世話になったきに!今でもいい友人なんぜよ!」
「へぇ、火竜族の里か…俺も行ってみたいな」
「お?おんしゃあ火竜族に興味あるがかえ?」
「まぁな」
「そうかい!こん騒動が済んだらワシが案内しちゃるき!」
「ん?いいのか?」
「ガッハッハッハ!遠慮するこたぁなぁぜよ!『兄弟』!」
「き、兄弟?」
「ワシらは今日から義兄弟じゃき!東大陸じゃ気心の知れた親友同士を『兄弟』っち呼ぶがじゃ!」
「へ、へぇ…」
なんか、昔の極道映画みたいだな…
「っちゅうわけで、ほれ!」
そういって俺に盃を差し出すリョウ三郎
「兄弟になるにはこうして一緒に盃を交わすがじゃ」
「そうか…」
「あぁそうじゃ…これでワシらは今日から兄弟じゃき!たとえ離れておってもワシらの友情は永久に不滅ぜよ!」
そう言いながら互いの盃に酒を注ぐ
「んじゃ、これからのワシらの友情に…乾杯!」
「乾杯」
互いに盃を突き交わし一気に飲み干す
「くぅ~!いい気分ぜよ!よっしゃ!今夜は飲むぜよ!」
「フッ、ほどほどにしとけよ…」
…そして翌朝、東大陸へ帰るリョウ三郎達を見送りにリクルグ港へきた。
「あー、気持ち悪い…もう酒ばしばらく飲まんき…」
「だからほどほどにしとけって言ったのに…」
「申し訳ありませぬリョーガ殿…最後までご迷惑を」
「気にするな」
「そう言っていただけるとこちらとしても有り難い…」
「あぁ」
「『間もなく、東大陸行きの便が出航いたします…乗船される方はお急ぎの上、お間違えの無いよう…』」
と、出航のアナウンスが流れる
「と、もう時間じゃの…」
「では、達者で…」
「少女達によろしくのう」
「あぁ、またな…」
「と、そうじゃ…おんしにこれを」
「??」
と、俺に差し出したのは一振りの脇差しだった
「ワシらの友情の証ぜよ、おんしに持っておってほしい」
「いいのかよ?」
「構わんきに!…またの、兄弟!」
「…あぁ、またな兄弟!」
こうして、リョウ三郎達は東大陸へと帰っていった…。
To be continued…
-----【To days Result】-----
目黒一家頭領 目黒 赤之條 ‐Win‐




