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離れの若様  作者: 真木
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長月

夏も過ぎ、9月になった。朝晩とも過ごしやすい陽気になり気持ちのよい秋晴れが続いている。一方の私はといえば疲れているというか、この所あまり体調が良くなく、よく寝ていた。医者によれば、秋は夏の疲れが出てくる時期で病人には辛い季節らしい。しかし、あの一件から私に熱がなくとも智香子は少しずつ、いろんな話を話すようになった。気怠く、見るでもなく見ないでもなく窓の外を見ている私にも智香子の話はどこかスーッと入っていった。

「今日は中秋の名月ですよ。」

ふと、そう言う智香子の声に気がついた。どうやら私は夕方から少し寝ていたようだ。

何の気なしに窓の外を見れば確かに丸い綺麗な月が浮かんでいる。

私が寝ている間にやったのだろうか。窓辺に備え付けられたテーブルには智香子によって真っ白い団子にお神酒、果物などが供えられ、脇に置かれた花瓶にはすすきが挿してあった。

「綺麗ですね。」

月を見るために電気を消した病室で智香子はうっとりと月を眺めていた。冴え渡るような月の光に照らされた横顔は今まで意識して来なかったのが不思議なくらい綺麗だった。智香子が振り向いた。

「何を見てらっしゃるのです。」

「綺麗だと。」

智香子はええといったが、すぐに私の視線の先に気が付き顔を赤くした。

「…お月様はあちらですが。」

私は照れくさくなって、そうか月は向こうかと笑って窓の外を見た。

 智香子も赤くなりつつも笑ったが、やがて、ふたりとも黙ってしまった。

そんな静けさに絶えられなくなったのかどこかで虫が鳴き始めた。


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