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思考ゲーム

「幸治、今日はゲームをしに来たんじゃないんだ。話が…」


柊はたどたどしく言った。松永の方は少しも怖じけづかず、余裕の表情だった。


「ほんなら話が早よ終わったら、話もゲームもできるやろ?」

「そりゃあそうだが、そんなに簡単な話じゃないんだ。」


松永はもじゃもじゃの口元をニッと広げた。


「辞令か。お前さんの羽振りを見るからに、左遷ではないやろうな。

昇進か栄転やろう。まあその口ぶり見るに栄転か。

ほんなら東京やろうな。話は終わりや。さあ、駒は並べたで。今日もお前さんが白盤(先手)や。」

「終わりって…。そんな簡単な話じゃないって言ったろ。」

「ゲームや、柊。お前が勝ったら、幸せの法則を教えたる。

柊、お前が負けたら、不幸になる方法を教えたるわ。さあ、話はゲームの後や」


柊は取り憑かれたように指した。

オープニングはルイ・ロペス。松永の得意なサクリファイス(自己犠牲)を堅実な守りによって防ぐ。

柊の目は今だ無いくらいに冴えた。攻めるべきマスと守るべき駒が手に取るようにわかった。


「チェックメイト。」


…得てしてチェスとは、どれほど有利でも油断のひとつで思いがけない負けを招く。


「…完敗だ……。松永。」

「約束や。話には俺が「付き合って」もらおか。」


松永は見物に来ていたホームレスたちを払い、淡々と話はじめた。


「不幸になるにはな、考えることを辞めるのが1番や。

柊、お前は鋭い観察力と推理力をもってる。

でもな、相手の言うことは全て正しい。人は嘘をつかへん。

そう思うことで、戦うことをやめるんや。

思考ゲームをチェスの中だけに留めれば、お前はたちまち不幸になれる。」

「幸治…。」

「話は終わりや。幸治、そろそろ時間やろ。「また明日」や。」

「ありがとう…幸治…。

また来る!ではな!」


柊はせわしなく走り去っていった。目には涙が滲んでいた。


「相変わらず柊ぼっちゃんは泣き虫やのお?幸治。」

「聞いとったんか。趣味わるいで。」

「お前も営業でもやったらどうや?向いてんちゃうか?」

「アホ。めんどくさいこというな。」


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